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    aYa62AOT

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    エアスケブで頂いた赤ちゃんを預かる山奥親友のお話。
    ライジャンはカプ要素強めでベルマルはほんのりです。
    エアスケブご依頼下さって本当にありがとうございました!!!

    #ライジャン
    laijun
    #ベルマル
    #山奥親友
    yamaoFamily&Friends

    「ただいまー」
     朝から近所に住む実家の母に呼ばれて出かけたマルコがシェアハウスへと帰ってくる。TVゲームで暇を持て余していたジャンが待ってましたとばかりに小走りに玄関へと向かう背中をライナーとベルトルトがキッチンとリビングから見送るとすぐに、ジャンの何とも言えない声がして二人は急ぎ足で玄関へと向かう。
    「ぅ、あぁ…?!なん、だそれ、」
    「ジャン、どうした…!」
    「………あ、かちゃん…?」
     三人の目の前にはスリングで静かに寝息を立てる赤ん坊と妙にそれが様になっているマルコが苦笑いを浮かべながら頬を掻く、酷く困惑した表情なのはジャンとベルトルトだ。
    「実は、親戚の子なんだけどさ…母さんが預かってたらしいんだけどぎっくり腰になっちゃって、明日まで預かることになっちゃってさ…いい、かな…?」
    「俺は、全然構わないが」
    「僕も、まあ、うん…」
     そろそろと自分の背に隠れるジャンを横目にライナーが眠る赤ん坊の小さな指を撫でる、困った顔のベルトルトは視線をあちらこちらとさせながら一応に頷いて、後はジャンの返事を待つばかりだ。
    「……ジャン、いい?」
    「言っとくけど!俺、赤ん坊の世話なんか、出来ねえからな…」
    「みんなごめんな、なるべく迷惑かけないようにするから」
    「気にすんな、手伝うから」
     
     リビングのソファに漸く荷物を下ろして一息ついた頃、マルコの腕の中の赤ん坊の顔がクシャりと歪んで次第に赤くなる、まさに赤ん坊の顔色で火がついたように泣き出す様子にジャンは二、三歩後ずさってベルトルトは困惑気味にマルコとライナーを見やる、至って平然とした二人はテキパキ泣き声等気にも留めない。
    「マルコ、俺が抱いてるからミルクを…」
    「ライナーありがとう、ちょっと頼む」
     ライナーが手慣れた様子でひょいと赤ん坊を抱き上げるとマルコもキッチンで早速哺乳瓶を取り出しミルクの準備を始める、泣き止みはしないものの段々小さくなる声にジャンは少しばかり息を吐いて遠巻きにライナーの腕に抱かれる赤ん坊をまじまじと見つめる、あまりにも馴染みのないその「生き物」が恐ろしくすらある。そんな自分とは裏腹に実に手馴れた様子のライナーの姿に抱かれる赤ん坊へ嫉妬にも似た妙な感覚がジャンを包んでそして、不満げな顔を作る。
    「…んでそんな手慣れてんだよ」
    「前話したろ、年の離れた従姉妹がいるから実家ではいつも面倒見てたんだ」
    「……へえ、」
    「お前も抱いてみるか?」
    「………いい、」
    「ライナーありがとう、代わるよ」
     そんな二人のやり取りを他所にマルコが哺乳瓶を手に近付いてきてこれまたひょい、と慣れた様子で抱き上げ赤ん坊の口へ哺乳瓶を運ぶ。
     マルコに年の離れた兄弟がいることは知っていたものの所謂兄らしい姿を見るのは初めてでジャンは必死に哺乳瓶に吸い付く赤ん坊を微笑ましげに見るマルコとライナーにまた、何とも言えない感情を抱きながら我関せずと言いたげにテーブルに置いたままの本に手を伸ばすベルトルトの肩を小突いてこそりと耳打ちする。
    「……なあ」
    「え、…なに?」
    「赤ん坊って、何か…怖くねえ?」
    「怖いよ…力加減分かんなくて潰しそうで、」
    「何考えてんのか分かんねえから俺は全然、可愛いとか思えねえ」
    「…悪いことじゃないよ、ジャンも僕も小さい子供なんて触れ合う機会が無いんだからさ」
    「二人は難しく考え過ぎなんだよ」
     そんな二人のやり取りを聞いていたのかすっかり空になった哺乳瓶を片手にマルコが苦笑いを浮かべて呆れたような声を漏らす。
    「赤ん坊なんて寝て起きて、ミルク飲んでの繰り返しだよ。それに普通の人間が触った位じゃ潰れたりしないんだよ」
     何事も勉強勉強、なんて言いながらマルコがジャンへと満腹ですっかり上機嫌の赤ん坊を差し出す。グッ、とたじろいだジャンが恐る恐るに手を伸ばして腕の中へと収めてみると思いのほか重たくてそして、柔らかい。
    「赤ちゃんてね、相手がどんな人か分かるんだ。ジャンのこと全然怖がってないだろ?ジャンがちゃんと優しいって分かってるんだよ」
     マルコの言葉にこちらへ手を伸ばしながらあうあう、声を上げる赤ん坊の顔をジャンは初めてまじまじと見つめ、そんなジャンの様子に安堵したような顔でマルコはライナーへ目配せする。
    「少し、買い物に出てもいいかな?」
    「ああ、任せろ」
    「ぼ、僕も行くよ!」
    「……うん、じゃあお願いするよ」
     未だ赤ん坊からの距離を保つベルトルトにマルコは肩を竦めながらもエコバッグを片手にライナーへと頼むと片手を上げて小走りに出ていく。洗うからと受け取った哺乳瓶をライナーがキッチンで洗い流しながらジャンの様子を伺い見ていると聞き取れない喃語に「何だよ、」と満更でもない顔で表情を緩めるジャンが妙に愛しくて今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる。
    「ジャン、マルコの代わりに風呂掃除してくるけど…大丈夫そうか?」
    「…ん、泣いたらライナーにぶん投げる」
    「お前なぁ、」
    「早くしろって、今機嫌いいんだろ?」
    「じゃあなんかあったらすぐ言えよ」
    「おー。」
     やはり少しばかり心配でジャンの背中を見ながらライナーは小走りに今日マルコが当番の風呂掃除にそそくさと勤しむ。
     掃除しながらも耳だけはリビングに向けていて、でも静かな雰囲気にそれもまた心配でライナーは普段より急ぎ足で掃除を終えた。
    「ジャ、…」
     ライナーが急いでリビングへと戻るとさっきまでいた場所にジャンの姿はない、代わりに二人の部屋の扉が少しばかり開き、風に乗ってジャンの声がかすかに聞こえる。ライナーは静かに扉を開きながら部屋へと足を踏み入れると開け離れた窓辺でジャンの耳馴染みの無い子守唄だろうか、酷く優しい歌声が聴こえる。
     それはあまりに神秘的で美しくて、風にそよぐ白いレースのカーテンが余計に美しさを演出して声をかけるのすら思わず、ライナーは躊躇ってしまうほどだった。
    「それ何の歌だ?」 
     ジャンの背後からライナーが二人ごと長い腕でその体を抱き寄せる、すっかり穏やかな寝息を立てる赤ん坊と驚いた様に少しばかり肩を跳ねさせたジャンが声を落として肩に顎を乗せるライナーをチラと横目に見る。
    「俺の母ちゃん近所じゃ寝かしつけのプロって言われてんだよ、母ちゃんが抱いて寝ない赤ん坊居ねえって」
    「……はは、何か想像出来るな」
    「その母ちゃんがガキの時よく歌ってた歌」
    「なるほど、よく寝てる筈だ…腕平気か?代わるか?」
    「……や、大丈夫」
    「そうか、なら座れ。俺が背もたれになってやる」
    「…なんだそれ」
     二人が言葉を交わす声色は酷く穏やかで静かだ。ライナーが壁に寄りかかりながらベッドに腰かけその足の間にジャンが入り込んで座る、背もたれはライナーだ。立てた膝と包み込む腕の中で赤ん坊はこの家に来て一番穏やかな表情で眠っていた。
     背後からジャンの体を赤ん坊含めまた丸ごと抱き寄せながらライナーは有り得ない空想を頭に浮かべて一人笑う。
    「…なんだよ、」
    「いや、こうやって俺とジャンと、赤ん坊がいる生活ってどんなだって考えてた」
    「子供欲しいのか?」
    「…子供は好きだけど、俺は自分の腕に収まるだけしか守れない」
    「今、入ってんだろ…」
    「子供がでかくなったら収まんねえ。それに俺はジャンがいれば十分だ、ジャンがいたらそれでいい。子守りは実家に帰った時で十分だ」
    「……恥ずかしい奴だな、」
     部屋に立ち込める甘ったるい空気を赤ん坊のくふーとよく分からない音の寝息が掻き回して二人は肩を震わせて静かに笑う。
     そして静かに触れるだけのキスをして鼻先を擦り合わせながらまた、笑った。



     それから二時間ほどしてマルコとベルトルトが帰宅する、すっかり部屋で三人固まってまるで親子の様に眠る姿にマルコは思わず携帯を構えてシャッターを切る。「可愛いなぁ」なんて呟きながら微笑ましげに三人を見るマルコにベルトルトは自分だけ取り残されたような気持ちを抱きながらもやっぱり、赤ん坊に自ら近づこうとはしなかった。

     そこから先はライナーがオムツを替える時に不意打ちで赤ん坊からのシャワーを受けたりジャンがミルクやりにチャレンジしたりとあっという間に時間が過ぎてとっぷりと夜が暮れる。
    「潰しそうだから」とベルトルトが二人の寝室を出てリビングの窮屈なソファーに体を横たえてから数時間、ふっと目を覚ますと扉の向こうから微かに赤ん坊の泣き声が聞こえる、いつまでたっても泣き止まないそれにそっと、扉を開いて隙間から覗いてみる。
     マルコが赤ん坊を抱きながらゆらゆらと体を揺らしていた、いつからそうしていたのか少しばかり体がふらついて危なっかしい。背中からもう疲れが滲み出ていた。

    「……マルコ、大丈夫…?」
    「…あ、ごめんな、起こしちゃった…?やっぱりお母さんが恋しいのかな…」

     お手上げだ。なんて苦笑いを浮かべながら振り向くマルコの目元にもやはり疲れが滲んでいてベルトルトは堪らず部屋へと足を踏み入れた。自分には何も出来ないと分かってはいるけれど。

    「なんか、手伝えることあるかな…」
    「……トイレ、行きたくて」
    「あ、え、じゃ、えと、抱、く?」
    「……大丈夫…?」
    「少し、だけなら」
    「…ありがとう、ベルトルト」
    「うん、」
     恐る恐るに腕を伸ばすと自分の太く長い腕にはあまりに小さくて弱々しい赤ん坊の柔らかい感触が分かる、力加減に気を付けながらに抱いてみると泣き喚いていた声が徐々にだけど小さくなっていく。
    「……ベルトルトの腕は大きくて優しいから、安心出来るのかな…」
    「そう、かな…」
    「僕がそうだから」
     なんて言って安堵した様な顔のマルコがブルりと震えて小走りに部屋を出ていく、遠くなる足音を聴きながらしっかり両腕で抱いた赤ん坊のふにゃふにゃとした泣き顔を見ながら思わずボソリと本音が漏れた。
    「君はいいね、マルコを独り占めできて」
     羨ましいよ。と呟くと泣き腫らした赤ら顔がふわと欠伸をして口をもごもごと動かす。ゆっくりと閉じては開く瞼に静かにベッドへと腰掛けてみるとタイミングよく疲れたのか瞼が重たくなってそして閉じられ穏やかな小さな寝息が聞こえ始めた。
    「……ぁ、寝た…?」
     急ぎ足で戻ったマルコが扉を開くとすっかり静かになった部屋に驚いた表情で恐る恐るに近づきベルトルトの腕の中の赤ん坊の寝顔を見つめる。タイミングが良かっただけだと苦笑いを浮かべるベルトルトの側に身を横たえて胡座をかく太ももへと頭を乗せた、すっかり疲れの見える顔に片腕で赤ん坊を抱きながらゆっくりと髪を撫でて見る。マルコの手が伸びて互いの指先が繋がりそしてベルトルトの指でマルコは自らの頬を撫でた。
    「……やっぱりベルトルトの手はいいなぁ…」
    「そうかな、」
    「安心する…つい眠くなってくるよ」
    「少し寝たら、僕はさっき寝たから」
    「ありがと、今日は皆に迷惑かけちゃったな」
    「僕は、何もしてないけど…」
    「今してるじゃないか」
     やっと横になれた、と漏らすマルコの口調はもごもごとしてゆったりと今にも眠りに落ちてしまいそうだ。ベルトルトはゆっくり胡座の真ん中へ赤ん坊を収めるとすっぽりとはまって寝心地がいいのか寝息は穏やかで漸く両手が空いてマルコの髪を優しく撫でる。
    「……あー…ダメだ、寝ちゃう…」
    「いいよ」
     ベルトルトの低く優しい声が腿から伝わってマルコはあっという間に寝落ちる、ずしりと伝わる二人分の重みがベルトルトに何とも言えない感情を抱かせる。
    「……怖いなぁ、失っちゃうのが」
     直に感じる体温と重さがベルトルトに初めて責任感のようなものを芽生えさせた。
     なんとも言えない顔で二人を見下ろすベルトルトの目にまるで哺乳瓶を吸う様に口を動かす赤ん坊の寝顔が目に入り思わず吹き出す。
    「なんの夢見てるの…?」
     無意識に言葉を漏らしたベルトルトに答える様に形容しがたい音で赤ん坊が声を漏らした。そのまま壁によりかかりうたた寝はしながら三人は穏やかに朝を迎えた。




        ****


    「皆、昨日は本当にありがとう」
    「気にするな、またいつでも連れてこいよ」
    「またライナー顔面シャワー浴びんじゃね?」
    「全く動揺してないのに本当に驚いたよ」
     玄関で再びスリングに赤ん坊を抱えながら荷物を抱えたマルコを前に三人は口々に声を掛ける、当然手を振るでもない赤ん坊を三人はそれぞれに手を振り見送る。
     

     ばいばーい、とマルコが赤ん坊の手を振りパタリと扉が閉まって残された三人は独特の感触と体温、匂いをどこか名残惜しげに思い出していた。




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    aYa62AOT

    DONE美味しいチョコありがとうございました。
    ハピエン厨ですびばぜん!!!
    ライナーへチョコを渡せなかったジャンの話 ジャンはもう30分右へ左へウロウロとショッピングモールのチョコ売り場の前を行ったり来たり繰り返している、ここ数日売り場の前を行ったり来たりしては帰るばかりだったものの流石に今日は買わなければと意を決したようにジャンは漸く、売り場の中へと足を踏み入れる。
     友チョコ、なんてものがあるとは言えやはり居心地は悪い、しかし手近にあるチョコを買って帰る事はせずにしっかりチョコを吟味する辺りにジャンの生真面目さやプレゼントする相手への気持ちの強さが窺えた。
    「——よし、これだ」
     売り場に入ってから少しばかり急ぎ足で一周ぐるりと回って決めたビターテイストのトリュフチョコの詰め合わせを手に取る、黒に金字で文字の書かれたシンプルでシックな包装紙はきっと幾つも可愛らしいチョコを貰うであろう相手の目を引くはずだ。なんて打算的なことも思いながらジャンはレジへと向かう。支払いの間はやっぱり気恥しさから俯きマフラーへ口元を埋めながらボソボソと返事をして足早に店を出る、駆け足に売り場から何十メートルか離れたところで漸くジャンはホッと息を吐き出す。
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