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    花月ゆき

    @yuki_bluesky

    20↑(成人済み)。赤安大好き。
    アニメ放送日もしくは本誌発売日以降にネタバレすることがあります。

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    花月ゆき

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    秀零の日。
    記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸で一緒に住んでいる設定です。

    https://poipiku.com/1436391/9417680.html

    #赤安

    【最終話】Heartfelt Memories(旧題:記憶は心の底に)⑬―コナンSide 10月―


     十月十日。
     コナンが工藤邸を訪れると、赤井と降谷の二人の声が玄関まで漏れ聞こえてきた。
     昼間はトロピカルランドに遊びに行くと言っていたが、もう帰宅し、二人で夕食を作りはじめているようだった。コナンは二人に誘われて夕食を食べにきたのだが、今回もとてつもないボリュームの料理が作られているような気がする。
     ちょうど一年前。二人がカレンダーを見ながら、「今日は何の日だろう」と首を傾げていたことをコナンは思い出す。
     先月、解毒薬を受け取った二人がこの家に帰ってきたあと、赤井、降谷の順番に解毒薬を飲んだのだと聞いた。薬を飲んだあと、しばらくは発熱もあったようだが、再び身体が縮むこともなく、無事に一ヶ月が経過した。
     灰原の忠告を二人は守り、ほとんど外に出ずに過ごしていたが、明日からは“本来の日常”に戻ることになる。
     FBIと公安、それぞれの機関に二人が復帰することで、組織壊滅への動きも大きく前進するに違いない。
    「いらっしゃい、コナン君」
    「もうすぐできるからな、ボウヤ」
    「うん!」
     二人で暮らしている間、自炊をたくさんしていたからだろう。二人の料理の腕はさらに上達していたようで、テーブルの上を見ると、三ツ星レストランのシェフ顔負けのコース料理が並べられていた。
     二人に進められるがままに、コナンはお腹がはち切れそうになるまで料理を堪能した。
     
     食事の後片付けは、降谷がすることになった。信じられないことに、赤井と降谷はじゃんけんでそれを決めた。
     勝ったのは赤井で、降谷は悔しそうにしていた。後片付けをすることではなく、赤井にじゃんけんで負けたことが悔しいようだった。
     赤井と二人でリビングに移動する途中、コナンは今がチャンスだと赤井に問いかけた。
    「赤井さん……実はずっと気になっていたことがあるんだけど」
     内緒話をするように声を小さくしたので、コナンの身長に合わせるように赤井がその場に屈む。
    「なんだ?」
    「十月十日って、本当は何の日なの?」
     イチとゼロで、秀一と零の日――ということになっていたが、本来は何の日だったのか、コナンはずっと聞いてみたかった。もったいぶることもせず、赤井は即答した。
    「十月十日は、俺がはじめて降谷君に告白をした日だ。その日は振られてしまったがな」
    「振られたの」
    「ああ、その日から降谷君が俺との交際を認めてくれるまで、一年近くかかったよ」
    「そ、そんなに……」
     あんなに赤井に夢中の降谷が交際を断ったことにも驚きだが、一年も諦めずにアプローチを続けていた赤井にも驚きだ。
     続きはリビングで話そうと赤井が立ち上がったところで、赤井のポケットから何かが転がり落ちた。
     膝を曲げて屈んだことで、ポケットの中身が飛び出してしまったのだろう。赤井は大事そうに小さな箱を手に持ち、もう一度、今度はポケットの奥へとしまう。見間違いでなければ、赤井が手にしていたそれは、ベルベット製の箱だった。
     赤井がシーッと人差し指を口に当てて言った。
    「今年の十月十日も、特別な日にしようと思ってね」
     赤井が降谷に何をしようとしているのか。ポケットの中身がすべてを語っている。
     二人の歴史が変わる瞬間を目の当たりにしたようで、コナンは胸がドキドキした。

     後片付けを終えた降谷も交えてリビングでしばらく談笑し、遅い時間にならないうちにコナンは家に帰ることにした。この後、降谷には赤井からの特別なサプライズが待っている。まるで自分のことのように緊張しながら、この一年間、言い慣れた呼び方で、コナンは玄関先で二人に激励の言葉を送った。
    「頑張ってね、秀一兄ちゃん! 零兄ちゃん!」
     降谷には、「明日からお仕事頑張ってね」というふうに受け取られたかもしれないが、赤井は自分が送った言葉の意味を正確に理解しているだろう。去り際に目に入った赤井の微笑みが、すべてを物語っている。その隣で、無邪気に手を振っている降谷は、まだ何も気づいていない。

     工藤邸からの帰り道。心の底から込み上げてくる笑みを、コナンはおさえることができなかった。
     今日は本当に、良い記念日だ。

     次は俺の番だな。そんなことを思いながら、コナンは恋人の待つ探偵事務所へと走り出した。


    FIN
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