鏡の上で、アンタをさがして 心を重ねたとて、結局は救えないものがあるのだと知った。
現実の世界で太陽の眩しさに手で影を作った。
梅雨明けの空はうすぼんやりした青を見せているのに、太陽だけが刺すように痛い。
手の隙間から針のように目を焼きにくる。
ふと、オーヴァンとの最後の会話を思い出してしまい、手を下ろして建物の影に滑り込む。
思ったより身体が暑くなっていたのか、ビルから流れ出る冷風が肌を冷やした。
あの男は、犬童雅人は本当にこの世から居なくなったのかは分からない。
遺体でも確認すれば或いはと思うが、あの男の肉体の死は精神の死ではない。
犬童雅人とオーヴァンが証明してしまったからだ。ハロルド・ヒューイックと八咫は別次元の話であるわけだし、オーヴァンは新たな可能性を示してしまった。
あのThe Wordにいる存在の数だけある可能性を。
そんなんだから、非現実的な考えを持ってしまうんだ。
ネットの世界であるのなら、
またあの男の欠片を拾えるのではないのかと。
リアルの雑踏の中で、アンタの声が聞こえるんじゃ無いかとか。
スクランブル交差点が見える景色を、オーヴァン、アンタが見ているんじゃ無いかとか。
俺は、探している。
俺を見ているアンタを、探し続ける。