「あーあ。ボクは随分と厄介な男に捕まってしまったね」 それは2人で出掛けた帰り道のことだった。
色づいた街路樹を眺めながら、季節の新作について話していた。今年から新しく出したカボチャを使ったプディングの人気は上々だとか、ホリデーのために今年もいくつか試作品を考えているとか、そういう他愛もない話だ。
そうして穏やかに相槌を打っていたリドルが脈絡なく小さく笑いを漏らしたから、珍しいこともあるものだと思いながら戯れるように小突いた。
「ふふふ、大したことじゃないんだけどね? 休憩中に後輩達が話していたのを思い出して」
そう言ってリドルは楽しげに落ち葉を踏む。
ワインレッドの髪は銀杏並木によく映える。マジカメに上げこそしないが、そのリドルの横顔を写真に収めたくなるというのはなんとなく分かるな、とこの場にいない親友に賛同する。
2018