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    okjk114mara

    @okjk114mara
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    okjk114mara

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    【すきまのすきのまのすきま】

    ・大誠くんとレオくんがバチバチ祝くんマウント取り合う話
    ・ちょっぴり意味がわかると…成分有り

    放課後の教室。
    誰もいなくなったその場所で、1人作業を終えた新堂大誠は己の達成感を噛み締めるように背伸びを一度した。

    「うっし、日直の仕事終わりっと」

    首の辺りを押さえて軽くコキコキを左右に鳴らす。
    そうして、ずっと上を向いていた疲労感を払っていると、教室の扉が開く音がした。

    「あ………よぉ、レオか。」

    気が付いてからの意味ありげな間の置き方に、同じクラスの富樫レオは軽くため息をつく。

    「君って、ホントに分かりやすいよね?
    僕じゃない誰かでも待ってた?」

    レオの言葉に、大誠は隠すことなく驚きを露にする。その馬鹿正直な反応に、レオはまた笑みを浮かべて更に言葉を続けた。

    「当ててあげようか?風間祝…どう?当たった?」
    「…あ」

    もはや驚愕を通り越して絶句する大誠は、まるで目の前に名探偵でも現れたかのような目でレオを見つめている。しかし、一方でレオはというと愉快半分呆れ半分で、大誠のその眼差しを制するように手を左右に振った。

    「図書室から戻るときたまたま職員室前で見掛けたから、祝から事情を聞いただけだよ。前に先生に言われていた宿題を提出出来なかったからその代わりとして雑用させられてるって。」
    「ああ、てことは、あの宿題か?…別に難しい計算問題とかが出てた訳でもねぇのにな。」
    「まあ、算数や国際の問題なんかよりも、用紙に筆するには難しい事がたくさんあるもんだよ?」

    例えば…と言いながら、レオは図書室から持ってきたものだろう沢山のオカルト本を自分の机の上に置いた。その中から栞の挟んであるページ全てを大誠に見せる。

    「どの本にも同じ妖怪についての詳細が掛かれているのに地方や学校によっては全然違う名前で呼ばれる妖怪とか都市伝説があるだろ?
    これがどうして統一されないのか考えたことはあるかい?」

    突然始まったレオのオカルト話に、大誠は圧倒されながらも首を横にふる。

    「これは僕の自論と思って聞いてほしいんだけど、恐らく名前が統一化されないのは、その妖怪としての存在を消して終うからじゃないかと思うんだ。妖怪ってのは人間の思い入れとか何かしらの念で産まれたものだと思ってるからね。だからそれらが統一化されてしまうと、妖怪は個性を無くす…つまりは消滅してしまうんじゃないかなと僕は考えているんだ。」
    「いや、ちょっとまってくれ。分かったけどわかんねぇよ。」

    熱弁するレオの言葉を遮るように、大誠はやっと口を開く。

    「その事と祝となんの関係があるんだよ。」
    「…ああ、ごめんね。凄く回りくどかったかもしれない。」

    ふぅ、と一度深呼吸して冷静さを取り戻す。
    そして、今度は大誠の目を見て彼は言った。

    「僕は祝が好きなんだ。」

    ドキリ、とした。
    レオの言葉を受け止めて、大誠は再び言葉を失う。
    恐らくは気付いている。
    レオは知っているんだ。
    そうだろうな。…なにせ自分より頭の良い奴なのだから。

    「いや、別に新堂と喧嘩したい訳じゃないよ。それにきっと僕の好きは君の思う好きと違うと思う。」
    「…わかんねぇ。好きって他にもあるのか?その…特別になりたいとか以外によ。」
    「…はは、君は本当にイイヤツだよ新堂。」

    皮肉などではなかった。
    それが分かりやすい程、レオの言葉は真っ直ぐで素直な気持ちをぶつけているのだ。

    「僕は祝の…祝自身にある『トクベツ』が好きなのかもしれない。だってシュウってああ見えて結構ナゾが多いところあるからさ。」

    今日だってそうだ。
    レオは話を続ける。

    「シュウ…宿題を出してなかったよね?
    あれだって本当は忘れたんじゃなくて、出せなかったとしたら…とか。」
    「そんなの…ただのオクソコ?ってやつだろ?」
    「うん。憶測だけどね。」

    あはは、と笑ってからレオは「だから」と再び大誠を見て口を開く。
    回りくどかった先の、結論を、出した。

    「君と付き合ってシュウが普通になる。…僕の『トクベツ』じゃなくなるのが…イヤなんだよ。」

    風が吹く。
    締め切った窓がガタガタと揺れ、その場の沈黙を許さないと言わんばかりに音を立てた。

    騒がしい。

    それは心の内なのか外なのか…
    互いが自身の胸の内に問い悩む。

    「あ、そういえばシュウに頼まれていたんだっけ」

    まるで先程までの空気を払うように、レオは大誠に語りかける。

    「地域によって名前が違うというのがこれにもあってさ、『すきま女』って都市伝説なんだけどね。これって他では『すきま男』とも呼ばれていたりするんだよ。」
    「す、すきま?」
    「うん、例えば…君の後ろのロッカーと壁、少し隙間があるだろ?ああいう所に住み着いて時には人を引きずり込む都市伝説さ。」

    レオが指差したその場所を振り向いてみる。
    暗い隙間。
    日が傾いてきた教室にあるそれは、更に闇を帯びていた。まるで、その深淵から誰かが覗いている気がして…
    そこまで考えて、大誠は首を振ると再度レオの方に視線を戻した。


    「それでシュウが言うにはさ、『すきま女』や『すきま男』がいるのなら、このご時世『すきまジェ◯ダー』がいないのはおかしいって言うんだよ。笑っちゃうだろ?」
    「ツッコミづれぇよそんなの」
    「うん。でも、居るわけないって調べもせずに断言するのは何となく嫌でね。だから一度ネットや本で調べてから改めて断言させて貰うつもりさ。」
    「いや、なにもそこまでする必要、あるか?」
    「あるよ!大いに!ここで貸しを作っておけば、また祝の家に行けるかもしれないだろ?」

    その言葉に、大誠は軽い頭痛を覚える。
    家?…そういえば祝の家には一度も行ったこと…あれ?あっただろうか?
    行ったような気もしたが、それは自分の願望が強すぎて夢を見たのだ。
    だから、まだ祝の家に遊びに行ったことはない。
    ここまで考えて、大誠は改めてレオが一度祝の家に行ったことあるという言葉に強烈な嫉妬心を感じた。

    「ちょっとまて!オレまだ一回もアイツの家に行ったことないぞ!」
    「え?もう行ってるものだと思ってた。…じゃあ、僕が一歩リードってやつなのかな?」
    「リードってなんだよ!譲らないからな!」

    バンッと机を叩いてから、大誠は「それに」と加えて言葉を続けた。
    真っ直ぐレオを見つめて、素直な気持ちを大切な友達に向ける。

    「アイツは風間祝じゃん。妖怪とか都市伝説なんかと一緒にすんなよ。アイツはオレ達と同じように笑うし怒るし泣くしバカする大事な……オレの『トクベツ』なんだよ。」
    「……うん、わかってるよ。大事なクラスメイトだってことも君の『トクベツ』もさ。
    だから僕のこの気持ちは気にしないで?僕の『ワガママ』みたいなものなんだし。」
    「レオ…」

    気遣いを見せる大誠の声色に、レオは苦笑する。

    「だけどね、ちょっとでもスキマがあったら抉じ開けて入って僕の『トクベツ』にしちゃうからねっ」
    「お、おお!上等だ!絶対アイツを離さないからな!」

    純粋にその熱意を訴える大誠に、レオはため息を吐いてまた苦笑した。
    はいはい、ごちそうさまです。

    そういいかけた刹那、教室のドアが開いて渦中の人、風間祝が入ってくる。

    「終わったよ…て、2人してなにしてるの?下校時刻過ぎるよ?」
    「いや、オマエ待ってたんだけど?」
    「は?待ってて、って言ったっけ?」
    「いや、言っ…………てねぇけどよ!」

    その2人のやり取りに、レオは腹を抱えて笑っていた。そんな彼を無視して、祝はいつもの調子で大誠の方に歩み寄ると口を開く。

    「全く。このシャイミングビューティフルなボクを待ちたいのなら、それなりの身嗜みをしたまえよ。」

    そういうと祝は大誠の後頭部についたチョークの粉を払った。

    「あとキミ、日直って言ってたけど、キミの日直は一昨日だったでしょ?」
    「あれ?そうだっけか?んなのイチイチ覚えてらんねぇよ。仕事が残ってたらやってあげるのがフツーじゃん。」
    「もう良いよ。大誠のオヒトヨシには付き合ってられないね。」

    そういうと祝は帰り支度を済ませた大誠の腕を掴み、自分の鞄を手に取るとレオの方を見つめた。

    互いの視線が合う。
    一方は驚愕した目を向けて。
    一方は何でもないと言う目を向けて。

    「じゃあ、お先にねレオ…」

    微笑んだ祝は彼に手を振ると、大誠と教室を後にした。
    静まりかえる空間。
    取り残されたその場所で、ふと後ろを振り返る。

    ロッカーと壁の隙間。
    深淵はモノを言わずそこにあった。

    いや、見ていたのだ。
    ずっと…あそこから…いままでを。

    その悪魔の証明をした時に、レオの背筋をぞわり。と異常が撫でる。
    それが望んだ『トクベツ』だと気付いたとき、彼は思わず口にした。

    「もしそこに手を出したなら、君は僕の手を引いてくれるのかな?」

    振り返ったその正面は、肯定も否定もせずに、ただ狭く儚い闇を魅せるだけだった。
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