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    クロロレ。ェュ前提ですのでご注意ください。
    紅花ルート

    有情たちの夜.18「その後・上」 ローレンツを解放した翌日、ヒューベルトは帝国が接収したデアドラ港で遠眼鏡を手にしていた。クロードがちょっかいを出している沖合の島は遠眼鏡を使えばかろうじて目視が出来る。
    「ヒューベルト、私にも貸してくれないか?」
     好奇心旺盛なフェルディナントが差し出した手に遠眼鏡を渡した。ヒューベルトの主君エーデルガルトが中央教会に宣戦布告するまで、レンズを縦に二枚並べることは禁忌だった。心底くだらない規制だったと思う。
    「艀(はしけ)も使うのでしょうがこれは……」
     デアドラ港を管理しているのは帝国本土から派遣された官吏たちだ。彼らは帝国の双璧が語り合う様子を緊張した面持ちで見つめている。一人歩きする噂をヒューベルトたちは放置していた。怖がられている方が便利な時もある。
    「うむ、かなり大きな船も接岸しているな!」
     良港として知られるポラマス港を領地に抱えるフェルディナントの感想はもっともだった。あれは元からなのか、それとも膠着状態だった五年の間にエドマンド辺境伯と組んでクロードが整備させたのか。報告書で読むのと遠目であっても目視するのとでは大違いだ。
     ヒューベルトの勘は後者だと言っている。脅威のはずなのにヒューベルトから借りた遠眼鏡で島を見るフェルディナントの横顔はただひたすら純粋な感嘆に満ちていた。彼は常に、無意識のうちに真っ直ぐであろうとする。ヒューベルトよりずっと絆されやすいのに評価は決して属人的ではない。人と行為と結果をきちんと切り分けている。
    「実際に足を運んでみようと思います。貴殿は遠慮せずに……」
    「同行しよう」
     遠眼鏡を返しつつ、フェルディナントはきっぱりと言い切った。父が失脚した後も家臣たちが離れなかったの理由のひとつだろう。
    「純粋な厚意を無駄にしないでいただきたい」
     自領、フリュム領、帝都、と忙しく行き来している彼が大親友と言って憚らないローレンツと会う機会は滅多にない。フェルディナントは大親友と次に会えたら共にしたいこと、話したいことの一覧を作っていて、会える日をいつも楽しみにしていた。
    「ヒューベルト、私は今回ローレンツに言いたいことは全て話したし、淹れた紅茶も飲んでもらえた」
     ローレンツの足止めをさせようとしたことを非難しているのかいないのか。士官学校にいた頃はフェルディナントとローレンツが意気投合する様を見て空虚で底が浅いと思っていた。ところが今はどうだろう。フェルディナントにはヒューベルトと違って嘘がないのに意図を測りかねる時がある。
    「……分かりました。貴殿の明るい髪や大きな声は印象に残りやすいので頭巾を用意しましょう」
     替えを行李の中に入れてあったはずだ。主君エーデルガルトが言うところによると、同性同士で付き合う利点の一つは洋服の貸し借りができること、らしい。幼い頃からエーデルガルトの身の回りの世話をするのはヒューベルトの役目だった。戦時中から顕著だったが、良くも悪くも主君はヒューベルトの手を離れつつある。
    「だがその前に官吏たちにいくつか質問してからだな」
     ヒューベルトはフェルディナントの言葉に頷いた。専門家ではないので何をもって通常とするのか、最低限の知識を入れておかねばならない。

     飾り気のない襯衣と頭巾付きの外套に着替え、ヒューベルトたちは駐在する官吏たちから二人掛けの鞍と飛竜を一頭借りて沖合の島へと向かった。統一前は市街地で産婆と消火隊とリーガン家の者しか街中で飛竜に騎乗することはできなかったと聞く。だが沖合の島とデアドラ市街を往来するには飛竜や天馬を使う者が多い。眼下の船を避ければ〝落とし物〟で迷惑をかけることがないからだ。
     飛竜の手綱を操るフェルディナントが眼下の街を見て感嘆の声を上げる。通常なら道があるところが青く、網目のように水路が通っていた。クロードも同じ眺めを楽しんでいたのだろう。わざと旋回した後で一直線に島を目指していく。
    「素晴らしい眺めだ!あっという間についてしまうのがもったいないくらいだな!」
     ヒューベルトは高いところが苦手だが、彼と共にいる時は恐怖を感じなかった。



     クロードの置き土産である沖合の島は帝国が直轄しているわけではない。フォドラ全土が帝国に統一されたので彼らはいつでもここを厳重に管理する権限はある。全てを掌中におさめるため信頼できる官吏たちをフォドラ中に派遣するのが理想だ。だが、五年間に及ぶ大乱で戦死者が出過ぎたので現地の者に任せざるを得ない。
     そんな訳でグロスタール家が、もっと正確に言うならローレンツがデアドラ港以外の旧リーガン領を管理していた。敵対していたグロスタール家の嫡子ということで反発は大きい。それでもローレンツは粘り強く各地に顔を出し、膝を折って平民たちの声を聞き続けた。
     島で働く者たちに関しては沿岸部に現れた魔獣を撃退してみせたことが、最も効果的だったのかもしれない。今では幾許かの信頼を勝ち取り、皆がこぞって前回の視察後、何があったのかローレンツに報告してくれる。沖合の島は船乗りや荷揚げや荷下ろしに従事する沖仲仕たちが多く皆、気性が荒いが気立ては良い。
    「ローレンツ様のいう通り、頭巾を被った男たちが島にやってきました」
     ローレンツは島で働く者たちに自分が知る限りだが、帝国の中枢にいる者たちの顔立ちを教えていた。決して危害を加えてはならない、彼らの前では行儀よく、という言葉を添えて。もちろん単なる空似の時の方が多い。だが、数週前にわざわざローレンツを尋問しにきたヒューベルトがこの沖合の島を直接見に来ないわけがなかった。
    「二人とも僕と同じくらいの背丈だったのかい?」
     沖仲仕が教えてくれた通りならその二人組は帝国の双璧で間違いない。彼らは汗を流すための公衆浴場や沖仲仕たちが船を待つための待機場所などクロードの平民たちへの思いが詰まった場所を訪れたようだ。ローレンツはフェルディナントへ敬意を表し、簡単な読み書きや算術を教える教室も作っている。
    「ええ、なんだか変わった人たちで、片方が教室を見て何か言おうとした時に口を押さえられていました」
     フェルディナントで間違いないし、彼の口を直接押さえられる男などヒューベルト以外この世に存在しない。ローレンツに言ってくれれば正式に案内もできた。そうしなかったヒューベルトにフェルディナントが強引にくっついてきた、というところだろうか。
    「そうか、他には?」
    「パルミラからの荷を積んだ船を気にしていました」
     やはりロクロードはパルミラに追放されたらしい。ヒューベルトは誤解されやすいことが残念だ、というのがフェルディナントの口癖だ。だがローレンツの友人はヒューベルトが陰謀渦巻く宮城で生き延びるために身につけてしまった分かりにくさすら愛している。
    「なるほど。特に問題はないが参考になったよ、感謝する」
     一節ずれていればパルミラで年に何度か開かれるという大きな薬草市で出回った、使いようによっては危険な薬草が積荷に含まれていた。ヒューベルトの目に止まったら厄介なことになっていただろう。
     もう少し話す時間が取れるかと思ったがそこにスレンからの船が着いた。皆の口ぶりからするにどうやら数日遅れていたらしい。ただでさえ遅れている荷揚げや荷下ろしなどの作業に取り掛かるため、ローレンツを囲んでいた者たちはさっと退いていった。だが、空いた時間で蝋引きの書字板に書き留めておくべきことを書いておけるのでこれも悪くない。ローレンツが鉄筆を走らせていると先ほどは人の輪に加わっていなかった者が声をかけてきた。人目を避けるよう指示されていたのかもしれない。
    「ローレンツ様、パルミラ船の船員からこんな物を預かりました」
     受け取った布の袋を触ると中に何か小さくて固い物が入っている。金貨を渡し、物陰で中身を確認すると赤い薔薇の花を模った髪飾りが出てきた。分かりきっているが、それでも硝子玉なのか本物なのか宝石商に確かめて貰わねばならない。航路の安全性や治安の良さを見せつけてくるような、クロードからの伝言が意味するところは明確だった。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    8.背叛・下
     雷霆を振るうカトリーヌの名を聞いた者に多少なりとも英雄の遺産や紋章の知識があったならばそれがとんだ茶番だと判るだろう。だが無謬であるセイロス教会が彼女をカサンドラではなくカトリーヌと呼ぶのならそれに従うしかない。カロン家当主としても令嬢カサンドラに死なれるよりはガルグ=マクで生きていてくれた方が良いのだろう。

     ローレンツは霧深い街道をガスパール城に向けて黙々と進んでいた。前方ではクロードとベレトとカトリーヌが何やら話している。五年前、ローレンツは帝国軍が破竹の快進撃を見せた時に正直言ってファーガス神聖王国がほぼ崩壊したと思った。今の彼らの会話を耳にしてもファーガスが凋落しているという印象が深まっていく。青獅子の学級の学生たちは士官学校に入る前に初陣を済ませている者が多いのはダスカーの悲劇以降小規模な騒乱が後を立たずにいるからだ。

     だからあの時ローレンツはフェルディナントと共にミルディン大橋に立った。ファーガスは近々自壊するだろうしパルミラとの国境を守りながら強大な帝国に抗う力が同盟にはない。ならばせめて領地と領民を守りたいと思ったからだ。霧の立ちこめる行路は人生 2090