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    蒼月ルートのクロロレです

    家出息子たちの帰還.26───アガルタのものたちは未だに本拠地がどこであるのか不明だが、彼らの伝承によるとかつてこのフォドラの地は全て彼らのものであったらしい。セイロス教以前から伝わる古いを教えを奉じ、セイロス教に仇なすものたちを偉大な先祖として祀る。(中略)彼らはセイロス教以前の古式ゆかしい文化の担い手である、という強烈な意識を持っているのだ───

     ファーガス神聖王国が彼らに顔を奪われた、と認定したのはモニカ、トマシュ、コルネリア、アランデル公だ。彼らはある時を境に言動が激変したと言う。
    「何故、彼らは同盟の中枢に入り込まなかったのだろう」
     王宮の執務室で調査報告を受け取ったディミトリは調査に当たっていたフェルディナントとセテスに問うた。偶然でも予防出来たというなら、その方法を取り入れたい。
    「正確に言うと入り込めなかったのだ。彼らはクロードのせいで失敗した、と言える」
     イエリッツァが士官学校に潜り込んだようにリーガン家傍流の何者か、を称してゴドフロア卿一家を失ったリーガン家に潜り込むつもりだったのだろう。だがセテスの言う通りどこからともなく、彗星のようにクロードが現れた。もうそこの穴は使えない。
    「分かったぞ!少しいいだろうか」
     フェルディナントが発言の許可を求めた。
    「我々にとって喜ばしいことに彼らにとっても人間のすり替えは難易度が高い行為なのだ」
     フェルディナントの話が途中から始まったのでディミトリの背後に立っていたドゥドゥーが軽く咳払いをした。
    「失礼。レスター諸侯同盟を意のままに操るには円卓会議の議決権を持つ諸侯のうち三名の顔と名前を奪わねばならない」
    「一度失敗したし手間がかかるから後回しにされた、と言うのか?」
     高度な闇の魔術を操り、一度はガルグ=マクを陥落させた彼らがそんな理由で実行可能なことを諦めるのだろうか。ディミトリは完全に虚を突かれた。セテスも呆然としている。
    「そうだ。既に成功した作戦を盤石にする方が安全だと考える程度に手間がかかるのだ」
     だからガルグ=マクにいてもアンヴァルにいても不自然ではないモニカの立場、名前、顔が満を持して利用されたのだろう。
    「フェルディナントは本物のモニカについて何か知っていることはあるか?」
    「……エーデルガルトの侍女候補だった」
     一瞬言い淀んだだけあってフェルディナントの答えには救いがない。ドゥドゥーもディミトリも深く、本当に深く息を吐いた。それぞれの立場で深く同情せざるを得ない。


     自領で父の補佐をしていたローレンツは内密の話がある、と言うことでフェルディアの王宮に呼び出された。ディミトリの執務室には従者のドゥドゥーや居てもおかしくはないシルヴァンだけでなく、何故かガルグ=マクで大司教として忙しい日々を送っているはずのベレトまでいる。
     淡い光しか入ってこない北の地でディミトリ相手に臣下の礼をとること、にすっかり慣れてしまったことが寂しい。それがローレンツの嘘偽りのない心境だった。
    「同盟では顔や名を盗まれたものがいない、と聞いたが本当だろうか?」
     ベレトは大司教になったと言うのにそれでもお決まりの挨拶なしに本題が始まる。だが彼らの誤解は一秒でも早く解いておくべきものだった。思いきり首を横に振りたいが我慢する。
    「そんなことはありません。グロスタール家の家臣が一人犠牲になっています」
     犠牲になったのは彼だけではない。殺害されたゴドフロア卿一家、彼らに巻き込まれたラファエルの両親、自ら命を絶ったねえやも犠牲者だ。その連鎖を止めたクロードの行方はまだ分からない。
    「詳しく聞かせてほしい」
     ベレトの声は真剣だった。ドゥドゥーは従者として無表情を保っているが、シルヴァンとディミトリは気まずそうな顔をしている。グロスタール家の不始末ではあるのだが、ローレンツは自分の判断で知っている限りのことを話した。ねえやと違ってローレンツには頼もしい相談相手が沢山いる。
    「なるほど……殿下も猊下もフェルディナントの仮説が正しいと思いませんか?」
     ずっと相槌を打っていたシルヴァンは辛い話をさせて悪かった、とローレンツに詫びてからフェルディナントの仮説について説明してくれた。
    「それならやはり、親しくなれば防げる」
     ベレトの言葉を聞いたディミトリとシルヴァンが渋い茶を飲んだ時のような顔をしている。ダスカーの悲劇はランベール王の弟リュファスの協力なしに起きなかったし、シルヴァンとマイクランは殺し合った。ベレトの表情と言葉遣いは柔らかく、内容は単純だが根底には強い意志がある。皆それが分かっているから夢物語だと言って揶揄しないのだ。


     ローレンツは言葉を失ってただ瞬きをしている。グロスタール家は家庭内が円満だが、それでも驚愕したのだろう。人間同士は相性があるので強いられたところで上手くいくとは思えない。マイクランも弟を尊重するよう強いられていた。
    「毎日、互いに愛を囁くのだろうか……?」
     困惑したディミトリがそう呟いたが、ドゥドゥーとディミトリならそれも可能だろう。シルヴァンがフェリクスやイングリットに同じことをしたら絶対に嫌がられる。
    「ち、違いますよね?互いを知れ、ってことですよね?」
     慌てて言い直すとベレトが頷いてくれたのでシルヴァンもローレンツも心底安心した。確かに事情を知れば親しみは湧くし名前や姿を盗まれても周囲がすぐに違和感を覚えるだろう。
     セテスやレアがアガルタの民と呼ぶものたちは高い技術力を持っている。だが人材も資金も無限に持っているわけではない。顔と名前を盗むことが非効率だと判断するようになれば良い。そうして時間を稼ぎ、技術を解析すれば彼らの企みを完全に阻止できる日も来るはずだ。
    「だから最低でも年に一度は皆で会って話そう」
    「それならガルグ=マクはどうだろうか?」
     ディミトリの言う通りガルグ=マクなら旧帝国や旧同盟のものも顔を出しやすい。それにフェルディアにいる限り、執務に追われてしまうディミトリの骨休めにもなる。
    「まず二十年だ。二十年間、毎年一度は会ってみよう。家族や家臣も歓迎する」
     髪の毛が若草色に変わったベレトはこれから長い長い時を生きていく。二十年後、シルヴァンたちの見た目はがらっと変わるはずだが彼は殆ど今と変わらないだろう。その姿に家族や家臣を慣れさせておくのは重要なのではないか、と言う気がした。
    「良いですね」
    「初回は無理でも将来的にはスレンやダスカーのものも呼ぼう。ローレンツ、その件でシルヴァンの補佐をして欲しい。ついでにクロードが探せる」
    「……はぁ?!」
     また驚かされたローレンツからはいつもの優雅な態度が消え失せている。内密の話、があったのはディミトリではなくベレトの方だったのだろう。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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