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    111strokes111

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    我々はその未熟さゆえにいつ破滅してもおかしくはなかった。懸命さは未熟さの言い訳にはならないことも思い知らされた。

    クロロレワンドロワンライ第38回「緊張」 エーデルガルトはセイロスの紋章、ディミトリはブレーダッドの紋章を持っている。クロードもリーガンの紋章を持っているのだが三人の中で最も体力がない。それでも北極星に背を向けて駆け出したのは賊を二手に分けたい、近くの村に助けを求めたい、自分の見た地図が正確かどうか確かめたいという理由があるからだ。

    「エーデルガルト!こっちの方に集落があったよな?」
    「ルミール村のこと?そうね、方角は間違っていない筈だわ」
    「俺はてっきり皆が逃げやすいようにわざと囮をかってでたのだと思っていたな……」
    「ディミトリいくら何でもそれはお人好しがすぎるわ……」

     賊は二手に分かれ半分ほどがクロードたちを追いかけてきたが薄暗い森の中を走っているうちにどうやらあらかた撒けたようだ。だがガルグ=マクでクロードが目にしていた帝国領の地図は残念ながら正確ではなかった。物覚えは良いはずなのにこれでは目的地に辿り着けそうもない。状況は悪化していくばかりだがこれでひとつ分かったことがある。帝国はセイロス教会に国境近辺の正確な地図を提供していない。馴れ合っているかと思ったが緊張関係にあり深い断絶があるのだ。
     現場で働くセイロス騎士団は近隣の村の場所を体感的に把握しているので彼らに地図は必要ない。しかし有事の際にこの地図をもとに作戦を立案したらまともな行動は出来ないだろう。

    「違う、俺はそこまで自分の腕に自信はないよ!国境近くの集落だから自警団か傭兵団がいるんじゃないかと思っただけだって」

     三人とも疲れ果て足が止まっていた。ディミトリもエーデルガルトも走るのをやめるの言い訳が見つかってほっとしたことだろう。暗闇の中であまり表情が見えないことも背中を押したのか二人揃って軽くクロードを咎め始めた。本隊とも言える他の生徒たちと合流しようにも間に賊がいてはそれも難しい。帝国が教会に提出した地図さえ正確ならこんなことになっていない、と言い返してやりたいがそんなことまで把握していると思われては今後に差し障りが出てしまう。だからクロードは先ほどから村とは言わず集落と言っている。
     クロードが二人から責められその場で思いついた屁理屈で言い返していると森の奥からシェズと名乗る怪しい傭兵が現れた。彼女はクロードたちの外套を見てあんたたち派手ねえ、と呟いたが青紫の髪に真っ赤な服を身につけている先方も負けていない。金に困っているのかすぐに護衛を引き受けてくれることになった。
     賊は二手に分かれ、地図の正確さを確認し助けを求めることは出来たがまだクロードの目論見通りになったとは言えない。危険を排除し全員でガルグ=マクへ生還せねばならない。クロードは今のところ賭けに負けていないが賭けに勝つには小屋に置き去りにしたローレンツが皆の命を守り切る、という条件が加わってしまった。勝手に背中を預けられたと知れば彼はきっと怒るだろう。付き合いは短いがそれくらいは分かる。

    「ちょっと!どこへ行くつもりなの!」
    「頭目を倒しちゃえばいいのよ!」

     シェズの素朴でどこか動物的な行動はクロードに故郷パルミラの人々を思い起こさせる。追いつくのを諦めたクロードはエーデルガルトとディミトリが本気で焦っているのはシェズが見当違いな方角へあっという間に駆け出したからだと思っていた。

    「やっつけてやったわ!」

     高らかにそう叫ぶと彼女の顔に浮かぶ紋様は何なのか。髪の色も肌の色も瞳の色も変わった。首の周りの怪しげな飾りは盗賊の頭目を切り捨てたあの刀は何処から出てきたのか。幼い頃から自身の宿す紋章について教えられてきたエーデルガルトやディミトリと違いクロードは喉元を越えた時に初めて紋章学というものに触れた。ではシェズも何かの紋章を持っていてそのせいで姿形が変化したのだろうか。だがもしそうならエーデルガルトとディミトリが焦っていないだろう。
     あの力は一体何なのか?正体は気になるがクロードの野望を阻むなら排除せねばならない。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

    2068

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081