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    我々はその未熟さゆえにいつ破滅してもおかしくはなかった。懸命さは未熟さの言い訳にはならないことも思い知らされた。

    クロロレワンドロワンライ第38回「緊張」 エーデルガルトはセイロスの紋章、ディミトリはブレーダッドの紋章を持っている。クロードもリーガンの紋章を持っているのだが三人の中で最も体力がない。それでも北極星に背を向けて駆け出したのは賊を二手に分けたい、近くの村に助けを求めたい、自分の見た地図が正確かどうか確かめたいという理由があるからだ。

    「エーデルガルト!こっちの方に集落があったよな?」
    「ルミール村のこと?そうね、方角は間違っていない筈だわ」
    「俺はてっきり皆が逃げやすいようにわざと囮をかってでたのだと思っていたな……」
    「ディミトリいくら何でもそれはお人好しがすぎるわ……」

     賊は二手に分かれ半分ほどがクロードたちを追いかけてきたが薄暗い森の中を走っているうちにどうやらあらかた撒けたようだ。だがガルグ=マクでクロードが目にしていた帝国領の地図は残念ながら正確ではなかった。物覚えは良いはずなのにこれでは目的地に辿り着けそうもない。状況は悪化していくばかりだがこれでひとつ分かったことがある。帝国はセイロス教会に国境近辺の正確な地図を提供していない。馴れ合っているかと思ったが緊張関係にあり深い断絶があるのだ。
     現場で働くセイロス騎士団は近隣の村の場所を体感的に把握しているので彼らに地図は必要ない。しかし有事の際にこの地図をもとに作戦を立案したらまともな行動は出来ないだろう。

    「違う、俺はそこまで自分の腕に自信はないよ!国境近くの集落だから自警団か傭兵団がいるんじゃないかと思っただけだって」

     三人とも疲れ果て足が止まっていた。ディミトリもエーデルガルトも走るのをやめるの言い訳が見つかってほっとしたことだろう。暗闇の中であまり表情が見えないことも背中を押したのか二人揃って軽くクロードを咎め始めた。本隊とも言える他の生徒たちと合流しようにも間に賊がいてはそれも難しい。帝国が教会に提出した地図さえ正確ならこんなことになっていない、と言い返してやりたいがそんなことまで把握していると思われては今後に差し障りが出てしまう。だからクロードは先ほどから村とは言わず集落と言っている。
     クロードが二人から責められその場で思いついた屁理屈で言い返していると森の奥からシェズと名乗る怪しい傭兵が現れた。彼女はクロードたちの外套を見てあんたたち派手ねえ、と呟いたが青紫の髪に真っ赤な服を身につけている先方も負けていない。金に困っているのかすぐに護衛を引き受けてくれることになった。
     賊は二手に分かれ、地図の正確さを確認し助けを求めることは出来たがまだクロードの目論見通りになったとは言えない。危険を排除し全員でガルグ=マクへ生還せねばならない。クロードは今のところ賭けに負けていないが賭けに勝つには小屋に置き去りにしたローレンツが皆の命を守り切る、という条件が加わってしまった。勝手に背中を預けられたと知れば彼はきっと怒るだろう。付き合いは短いがそれくらいは分かる。

    「ちょっと!どこへ行くつもりなの!」
    「頭目を倒しちゃえばいいのよ!」

     シェズの素朴でどこか動物的な行動はクロードに故郷パルミラの人々を思い起こさせる。追いつくのを諦めたクロードはエーデルガルトとディミトリが本気で焦っているのはシェズが見当違いな方角へあっという間に駆け出したからだと思っていた。

    「やっつけてやったわ!」

     高らかにそう叫ぶと彼女の顔に浮かぶ紋様は何なのか。髪の色も肌の色も瞳の色も変わった。首の周りの怪しげな飾りは盗賊の頭目を切り捨てたあの刀は何処から出てきたのか。幼い頃から自身の宿す紋章について教えられてきたエーデルガルトやディミトリと違いクロードは喉元を越えた時に初めて紋章学というものに触れた。ではシェズも何かの紋章を持っていてそのせいで姿形が変化したのだろうか。だがもしそうならエーデルガルトとディミトリが焦っていないだろう。
     あの力は一体何なのか?正体は気になるがクロードの野望を阻むなら排除せねばならない。
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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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