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    111strokes111

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    恐らく我々と血の繋がりを求めたがる者は殆ど存在しないだろう。尊厳を持っていたのは敗者の側であった。

    クロロレワンドロワンライ第42回「苦言」「触れ合い」 塀の上にいる遠見の兵は掲げられた軍旗を見て安心しきっていることだろう。クロードは大きな音を立てて舌打ちしたかったがローレンツが煩いので堪えた。百戦不敗のナデルが前線に来ている。何度も連続で舌打ちするべき事態だった。しかも首飾りに戻って他の斥候たちの報告を聞くまで彼の上官がいる可能性を捨てられない。本当に近来稀に見る規模の軍勢が国境に展開していた。

     クロードたちは首飾りに帰還後に開かれた軍議に呼ばれ別の方角にある砦を見に行った斥候の報告を聞いている。ナデルについてはホルスト以外手出しは無用ということになり見慣れない軍旗を掲げる者が総大将であるという前提で動く?ことになった。クロードは素性を明かしていない。だから報告された意匠からいってあれは生まれの良さを利用してこちらに攻め込んできたクロードと血を分けた兄弟の誰かである、と伝えることができない。

     返り血塗れのシェズがクロードとローレンツが進軍するはずの方向からやってきた。彼女を敵兵の中に放り込むとまさに一騎当千の活躍を見せるのだが地図を描いてやってもとにかくどこに何があるかを全く覚えられない。ホルストがナデルを引きつけている間に他の砦を落とし総大将の部隊を孤立させるというのが今回の作戦だった。

    「道がわかんなくなっちゃったから二人についていっていい?!あっちでいいのよね?」
    「君!待ちたまえ!そちらではない!」

     見当違いな方向へ駆け出そうとするシェズの襟首をローレンツが咄嗟に掴んだ。シェズとローレンツは髪の色や細身な体つきが少し似ている。妹を相手にしている時の彼はこんな感じなのかもしれない。勿論男女の別は弁えた上でのことだろうがローレンツはきっと妹とはあんな風に、ホルストとヒルダのように気軽に触れあえるような仲なのだ。それに引き換えクロードと異母兄弟の仲は完全に破綻していた。王位が掛かっているとはいえ気に食わない弟を圧倒してやりたい、ただそれだけのことで万単位の軍勢を動かすのだ。シェズとローレンツに向けて斧を振り上げた敵兵の喉元にクロードは矢を射た。同郷の者といえども異母兄弟に与するなら仕方がない。

    「クロードありがと!」
    「露払いの礼の先払いだよ。俺は拠点長に言わなきゃならんことがある」

     じゃあローレンツと先に行ってるわね、と言ってシェズが後先考えずに駆け出してくれたのでクロードは拠点長に言い訳になる程度の指示を出した後で樽の山によじ登ることが出来た。喧騒に紛れて懐から筒と大小レンズが二枚入れてある袋を取り出す。セイロス教の禁忌に触れないように分解して持ち歩かねばならないのが鬱陶しい。
     フォドラの遠眼鏡はレンズが一枚で筒が二重になっている。筒を前後に動かし焦点をいじって遠くを見やすくしているだけなのでパルミラ出身の者からするとあんなものは単なる気休めにすぎない。クロードは玩具程度の性能しか持たない物を人の命がかかっている現場で使う気になれなかった。
     下らない禁忌だ、とレアに苦言を呈してやりたいがクロードは探られて困る事情を持つ身なのでこちらが譲るしかない。伸ばした筒にレンズを二枚嵌め込んでパルミラ式の遠眼鏡を完成させ筒を目に当てた。三日月と五つの星が緑の瞳に飛び込んでくる。クロードは年齢から言って当たり前の話ではあるがパルミラにいた頃は兵を率いる機会を与えられることがなかった。母親の身分が低いのでクロードのために軍旗が作られるとしたら三日月に付く星は一つきりだろう。

    「シャハドか……」

     クロードは遠眼鏡を分解する前に前方の様子を確かめた。シェズの髪の色が変わり肌におかしな模様が浮き出ている。その傍で槍を振るうローレンツの周りに薔薇の花びらが舞っていた。シャハドは遠眼鏡を禁じられているような蛮族、と彼らを馬鹿にするだろう。その姿を想像するだけで何故か腑が煮えくり返った。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156