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    クロード誕生日おめでとう🎉2023

    クロード誕生日2023 フォドラとパルミラには国交がない。だがクロード、いや、カリードが赤子だった頃に父の名で一度だけ非公式な捕虜の交換式が行われた。あんなことは父の治世で後にも先にも一度きりだったらしい。
    「ここには一年前に息子を産んだ、と書いてある」
     そうやって国境を越えた母の手紙をクロードに見せるため、祖父は机の奥から引っ張り出した。娘が敵国の王の息子を産んだのはやはり醜聞なのだろう。手紙は引き出しを外したその奥に隠されていた。手紙はほんの数行しかない。万が一に備えたのか他のことは何も書きたくなかったのか。
    「これが俺の誕生日なのかな?」
     文末には日付が記されていた。妃同士の対立が激しい後宮では乳幼児死亡率が異常に高い。一歳を過ぎてようやく知らせる気になったのだろう。
    「きっとそうだ」
     パルミラでは週の塊を節ではなく月と呼び、その月に生まれた者たちはまとめて祝われる。占いで使うのは生まれた土地であって日付ではない。祖父は確信を持っているが自分は難産だったと聞くし、きっと母は昨年の七月の終わり頃に産んだ、くらいのつもりで書いている。王宮付属の文書館で後宮の記録を見れば事実を確かめられるがそのために再びフォドラの首飾りを越えるわけにもいかない。


    『陛下、此方でございます』
     数世紀分の記録が保管されている文書館は後宮と同じく増築に増築を重ねた結果、案内人なしでは歩けない。クロード、いや、カリードは後宮にまつわる記録が収められた棚の前にいた。誰がいつ後宮に召し抱えられたのか、王の母である母后がどの日にどの妃を王の寝所に送ったのか、妃たちの妊娠、流産、死産それに王子や王女の誕生や死亡について記録されている。新王は何故こんなことに興味を持つのか、と口さがない者たちは言うだろう。
     クロードは自分が生まれた年の記録を手に取った。念のため五月ごろから中身を確かめていく。誕生日までの二節だけオデの方が年上だな、と言ったラファエルは五月生まれでこの一節だけは二才年上だ、と言ったローレンツは六月生まれだ。そっと頁をめくるごとにガルグ=マクで言われた言葉が脳裏に甦る。七月二十四日の日誌には二日苦しんだ末に男児誕生、と記されていた。
    「あいつら元気にやってるかな」
    『陛下、何かおっしゃいましたか?』
    『いや、何でもない独り言だ』
     もう少し地固めをすれば彼らに会える。名前の件は申し訳なかったが誕生日だけは本当なんだぜ、そう言える日がクロードは楽しみだった。
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    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090