a question and an answer「っ……づぅ…」

まさに這う這うの体で豊前は玄関横のスイッチに手のひらを押し付ける。白熱灯がぴかりと照らし出したのは日中の熱をむわりと溜め込んだ我が家の廊下。普段は帰宅する時間に合わせて部屋が冷えているようにクーラーの予約をしているが、3日間の出張の間は電気代の節約にと設定を切っていたのだ。

帰宅したらこうなることはわかってはいたが、今となっては部屋が冷えるまでの辛抱だと運転予約を切って家を出た自分が憎い。とにもかくにも部屋の熱をなんとかしなければと遮光カーテンと窓を開け放ち、リモコンを掴みとるようにしてクーラーのスイッチを入れ、暑さでどうにかなりそうな身体を冷まそうと冷蔵庫を開けた。

「あ〜……生き返る……」

死んでしまった訳でもないのに生き返ると言ってしまうのはどうしてなんだろうか。しかし、キリリと冷たい空気に顔から胸を撫でられれば、そう言わずにはいられなかった。誰もが口にするその台詞を例に漏れず口にした豊前は、楽園のような涼しさの冷蔵庫からビールを一缶取り出した。

プシュ！とプルタブを引く小気味良い音が鳴ってから缶の中身がなくなるまで、1分と保たなかった。ゴクゴクと喉仏を鳴らしながら飲みくだされていったビールが内側から豊前の身体を冷やしていく。

ぷはー！と満足げな声を上げたのとぐしゃりと缶を潰したのは同時だった。

そのままソファに倒れ込もうとして、すんでのところで思いとどまる。汗で肌に張り付いていたシャツがどうにも気持ち悪い。いくら冷感作用のある化繊生地とはいえ、ここまで空気が蒸し暑いと焼け石に水だ。脱衣所に向かいながらボタンに手をかけ手早く脱いでいく。シャツを、肌着を、靴下を脱いだそばから洗濯かごにシュートして、ガチャガチャとベルトを緩めてスーツのズボンからも脱出する。めんどくさいながらもズボンを逆さ吊りにラックにかけたところで、出張中の着替えも……と思い至るが、あっさりと堕落に屈して、2本目の缶へと手を伸ばす。

ゴクッゴクッとCMさながらに喉を鳴らして黄金の液体を飲み下せば、既視感に腹の奥がきゅっと締まった。

腹の奥の更に奥の方からじわりと広がる甘い陶酔。

しかし生々しく思い出されたその感覚を認めるわけにはいかなかった。

いやいや。いくらなんでもそれはねーだろ。

それはつい3日前、アクシデントに導かれて繋げた身体の記憶。

桑名教授と過ごした灼熱の逢瀬。

汗みずくの二人が本能に任せて快楽を貪った束の間の夢。

それが今豊前の下腹を融かしている。

30度を超えているであろう室温。首筋にまとわりつく汗。食道を滑り落ちていく涼。

ガリッと音を立てて噛み砕かれたアイス。吹き抜けるぬるい風。バタバタとはためくカーテンは高鳴る心音を写し取られたみたいに忙しなくて。

あつくて、あつくて堪らなかった。

その熱に浮かされて、常識も理性もぶっ飛ばして求めてしまった。

蝉の声が遠くて、水音だけが脳を満たして、それから、それから……

ぐ、と下着を持ち上げる感覚。

昂ぶりからはすでに透明な汁がこぼれ始めている。

「チッ、覚えたてかよ」

思わず漏れた舌打ちに余裕のなさを自覚して苛立ちが増す。

なんでこんなにも感情が制御できねーんだ。

こんなはずじゃない。

それなのにどうして。

下着越しに握ったそばからカウパーが滲み出る。

確かな意思を持って血を集めるそこは明確な刺激を求めていた。

「ンなの…どんだけぶりだよ……」

下着をずらして自身を手に取るとカウパーのぬめりを利用してしごき上げる。

ぬちぬちと卑猥な水音を立てながら筒状にした右手を上下に動かせば、おなじみの感覚が背骨を駆け上がる。

足の指がぎゅっと固く握られたのと手のひらに粘性の液体が絡みついたのは同時だった。

ありきたりな快感に体中を嬲られて、一気に気持ちが冷めていく。

あの時はそんなことなかったのに。

桑名センセーに抱かれていた時はイッてもイッても熱が冷めなくて、ずっと醒めない夢みたいに気持ちよかったのに。

なんでこんなに虚しいんだろ。

好きな人とのセックスじゃないから？

そもそも誰を好きになるってエネルギーがまだ俺の中にあったのか…？

俺は感情とかを言葉にするのはあんまり得意じゃないけど、桑名センセーだったら的確な言葉で好きを表せるのかな。

センセーは好きな人になんて気持ちを伝えるんだろ…

とりとめのない思考がバカみてぇに頭の上でまわってる。

「はぁ……はぁ、……。」

そもそも桑名センセーがたった一度セックスしただけの俺のことを好きかどうかもわかんねーのに。

「とりあえずシャワー浴びっか」

誰に聞かせるでもなく呟いた独り言を置き去りにして、俺はエアコンのスイッチを掴んで設定温度をガンガン下げた。

冷たいシャワーを浴びて部屋が適温になればスッキリ忘れられる。

そう思っていたのに結局寝る頃まで腹の重だるさは消えなくて、極めつけに最悪な夢を見た。

今日は怒涛の一日だった。出張明けのデスクにはひっきりなしに仕事が舞い込んできてメールを開く時間もないくらいで。そんな1日の終わりに俺は桑名センセーと怒涛のセックスをしている。

自分の席について通勤用のリュックを下ろしたところで、付箋が何枚も貼られたデスクを見て安堵した。忙しくしてりゃ余計なこと考えなくていい。余計なこと考えなくてっつーのはアレだ。今朝見た悪夢のこと。

「なぁ、頼むよ。お願いだから富田先輩に迷惑かけるのはやめてくんねぇかな。」

高校生の時、俺はサッカー部OBの富田先輩と付き合ってた。富田先輩が大学生になってから学校で会うことは減ったけど、交流試合ではよく会ってた。それからユースでも。隣のクラスの女子生徒が先輩のバイト先に来るまでは。

「あの人、高校生の男の子と付き合ってます！同性愛者です！」

富田先輩を指差して大声で叫んで、彼女は店から走り去った。富田先輩の人柄や、よく遊びに来てた俺を店の人たちが知ってたこともあって俺達が変な目で見られることはなかったけど、彼女の『言い逃げ』行為はそれからも何度か続いた。店の人がわかってくれててもお客さんの中には偏見がある人もいる。

富田先輩は別に気にしないと言ってくれたけど、富田先輩や俺をかわいがってくれる店の人に迷惑をかけ続ける訳にはいかなかった。

それで話をしようと彼女に声をかけた。一人がいやなら信頼できる人を連れて来てもいい。だから誠実に話し合おうと。

場所を指定したのは俺で、二人きりになりそうな場所は避けて人の目があるそこそこ賑やかなファミレスにした。自分の不利益にならないよう熟慮しながらも相手の逃げ場も用意しているつもりだった。それでも相手は一人でやってきた。彼女は来たときから肚の座った目をしてた。俺はそれを真面目に話し合うつもりがあるんだと勘違いした。だから伝えたんだ。富田先輩に迷惑をかけるのはやめてほしいって。

だけど相手の反応は思っていたのとは全く別物で、そう言われるのなんてとっくの昔に覚悟してたって顔で俺を睨みつけていた。何を言ってもだんまりを決め込んで、口をぎゅっと閉じて、俺の方をキッと睨みつけていた。

話が進まないのに業を煮やした俺は手元のオレンジジュースを手に取ろうとしてやめた。なんてことないファミレスで一番安いドリンクバーのオレンジジュースはかろうじて味がするほどの薄さで口をつける気にもならない。味のしないドリンク。何を言っても反応のない相手。早くこの話合い終わってくんねーかな。大きなため息のひとつもつきたかったけど我慢して、

「なぁ、何が望みなんだ？なんのためにこんなことすんだよ。」

話の矛先を変えた。

「……してよ」

あまりに小さい声だったけどやっと聞けたなにがしかの返答。

「破滅してよ。」

は？

意味のある言葉を求めていたのに、一瞬その言葉が頭に入ってこなかった。

はめつ、って破滅か？破滅してよって軽々しく日常生活の中で言われるような言葉じゃないよな。少なくとも俺の日常にそんな言葉はない。

その一言がトリガーとなって彼女はバン！と両手の拳を机に叩きつけた。その音の剣呑さに周囲の視線が俺達に集まる。

「豊前くんがいると私の気持ちはぐちゃぐちゃになるの！耐えられないの！誰かのものになってほしくないの！どうして私だけこんな思いを抱えなきゃいけないの？！豊前くんだってぐちゃぐちゃになってよ！恋で人を傷つけるなら豊前くんだって恋で傷ついてよ！一生をズタズタにされる人間の気持ち味わってよ！！」

彼女はいつものように言いたいことだけを言い捨てて走って店を出ていった。残されたのは好奇の視線とテーブルに置かれた伝票と口のついてない2つのグラス。

彼女、今なんつった？それはどういう意味だった？状況を整理しようと試みたけど駄目だった。一度も話したことのない、クラスメイトになったこともない同学年の女の子。彼女がしたことと俺がしたと彼女が告げたこと。そしてその理由。

どれひとつわかんねーよ。

俺は伝票だけを手に取って、二人分の会計をして店を出る。俺に向けられる眼差しはどれも俺を悪者だと思ってるみたいだった。

その日の出来事を公言する気はさらさらなかった。だけどたまたまファミレスで勉強してたやつがいたらしくて事情はあっという間に拡散されてしまったらしい。

なにそれ、頭おかしーんじゃないの。

翌日あちこちで繰り広げられるヒソヒソ話の矛先は俺じゃなくて彼女に向かっていて、逆に俺は周りから慰められた。

何を言っても話の通じない相手ってのはいるからさ。刺激しないようにしながらうまく距離取るしかないよ。高校生にもなると達観したことを言う奴もいて、そいつの言うことにも一理あると思いつつ、そいつが変なことに巻き込まれていないことを祈る。そんなかんじでほとんどの奴らは俺に同情的だった。同情してほしかった訳じゃねーけど、理解のできない理論を叩きつけられて困惑していた俺は拠り所にできる仲間がいることに少し安堵していた。

でもそう思わないヤツもいる。俺はたまたま違うクラスの男子が話してるのを聞いちまった。

「豊前はいいヤツだよ。こんなこと思う俺の方がやなヤツだってわかってる。わかってんだけどさ、でもヤベー奴に好かれて面倒くさいことになってるって聞いて神様って案外平等なんだなって思っちゃったんだよ。イケメンで性格も良くてさ、人当たりもよくてすごくモテて。何不自由なくこれからも生きていくんだろうなって。だからちょっとホッとした。イケメンにはイケメンへの苦労が用意されてるんだって。はは、オレ性格悪っ。こういう考え方だから豊前みたいにモテねーんだよな。」

神様は平等。

そうなのか？

あの彼女が言い捨てて行った訳わかんねー理屈も、神様がなんかのバランスを取るために俺に与えたもんだってのか？それを周りは納得してんのか？

俺はただフツーに生きてるだけなのに。

いや、つーかそれは、俺がフツーに生きてたら、俺は人に迷惑をかけ続けるってことか？

気がつけばスマホを手に取っていた。

『ごめん、やっぱ無理そう』

一切説明のないメッセージに返ってきたのは笑顔のスタンプ

気にすんなとおちゃらけるキャラクターがなぜか滲んで見えなくなる。

「気にすんなって言われたってなぁ」

ぐっと親指をたてるキャラクターの動きの力強さに気持ちがついていかず、電源ボタンを押して画面を真っ暗にする。富田先輩は俺に恋の楽しさを教えてくれたのに、俺は恋の残酷さしか先輩に返せなかった。その罪悪感が今も胸に燻っていて、たまにこうして首をもたげる。

それから俺も大学生になって、車道からボールを追っかけて飛び出したこどもを助けた拍子に腕の骨をポッキリやって入院した時に夜勤の看護婦さんとワンナイトってやつを経験した。翌朝ナースコールで看護婦さんを呼ぶとその人は昨日は夕方までで、夜勤のシフトじゃないんだけどと告げられた。

遊ばれたってことか。裏切られたような気持ちというよりは、こんな気楽な関係があっていいんだなと思った。

なんとなく求め合ってるふりをして、恋の形をしたなにかの部分だけ楽しんでお別れする。心を費やさずに形のところだけ繕っていればお互いすり減ることもない。

後腐れなく、未練なく。

だから桑名センセーとヤリまくった日も、二人して体育館に備え付けのシャワーを浴びたら「じゃあおやすみ」って別れた。

それくらいフランクに別れられる相手とだけ一夜を共にしてきた。

翌朝になれば相手の顔も忘れているような、そんなインスタントな関係でないといけなかった。



好きになっちゃいけなかった。


これは恋なのかなんて自問するまでもないくらい、俺は桑名センセーに惹かれてた。

センセーのすべてが鮮烈に焼き付いて離れなかった。

なぁ、俺だって頭ン中も胸ン中もぐっちゃぐちゃなんだけど？

みんなそういうぐっちゃぐちゃを抱えて生きてんじゃねーのかよ。

それは人に八つ当たりするようなシロモノじゃねーと思うけど？

今になって怒りが込み上げて来る。

彼女と、あの時の環境を飲み込んだ自分自身に対する怒りが。

なにいい人ぶってたんだよ、俺。

俺は全然いい奴なんかじゃない。なのにいい人でいたくてよくわかんねー理屈までわかったフリをして。

滅茶苦茶じゃねーか。

道理もクソもない。

怒りが込み上げれば込み上げるほど仕事は進んだ。そして不思議なことに積み上がっていた仕事が減るごとにマックスだった怒りも収まっていく。そうして定時を迎える頃には俺のデスク周りはきれいに片付いて退勤するだけになっていた。

今日の分の勤怠を入力して休日出勤分を確認していたところで慌ただしく謝りに来たのは同じ総務課の同期だった。

「ごめん！転送設定してたの忘れてた！！」

出張中に俺宛に届いたメールは同期のもとに転送され、同期が処理することになっていた。その中に桑名教授からのメールがあり、同期は転送設定されていることを忘れて豊前にメールを転送し、再び同期のもとに戻ってきたメールを最初のメールと勘違いしてスルーしていたことに今気付いたと。

「ほんっとにごめん！！桑名教授に俺がミスりましたって謝るからさ！！」
　
「いーよ、気にすんなって。桑名教授なら」

「ここにいるよぉ？」

優しく許してくれそうだし、と言いかけたところにぬっと現れたのは桑名教授本人だ。

同期は急に現れた桑名教授にビビりながら事のあらましを説明しつつ謝りたおす。急ぎのメールじゃなかったから大丈夫だよぉ、と教授が宥めても、いやいや、本当にすみませんでしたと頭を下げっぱなしだ。

「桑名教授、お礼のメシ、いつでもいいですけど、もし今日でよかったらこの後行きませんか？」

メールの用事がごはんのお誘いなのだから、用件さえ済めば謝り続ける必要もない。咄嗟に口から出た提案は桑名教授に快諾された。

「僕も終わって鍵返しに来たところだから今から行こっか」

もうこれ以上謝られるのは勘弁。豊前もでしょ？

桑名センセーのクセらしき小首を傾げる仕草がそう伝えていた。そして同期よりも少しだけ桑名教授のことを知っている俺には厚い前髪の下でいたずらっぽく目が笑ったのがわかる。

「さぁて、何を食べに行こうか。」

「なんか肉食べたいっすね、駅前に安くてうまい焼肉屋あって。そこ行きましょうよ。」

「うん、いいね。炭火で焼いたお野菜ってまた一味違っておいしいし。」

「えっ、教授、焼肉屋行って野菜食べるんすか」

そんな軽口を叩いていたはずの相手が俺の腰を掴んでガンガン腰を振りたくってる。この前よりも更に激しく。ぱんぱんと肌が打ち付けられる音が響くラブホの一室で無遠慮なストロークに嬲られながら桑名教授の無尽蔵な体力がふと頭をよぎる。

焼肉+無限の体力

あっれ。これ、詰んだ？

脳天まで突き抜ける快感を叩きつけられながらこの行為の行く末がチラつく。

この行為の行く末、というか目的。

あの悪夢を忘れること。

焼肉食って、酒も進んで、箍が緩んだ俺はど〜〜ッでもいい過去の話を教授にぶちまけちまった。

俺の中では今日一日で笑い話にできるとこまで漕ぎ着けてたと思ってたし。

馬鹿でしたねーって笑い飛ばして、アルコールと一緒に分解してくだらねーウジウジはここでリセットしようって。

だけど桑名センセーはそれは辛かったってちゃんと認めていいことだよって言ってくれた。

「豊前は悪くないよ。他人の身勝手に振り回されちゃっただけ。」

その時、なんとなく、なんとなくだけど桑名センセーも昔恋愛関係で理不尽な思いをしたんじゃないかって予感がふとよぎった。

それで聞いてみたんだ

「こういうの忘れるのってどーすりゃいーんだろーな。」

って。

「う〜ん、一番手っ取り早いのは」

新しい恋で塗りつぶすことだよ

色んな人から言われ続けてきた言葉が脳裏を横切る。

でも俺は今すげー躊躇してる。

俺は桑名センセーのこと好きなんだと思う。だけどその気持ちを過去のイヤな出来事を忘れるための道具として使っていいのかって。

俺の恋がまた誰かを傷つけたり、イヤな思いをさせるんじゃないかって。

だからこれはちょっとしたジャブだ。

ジャブっつーか、アンケート？

いや、ちゃんとわかってる。そんなんじゃない。俺は桑名センセーが恋してもいいんだよって言ってくれることを期待してる。

僕と恋しようよ。昔のイヤなことなんか忘れるくらいのとびきりの恋を。

桑名センセーなら満面の笑みでそう言ってくれるんじゃないかって。

あー、もう馬鹿みてぇ。酒の飲み過ぎで頭お花畑かよ。リバウンドみてーに恋愛ゲージフルスロットルに振り切っちまってさ。

いかにも理詰めっぽい桑名センセーだぞ。んなこと言うわけねーじゃん。

じゃあセンセーの答えは？

センセーはこういう時になんて言うんだ？

「セックスじゃない？」

「へ？」

「この前話してたでしょ、心拍数ガンガン上げて、アドレナリンバンバン出してスッキリして。そういう相手として僕、お誂え向きだと思うんだけど。相性もこの前確認済みだし。」

え……。予想外の答えが返ってくるとこんなに頭働かなくなるもんだっけ。それとも俺飲みすぎたか？

「しよ？気持ちいいことして忘れちゃえばいいよ。豊前の悪夢は僕が消してあげる。」

一夜の夢は一夜の夢で帳消しにする。

それが聡明な桑名教授の出した結論だった。