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    ltochiri

    二次創作いろいろ

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    ltochiri

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    #星とあんずの幻想曲3 陸上部とあんず【移動】プチオンリー #君とどこに行こうか 展示作品です。(斑あんです)
    ざっくり夏〜秋くらいの設定です。
    ESビルの七階からロビー階まで移動している時の話です。
    ※イベント終了にともないパスワードをはずしました。当サークルまでお越しいただき、またリアクション等いただきありがとうございました!

    ##小説
    ##あんず島3
    ##斑あん

    映画はラブストーリーがいい アンサンブルスクエアの拠点——通称、ESビル。そのフロアとフロアを繋ぐエレベーターは、到着が遅いことで有名だ。
     P機関のトップである『プロデューサー』は「修行のため」と言って階段を使うことがあるのだが、それはエレベーターが来るのを待ちきれなかったから、と噂を立てられてしまうほど。
     その話の真偽はともかく、ESビルで働く人々が、このエレベーターにひどく恨めしい気持ちを抱いていることに、違いはない。
     噂の『プロデューサー』も、今日はエレベーターに乗っていた。
     タイミングが良く、すぐにエレベーターが来たので運がいいと喜んだのも束の間。あんずは今、ひどく焦っていた。
     七階でエレベーターが止まると、ドアが開き、その向こうから三毛縞斑が現れた。長身の彼を見上げるスタッフたちを通り越して、斑はエレベーターの隅で肩を縮こまらせながら立っているあんずを見つけておや、と思った。ホールハンズで見た予定では、彼女はこの後、十二階に用があるはずだから。
     おそらく、満員電車のように混雑したエレベーターから、降りることができなかったのだろう。助けてほしいと目配せを送ってくるあんずに、斑はにっこり微笑んだ。そして人が降りたのを確認してから、エレベーターに乗りこんだ。
     幸い、混雑も少し解消されていた。大きな体格を起用に曲げながら、斑はあんずのそばへと寄っていく。
    「お、おはようございます」
    「おはよう。ずいぶん困ってるみたいだが、どうかしたのかあ?」
     あいさつを交わしながら斑はさりげなくあんずの背中に手を回して落ち着かせた。すると、あんずは困った表情で斑を見上げる。
    「実は、ボタンを押し間違えたみたいで、十二階で降りられなくて」
    「だったら、別の階で降りて階段を使う手もあったと思うんだが」
    「はっ!」
     今、思いついたような衝撃を受けたあんずの表情に、斑は苦笑して言う。
    「気づいてなかったのかあ」
    「か、考えてなかったわけじゃないんですよ! でも、思ってたのは、一階からで……」
     そういうところが、見ていて危なっかしく感じて、愛おしいのだが。そうは思っていても、ここでは口には出せない。だから斑は微笑み、アドバイスをする。
    「極端だなあ。今度はそうなる前に、前にいる人に頼もうなあ」
    「そうします」
     肩を落としながら、あんずは言った。じゅうぶん反省しているらしいので、これ以上は言わないでおこう。斑は彼女の背中に添えた手でさすってやった。
     そんなやりとりをしていると、五階からまた人が乗ってきて、ふたりとも壁際に押しやられてしまう。
    「う」
    「おっと?」
     突き飛ばされたらしいあんずが手をつこうと腕を伸ばした。それが見事にエレベーターの壁だったので、斑は思わず両手を上げた。いわゆる、降参のポーズだ。
    「だ、大丈夫、ですか……?」
     腕の中にいる斑を見上げて心配するあんずを、斑は見下ろしながら不覚をとったことに内心舌打ちした。
    「あー、平気だ、俺はいいんだが」
    「す、すみません今、動けないので少し我慢してもらって……」
    「うん……」
     あんずの男前な格好に照れながら、斑はなかなか一階に到着しないエレベーターに苛立った。どうしてこの高いビルに一基しかないのか、と。
    「もしかして先輩、照れてますか?」
     そう言ってくすぐったいほど静かに笑うあんずに、斑はわかりやすく赤面するので、あんずは驚いて声を引っ込めた。からかったつもりなのだろうが、案外図星だったりする。
    「あ……」
    「すまない」
    「いえ、こちらこそ」
     短い会話のあと、視線をそれぞれ反対に向けると、ぎこちない空気が漂った。
     監視カメラのデータが残らないように、この後なにも起こさせないよう気をつけなければ、と心に決めるふたりなのであった。




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