Obedient BoysObedient Boys
ラスティカのピアノの演奏に合わせて歌うオーエンをはじめて見たときの、心地よい寂しさや、子どもに戻ったような感覚を、カインは複雑な思いで、捉えていた。心を打つ力を持ちながら、ずっと聞いていたくなるくらいには抜けた、ジャズの演奏だった。オーエンははじめこそ文句を垂れていたけれど、ラスティカが演奏をはじめると、仕方がないなというようにくちびるをひらいて、美しい旋律を奏でた。
カインがオーエンの歌声は楽器のようだ、と思っていたら、ラスティカも、同じようにオーエンの歌声を評した。どんな曲や演奏にも調和して寄り添いながらも、聴く者の心を打つしなやかな強さや、音楽への愛を持っていた。それこそ、魔法のようだった。カインがつい最近まで知らなかった魔法使いの世界に、足を踏み入れたのだ、と実感させるような、魔法使いらしい不思議があった。
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