くじらのナイフ①introduction
「なんスか、これ」
「決まってるでしょ。居眠りの罰」
封筒の山ともに差し出された刃物は、一風変わった形状をしていた。
「フリーマーケットで見つけたの。なかなかいいものでしょ?」
「はあ、まぁ……」
指示に従い、城之内は糊付けされた封筒の閉じ口を手当たり次第に裂いていく。なんでも、保護者に発送する書類の内容に不備があり、中身をすべて新しいものに入れ替える必要があるのだという。
城之内は青みがかった銀色のナイフを手元でてきぱき動かしながら、からかいの気持ちをこめて口を開いた。
「センセーが生徒にこんなことさせちゃっていいわけ?」
「それを言うなら、あなたも授業態度の件で保護者を呼ばれてもいいわけね」
18011