プロ忍との甘々ホワイトデーSS集🩵山田利吉(金平糖)
「🌸、これ。先日のお返し」
利吉に声をかけられて「どうしたの?」と応えると、ずいと可愛らしい包を渡された。突然の贈り物に心当たりがなく、「私何かしたっけ?」と言えば、途端に目の前の彼はやや呆れたような顔になる。あ、これはいつものキレるやつかなーと暢気に思ってたら1秒も経たずに予想が的中した。
「……はい??『何かしたっけ?』……だと?!覚えてないのかー!?……ほら、私に贈り物をくれただろう……!!」
「あぁ、バレンタインの……!!」
キレるといっても利吉の私に対するそれは本気で怒っている訳ではなく、どちらかというと昔からのものというか、普段忍務で色々と押し殺して明け暮れる反面、素の態度で接してくれている証であるので特別気にならない。寧ろ嬉しいものだ。捲し立てて言う彼にようやく思い出した。流行りにのって甘味を贈った事を。
「……そう。はぁ……やっと思い出したか……っく、私ばかり浮かれていたみたいじゃないかッ!」
「ふふ、利吉、相当浮かれてる顔してるもんね」
「貴女ねぇ……夫である私をまたそうやって揶揄って!!……コレ、あげませんよ??」
今だってそうだ。耳を朱にして言う彼が愛しくて仕方ない。先日、「好きだよ」と贈り物を渡した時も、毎日そうした事を言い合っているというのにそれはもう物凄く嬉しそうに受け取ってくれたなぁなんて思い返した。時々にやにやしては、自身で緩んでいる事に気付くとハッとして真顔になったりをここ最近繰り返していた事を改めて指摘してみたら、お返しが貰えなくなりそうなので慌てて軌道修正する。
「やだ!」
「子供か!?」
「……利吉、お返しちょうだい」
「や、やめろ…!そ、そんな可愛い顔でねだるな……!!あげるから!!……あげるけど……!!全部私が🌸にあーんして食べさせるのが条件だ!!」
何としてもお返しは欲しい。いや、優しい利吉の事だから結局くれるのは分かってはいるのだけれど、もうひと押しと言わんばかりにせがんでみたら条件付きで返ってきた。
「何それ!?恥ずかしいって!!」
「……はいはいそうですか、自業自得ですね。……私を揶揄うとどうなるか教えてやる……!」
全部彼から食べさせて貰わないといけないのか?!思わず異議を唱えるも、利吉はそれを聞き入れる気は全く無いようであった。さっさと包の封を開けると、ころころと綺麗な金平糖が入っている。すごく嬉しいのだが、よりにもよって数が多い。「🌸、ほら、あーんして?」早速桃色のそれを手に取った彼に、至極甘い声でそう言われては従うしかないだろう。
――やっぱり私も利吉の事が大好きなのである。
*金平糖
”貴女が大好き”
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🖤土井半助(バウムクーヘン)
「はい、これ🌸さんに」
ねぇ、と彼に名前を呼ばれて振り向くと、包を渡されたので反射で受け取った。
「……半助さん?急に何ですか?」
「……えぇ?急にだって?……🌸、覚えてないのかい??今日は先月のお返しの日なんだろう?」
先月……お返し……?と思ったが思い出した。そうだ、流行りの南蛮由来の文化に倣って私半助さんに甘味を贈ったんだった。思わず「あぁ!そうだった!」と口にしたら、彼はやれやれとこめかみを押さえた。
「…全く……。ま、まぁ、🌸さんはうっかり屋さんな所も可愛いですけど……!色々と見て回ったんだけど、これ、切株みたいな見た目でおもしろいなと思って。それに、とても美味しいみたい」
さらりと可愛いと言われて頬が緩んでしまう。心なしか早口に言う半助さんから、一生懸命お返しを探してくれたのかなぁとその姿が安易に浮かび更に綻んでしまいそうだ。
「……物珍しさで選んでみたんだ……貴女のお口に合えば良いんだが……」
「半助さんも一緒に食べないんですか?」
「え……貴女用なんだけど、私も食べちゃっていいの?」
「当たり前です!寧ろ半助さんと一緒がいいです」
やや自信なさげな彼に愛しさを覚えながらも、折角だから一緒に美味しさを分かち合いたいなと提案してみると、視線を泳がせて困惑したような様子を見せた。
「ぅ、そんな……うーん、参ったなぁ。折角のお返しなのに、また私ばかり貰ってるような気がしちゃうなと……」
貰ったのは私なのにどういう事だろう?と発言の意図を考えていると、「🌸さんと同じ時間を過ごすのが嬉しいってこと」とはにかみながら補足され、胸がきゅっと甘く締まるような感覚に襲われた。ずるい。何も言えないでフリーズする私に半助さんはぽんぽんと頭を撫でながら言った。
「ふふ、でもすごく幸せ。これからもよろしくね、🌸」
*バウムクーヘン
”幸せを重ねたい”
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🤍天鬼(キャラメル)
天鬼さんに呼ばれたので何用かと彼の庵へ赴けば、上品な包を渡された。
「🌸……これをやろう。きゃらめるという砂糖を溶かし固めた珍味らしい。味は保証しよう」
突然の贈り物、それに明らかに高価な物であることは違いない。いや、なぜ急に……?!
「勿体なくて受け取れないです……!!」
「はぁ、では何故先日私に贈り物を?」
畏れ多いので思わずそう口にすれば、頭に疑問符を浮かべたような表情で問われた。……そうか、先日甘味を贈った事を覚えていてくれただけでなく、お返しの文化まで彼なりに調べて用意してくれたらしい。……天鬼さんがそこまでしてくれたなんて……すごく嬉しい気持ちでいっぱいになった。
「天鬼さんのこと、お慕いしているので……!」
「ほう?……お前、そんな事を好いた女に言われて放っておく奴が何処にいる?……少なくとも私は違う。私も🌸を好いて……いや、全てを愛らしく思う。私の気持ちなのだ……故に🌸に拒否権は無い。大人しく受け取れ」
恋仲であるといえど改めてそこまで直球に言われてしまうと恥ずかしさと嬉しさでどうにかなりそうである。現に脳内処理が追いつかず、ただただ顔に全身の血液が集中しているのではないかというくらい熱い。
「おい、何を黙り込んでいる?」
「……ありがとうございます……っ!天鬼さん、大好きです……!!」
「……ふむ」
恥ずかしさで俯いていた顔を上げて、精一杯に気持ちを伝えると、やや間があって返事があった。よくよく見れば、彼もやや頬を朱にして見るなとばかりに口元を手で覆った。珍しいその姿に、「大好きなんですっ……!!」とまた彼に伝えてじっと見つめていると、彼はみるみるうちに恨めしそうに目元を歪めてふいと顔を横にしてしまった。
「あの、天鬼さんも……照れてます……?」
「……別に照れてなどおらぬ……!断じて……!…………ッチィ、調子に乗るな……!!渡した甘味でも食べていろ……!!」
先程までの余裕は立ち消えて、半ばやけくそといった様子で再度包を強引に渡される。彼も私と同じ気持ちでいる事に心が擽ったくも穏やかな心地でいっぱいになった。「天鬼さん、ありがとうございます!」と改めて彼の気持ちであるお返しを受け取った。
*キャラメル
”貴女と一緒にいると安心