火花またたく 寮生の一人から聞いていたとおり、岩場の切れ目から上へ上へと、階段さながらに足場の続く登り坂があった。
幅も高さもまばらなステップは、あるいは石で、あるいは流木を埋め込むようにして作られている。右へうねり、左の木陰に隠れ、今度こそ見失うかと曲がってみればその先は必ず上へと伸びていた。
どこかの誰かが勝手な都合で作り上げた私道だろうか。
住民たちが自然発生的に生み出した、海への通い路かもしれない。
いずれにせよ、この幼馴染は踏んだことなどないだろう粗野な足場だ。「人間が育んだ獣道」そんな矛盾した表現を思い浮かべ、
「ぃっ、」
俺でなければ聞き逃しただろう小さな声に、握っていた手を引き寄せる。
足を滑らせたか、躓きでもしたかと目をやったカリムの靴はしっかりと砂を踏んでいて、
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