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    よしば

    @yoshi_R_K

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    よしば

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    お酒に酔っ払う千秋の奏千

    「ふふっ、かーなたぁ♪」
     背中からやけに上機嫌な声と共に腕が伸びてくる。後ろから痛いくらいに抱きしめられ、奏汰は小さく溜息を吐いた。
    「ちあき、いたいです」
    「んー?」
     回してきた腕をぽんぽんと叩くが、力が緩められることはない。もちろん潰れてしまうほどではないが、少し息苦しい。千秋は後ろから抱きしめたまま猫のように頭を擦り付けてきて、その頭をぺちりと叩いた。
    「まったく、どうしておさけのはいったちょこなんてたべちゃうんですか」
    「事務所のひとにもらったんだ。おいしかったぞ?」
     抱きしめてくる千秋の体はひどく熱い。まさかお菓子に入っている程度の酒で酔うとは思っていなかったのだろう、事務所の事務員は軽率だったと奏汰に頭を下げていた。もちろん彼が悪いとは思っていないので、謝罪には気にしないようにと返して、千秋を部屋まで連れて帰ろうと一緒にESビルを出た。
    「ほら。だきついてるとあるけませんよ。はなしてください」
    「む。おまえと一緒なんてひさしぶりだろう。もうすこしくらい、いいだろ」
    「そういう『あまえ』を『しらふ』でできたらかわいいんですけど」
     今の千秋はただの酔っ払いだ。きちんと話を聞くのはもう少しくらい酔いが覚めてからの方がいい。はいはい、と適当にあしらいつつ千秋の腕を力尽くで離すと、彼はしょんぼりと眉を下げる。
    「かなたは、おれのことが嫌いなのか?」
    「きらいじゃないですよ。でもいまははやくおへやにかえりたいです」
    「そうか。嫌いじゃないならいい」
     ぱ、とすぐ明るい表情に戻って千秋は奏汰の先へと歩き出す。慌ててその背中を追いかけると、今度はピタリと足を止めてこちらを振り向いた。
    「いっしょにいこう、かなた」
     にこにこと笑いながら手を差し出す千秋に、仕方が無いとその手を取って隣を歩く。嬉しそうに指を絡めてくる千秋を見ていたらもうどうでもよくなってしまい、彼の手を握り返した。
    「かなた、かなた」
    「はいはい。もう、なんですか。ちあき」
    「うれしいんだ。おまえと一緒にいられるのが」
     最近は仕事も一緒ではなかったから、なんてぼそぼそと呟く千秋は、ちらりとこちらへ視線を向けてから照れくさそうにはにかんですぐに視線を前に戻す。確かに彼の言うとおり、流星隊での仕事は主に鉄虎たちに任せていて、ソロでの仕事が多くなっている。同じ現場になることもなくは無いが、今のところはソロ活動の方が多く、千秋と一緒にいる時間は去年に比べてかなり少なくなったように思う。
     去年は去年で、いろんな事を抱えていた千秋は右に左にと奔走していて四六時中一緒にいたという訳ではなかったから、今はそれよりも千秋に会えていないのだろう。
     とはいえこうして千秋に何かあったときには奏汰へ連絡が来るあたり、周りからは一緒にいるという認識をされているような気はするのだが。
    「ぼくも、ちあきと『いっしょ』にいれて『うれしい』ですよ」
    「うん。ありがとうな、奏汰」
     ニコニコとしていたはずの千秋はいつの間にか俯いていて、その顔からも赤味が薄れている気がする。もしかして酔いが覚めてきたのだろうかと思った瞬間、その目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
    「ちあき?」
    「うう、不安なんだ。俺はこれでいいのか、これでよかったのか。南雲たちにも苦労をさせているのではないか。どうしても不安で不安で、仕方が無いんだ」
     どうやら今度は泣き上戸のようだった。彼はたとえ奏汰の前であろうとも、こんな風に泣いたりはしない。今日この日ほど酒が憎らしいと思ったことはないだろう。
     千秋の背中をさすってやろうと繋いでいた手を離そうとすると、ぐいと手を引かれ逆に抱きついてくる。
    「行かないでくれ、奏汰ぁ」
    「……どこにもいきませんよ」
    「うぐ、ひぐ。ほんとうか?ずっと一緒にいてくれるか?」
    「もちろんですよ。だからほら、なかないで」
     ぽんぽん、と繋いでいない方の手で背中を叩いてやれば千秋はへにゃりと笑って胸に顔を押しつけてくる。こんなに子供っぽいことをしてくることはあまりなく、少し新鮮で面白いと思った気持ちは胸に押し込めてあやすように背中を叩く。
     しばらくして千秋の体から力が抜けてこちらへもたれかかってくる。どうやら眠ってしまったようで、奏汰は大きく溜息を吐いた。
     バランスを崩しそうになる体をどうにか持ちこたえて彼の体を背負うと、奏汰は星奏館へと足を向けた
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