約束「ワダツミちゃん?どうしたの?」
一面花畑の丘、先をゆくヴァルトムがこちらを振り返る。
ここは死後の世界らしい。
そんなものは信じていなかったが、実際いまここにいるのは事実だ。
アラバキによって荒野となった地球でも、人間に支配された地球でもない。
ただただ延々と続く花畑。青い空。そして、一番守りたかった大切な人も目の前にいる。
ゆっくりと流れる穏やかな時間。
ずっと戦いに身を置いてきた自分には居心地が悪い場所だと思っていたが、しばらくしてヴァルトムが来てからはそんなに嫌ではない。
「お前には生きていてほしかった。」
そう言うとヴァルトムは少し悲しそうな、困ったような、よくわからない顔をして私のほうに戻ってきた。
「あのねぇワダツミちゃん。それはワタシのセリフよ。ワダツミちゃんがいなくなってから、一人でずっと頑張ってたんだからね!
結局死んじゃったけど…あなたのいない世界で王になったって、きっと虚しかったと思うわ。」
だからね、とヴァルトムは私の手を取る。
「またあなたに会えて嬉しい♡」
そよ風がヴァルトムの赤い髪を揺らして、花の香りがふわりと漂う。
自分の顔が映る潤んだ瞳から、どれだけ寂しかったかが伝わってくる。
ここのどの花よりも美しい、赤い花を、もう一人ぼっちにはしない。
手を強く握り返して、肺いっぱいにその花の香りを吸いたくて、引き寄せた。
「すまなかったな」
そう耳元で囁くと、ズッと鼻を啜る音。
温かい吐息が首筋にかかる。
誰にも邪魔されない、2人だけの世界。
このままなのか、生まれ変わるのか、わからないけれど。
「ずっと一緒よ?」
その言葉に、強く頷いて応えた。