故郷を出る少年②「大丈夫か?」
遠くから、声が聞こえる。
誰かしら?
大丈夫よ。
もう、みんな燃やしてきたから。
ワタシは自由なの…
小鳥の鳴き声と、鍋がコトコト煮える音で、ワタシは目を覚ました。
窓から差し込む陽の光が眩しくて、布団を引っ張り頭まですっぽりと被り蹲った。
(ああ、布団があったかくて気持ちいい…布団?…なんで?)
森で力尽きて倒れたはずなのに。有り得ない状況に焦って、ワタシは飛び起きた。
目に入ってきたのは石造りの壁。見渡すと、小さな衣装箪笥と、自分が今眠っていたベッドしかない殺風景な部屋だ。
『あの姿』で暴れてきたから衣服は身につけていなかったはずなのに、今は首元まで隠れる黒い服を着ている。下は白の袴だ。川を泳いで来たのに、髪は石けんの香りがした。
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