溶けるのは運命だった【虎トウ】好きと言わないで、母親の口癖だった。
幼いトウマはその言葉と共に生きていたと言っても過言ではなかった。後に親愛や友愛にはその母親の言葉は全く関係のなかったことを知り、自分の母親は自分を守ろうとしてくれたのだと飲み込んだ。他責にはしたくないが、そのせいでトウマの「愛して欲しい」「愛されたい」の欲が大きくなってしまったのはいうまでもない。
トウマの母は「ジュース」だった。
「アイス」と「ジュース」、この2つは特異体質と呼ばれ専らは大多数の人が認知している低血圧や貧血、偏頭痛などと同じ括りにされている。しかし、それらと異なる特異と言えば「アイス」と「ジュース」と呼ばれる人間同士が想いを伝え合うと「アイス」と呼ばれる体質の方が溶ける、つまり死んでしまうことだった。
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