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    楸@hikizan72

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    生まれて初めて小説…小説!?を書きました 多少の稚拙な点は目を瞑っていただけると幸いです
    主人公の名前は穹としています。一部、ゲームからそのまま引用した台詞があります。また、既に公開されているストーリーのネタバレを含む可能性があります。
    最初丹恒にあまり好かれていないと思っていた穹くんが、案外仲間だと思ってもらえてるんだな、と思う話 カプ色はかなり薄いですが丹穹です

    雪解け「俺に不満があるように見える」
    星穹列車に乗るか、宇宙ステーションに残るか、迷っていたときに丹恒に放った言葉だ。
    今思うと、彼が本当に俺に不満があったとしても、面と向かってこんなことを言うべきではなかったと思う。ただ、いくら彼が世話焼きだからといって、冷静で、常に適切な判断をしている人物が、こんな不審者と旅をするのは嫌がるだろう、と思ったのだ。もしくは、なのも姫子も自分が列車に乗ることを歓迎してくれていたから……列車に乗らない方の理由を探していて、それを彼に押し付けていたのかもしれない。
    「お前が星穹列車に乗車する件について言っているのなら……それは考え過ぎだ。」
    彼の表情は依然変わらず、本当に何の不満もないのか、不満があってそれを隠しているのか、はたまた俺に全く興味がないのか……それらを窺い知ることは不可能だった。
    「俺の意見はシンプルだ。どちらでもいい。お前も俺の意見を考慮することなく、自分の好きなようにすればいい。」
    もう少し考えてみる、と伝えると、丹恒は軽く頷き目線を逸らした。

    ***

    丹恒--警戒心が強く、部屋に入ってもいないこちらの行動を把握できるような彼--が、目の前で大人しく寝息を立てている様は穹をどこかむず痒く落ち着かない気持ちにさせた。眉間に寄った皺を人差し指でグ、と押してみても目を醒さない姿には一種の妙な感動を覚える。
    ヤリーロ-Ⅵ、雪と氷に覆われた星。この星の星核を封印して、次の跳躍までを待つ間。集めた資料を整理していて気になった箇所を聞きたくて、もしかしたら起きているかも、くらいの気持ちでホテル隣室のドアをノックしたとき、扉を開けた人物が顔面蒼白で汗をかいた、やややつれたようにも見える状態で出てきたのには相当驚かされた。もしファイトクラブの乱闘のとき彼がこの状態だったら、決して冷徹な蒼龍とは呼ばれなかったことだろう。
    自分の用事も忘れて、どうしたのか、何かあったのかと尋ねた自分に、シンプルに一言、「悪夢を見た」と。彼のような人でも悪夢に魘されるようなことがあるのか、と思う反面、自分もカカリアと相対する前の夢見を思うと、とても他人事ではない。
    ところで、急な話ではあるが、会話をしている最中に返事に悩んだとき、どのように返すのかという選択肢はおおよそ三つある。熱血、正直、利他的な返答。もしくは悲観的、冷静、利己的な返答。そして、このとき選んだのはそう、ふざけた返答である。
    「添い寝でもしようか。人肌があったほうが落ち着くかもしれないし、魘されてたら起こせるぞ。」
    勿論ただ巫山戯たわけではなく、おどけてみせて彼の気持ちが少しでも明るくなればいいな、くらいのつもりでこう言ったのだ。まさか首を縦に振られるとは思わなかった。ここが誰がいつ入室してくるかわからない列車の資料室でなくて心底良かったと思う。
    「うぅ……あ……」
    目の前の人物が発するうめき声に、思考を中断してハッとなった。寝る時に常に眉間に皺がよっているわけはなく、悪夢の前兆だったのだと今更気づく。1日に2回も魘されるとは、人肌は効果がなかったようだ。
    「……ぬな、穹……」
    俺?起こすために肩にかけた手を止める。まさか悪夢の登場人物が自分だとは。彼が何と言っているのか聞き取ろうとしたが、それ以降は意味を成さない譫言を繰り返すのみだったため、大人しく叩き起こすことにした。
    「丹恒、起きろ、丹恒!」
    「…………穹……?」
    名を呼び強く揺すること幾度、ようやく目を覚ましてくれた。ホッとしたのも束の間、バッと急に起き上がったかと思うと、左胸を強めに触られた。最早揉まれたとすら言える。硬直、少しして彼が大きくハァ……と息を吐き、手を下ろした。
    「丹恒……?」
    きゃあ、すけべ等とふざけた選択肢は今度こそ飲み込んだ。
    「魘されてたから起こしたけど……どうした?どんな悪夢を見たんだ?」
    「……」
    彼は答えなかったが、表情は雄弁だった。眉をよせ、目を伏せ、言葉を探すように唇が開いて、何も言わずにまた閉じた。
    「丹恒、俺の名前を呼んでいたのを聞いたぞ。俺が悪夢の原因なのか?俺が丹恒に何かしたのか?」
    「違う。それは違う……ただ……」
    逡巡の後、彼は目をぐっと閉じた。
    「お前が……殺される夢を見た……」
    「……」
    俯いた彼の額に張り付いた前髪を、指先でそっと剥がした。それ以降、丹恒は何も言わなかったし、自分も何も言えなかった。

    ***

    「最初、丹恒は俺に列車に乗って欲しくないんじゃないかと思ってたんだ」
    なのと二人、ベンチに並んで座っているときに、ふとそう溢れた。視線の先では丹恒が、生物学者だという女性とヤリーロ-Ⅵの生態系についてやら何やら話している。
    「どうして?ウチが見てないときになんか言われたの?」
    「別にそういうわけじゃないけど……あのときの俺はどう考えても不審者だっただろ。星核がどうして体内にあるのかもわからないし、ヴェルトが来てくれなかったら、なののことも傷つけていたかもしれない。怪しいやつと一緒に旅をしたくないと思うのは自然だろ」
    「ええ、ウチはアンタが列車に乗った方がいいって言ったよ!それが不自然ってこと?」
    少女がむくれてみせる。笑って、そんなことはない、待っていると言ってくれて嬉しかった、と素直に伝えると、顔を綻ばせえへん!と胸を張った。
    「丹恒が何考えてるのか、ウチもまだ全然わかんないけど……あんたと一緒にいることを嫌だとは思ってないと思うよ!だってホラ、今回のウチらの旅のコンビネーション、完璧だったでしょ?」
    釣られて自分もそうだな、と笑う。カカリアに立ち向かったとき、シルバーメインから逃げ出したときよりも、自然と息を合わせられたと思う。開拓の旅がどんなものか全然わからなかったから、もっと分かれて行動することになるのかと思っていた。想像よりもずっと、二人は自分と一緒に居てくれて、それを当たり前のようにしてくれるのが嬉しかった。
    「すまない、戻った。」
    「じゃあ、そろそろ広間に行こう!ブローニャの演説が始まる前に、いい席を確保しないとね!」
    言うが早いか駆け出すなのの後に、丹恒も続く。少し遅れて立ち上がった自分に、丹恒が振り返って、どうした、と声をかけてくる。
    昨晩は、結局丹恒が再び寝るのを見届けて、自室に戻った。彼がその後悪夢を見たのかは知らない。丹恒は何もなかったように振る舞ったし、自分もそうした。
    「穹?どうした、行かないのか。」
    丹恒が再度声をかけてくる。中々追いついてこないのを見かねてか、なのも戻って来た。
    「二人とも、もし……もし何か困ったことがあったら言って欲しい。仲間として、二人の力にならせてほしい」
    丹恒となのが顔を見合わせた。
    「ええ!?急にどうしたの、何か悪いものでも食べた?……もしかして、拾い食いでもしたの!?」
    「心外だ、俺は何でも拾うけど食べられそうなものしか食べない。ただ、言いたくなっただけ。」
    「何でも拾うのをやめなよ!今ある困ったことそれだよ!言っておくけどアンタ、ゴミ箱漁ってるのは今も普通に不審者だからね!」
    それは無理な相談だ。あれは人々の営みを表す一種の芸術であり、俺はそれに魅了された一人にすぎないからだ。つまり、ゴミ箱が俺を誘惑してくるのが悪い。
    「もう、丹恒も何か言ってよ!」
    二人で彼を見つめた。彼の表情は穏やかで、かすかに笑っているようにも見えた。
    「……歩きながら話そう。間に合わなくなるぞ」
    今度は彼を先頭に歩き始める。
    「ほら、丹恒も止めてない。」
    「そんなわけなくない!?」
    「言っておくが、次お前がゴミ箱に近づいたら、俺は見てみぬふりをするからな。」
    そんな……と大袈裟に悲しんでみせる。当たり前でしょ、と横から返され、二人で馬鹿みたいな会話をする。前を歩く丹恒が、たまにそれにツッコミを入れてくれる。今後の開拓の旅も、ずっとこうであればいいと思う。いや、もっと二人と打ち解けられると良い。姫子やヴェルト、パムも一緒だともっと良い。
    ヤリーロ-Ⅵの開拓の旅は無事終わった。自分も開拓者だと、彼らの一員だと、今なら迷いなく答えることができる。
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    楸@hikizan72

    CAN’T MAKE生まれて初めて小説…小説!?を書きました 多少の稚拙な点は目を瞑っていただけると幸いです
    主人公の名前は穹としています。一部、ゲームからそのまま引用した台詞があります。また、既に公開されているストーリーのネタバレを含む可能性があります。
    最初丹恒にあまり好かれていないと思っていた穹くんが、案外仲間だと思ってもらえてるんだな、と思う話 カプ色はかなり薄いですが丹穹です
    雪解け「俺に不満があるように見える」
    星穹列車に乗るか、宇宙ステーションに残るか、迷っていたときに丹恒に放った言葉だ。
    今思うと、彼が本当に俺に不満があったとしても、面と向かってこんなことを言うべきではなかったと思う。ただ、いくら彼が世話焼きだからといって、冷静で、常に適切な判断をしている人物が、こんな不審者と旅をするのは嫌がるだろう、と思ったのだ。もしくは、なのも姫子も自分が列車に乗ることを歓迎してくれていたから……列車に乗らない方の理由を探していて、それを彼に押し付けていたのかもしれない。
    「お前が星穹列車に乗車する件について言っているのなら……それは考え過ぎだ。」
    彼の表情は依然変わらず、本当に何の不満もないのか、不満があってそれを隠しているのか、はたまた俺に全く興味がないのか……それらを窺い知ることは不可能だった。
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