ふっさこ現パロ あの日のカクテルグラス 深夜も喧騒に包まれる繁華街から一本路地を入ると、けばけばしいネオンとは無縁の落ち着いた雰囲気に包まれる。
明るい雰囲気のイアリアンバルと、いささか高級な雰囲気をもった和風居酒屋に挟まれた場所にそのオーセンティックバーはあった。
揃えているアルコールの種類の多さに定評がある店は、マスターの伏犠が一人で営んでいる。席はカウンター十席のみで、一人静かに酒を傾けたい大人向けの店だった。
夜七時。今夜も店の入り口の看板がライトアップされて開店を告げる。早速仕事帰りのサラリーマンが来店し、四席が埋まった。
この店のフードメニューには簡単なつまみ程度しかない。そのかわり、両隣の店からデリバリーが取れるようになっていた。今日の客も、まずはデリバリーを取って軽い夕飯代わりにしている。伏犠はそれを見ても嫌な顔一つしない。客と楽しく会話をしながらロック用のアイスを削ったり、グラスを磨いていたりする。客の頼みで食前酒や食事とのペアリングを考えて酒を用意することもよくあった。
4593