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    霜花(しもか)

    @kirina_hgrkuri

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    霜花(しもか)

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    ルチアはブレラ、エイダと一緒に漢字ドリルを進めようとしていました。

    [ミマモ]チャットしてたら漢字が書けなくなった? ブレラ、エイダ、ルチアの三人の前には、エウ・エウから宿題として渡された漢字ドリルが用意されていた。

    「ブレラは漢字なら読めるから楽勝なのだ!」
    「ほう? 僕のお手伝いはいらないのかな?」
    「の、のだ……」

     最初に胸を張って自信ありそうに言ったものだから、そんなブレラにルチアがからかうように言った。
     すると途端にブレラの表情から、自信がなくなってくるのだった。

    「まあ、じゃあさっさと終わらせちゃおうよ」

     ブレラが前にしていたページには、漢字の書き取りをさせる問題が並んでいた。

    「う……」
    「どうしたんだよ」

     ブレラの鉛筆を持った手は途端に固まり、表情もますます困った様子だった。

    「か、書けないのだ……」
    「さっきの自信はどこに行ったんだよ……どれどれ」

     ルチアは怪訝な顔で、ブレラの手元を覗いてみる。

     そこには「森の『りょうし』が鳥を狩ってきた。」と書かれていた。

    「うん、これは書くにはちょっと難しい漢字だと思うけど、以前ブレラには読めてた奴じゃん」
    「え、そうなのだ!? どう言う形だったのか思い出せないのだ~!」
    「もう、ブレラはおこちゃまだな~」

     ドリルも開かず、机の上に肘を乗せ、顎を腕に乗せながらブレラとルチアの様子を見ていたエイダは言った。

    「エイダは勉強する気ゼロじゃねえかよ」
    「そういうわけじゃないの! 朝からお花とか植え替えたりしてたからちょっと休んでるの~。あとでちゃんとやるから!」
    「はいはい。でも今一緒にやった方が早く終わるかもよ? 分からないところあったら僕が教えてあげなくもないけど、午後になったらマミーのところに行くつもりだし」
    「むー……」

     ルチアがそうう言うとエイダは諦めながら、ドリルのページを開いた。
     
    「ま、そのために僕もやらないとな。ええと……」

     ルチアはページをめくり、やったページまで辿り着く。
     ブレラよりは先のページだが、そこも漢字の書き取りを差せる問題が並んでいた。
     
     しかしペンをとってみて、すぐにルチアは顔をこわばらせた。
     
    「どうしたのだ? ルチア?」
    「ごめん、ブレラ。今のは前言撤回する」
    「のだ!?」

     ルチアの開いたページのある場所には『城にいた『きし』が見事の王を守った』と書いてあった。
     
     しかし『きし』の部分にある四角い枠に、「うまへん」だけ書いてそこからルチアは手が動かなかった。
     
    「ええと、どうやって書くんだっけ。二文字目は多分これだろ」

     そうルチアは言いながら、『士』の文字を書く。
     
     しかしそこで、エイダは鉛筆を持たず机の上に置いたまま満面の笑みを浮かべて言った。
     
    「ルチア、最近マミーと一緒によくスマホでテキストチャットしてるでしょ?」
    「……それがどうしたんだよ?」
    「ロージィがマミーから貰ったスマホ見て言ってたの。『これで漢字の変換に慣れちゃうと、手で書けなくなっちゃいそうですね』って」
    「……」

     ロージィの言いたいことは分かる。
     日本語を端末上に書く時、確かに読み方を打ってから、簡単に何度かのタップで変換できてしまう。
     書けなくても読めて正しいものだと分かれば、正しい漢字も選べる。
     そしてこれを繰り返していくと、書く習慣がなくなっていくにしたがって書き方を忘れてしまいそうな気もする、とルチアも思っていた。

     まだ重症じゃないと思いたいが、これがデジタルの弊害なのか。
     
    「ちくしょー! 城や町を守る『き士』の友達はたくさんいるのになんだよー!」
    「喚いてもしょうがないでしょ、ルチアったら」
    「エイダ……そういうお前は読みも書きもできないだろ」
    「エイダ書けましたし!」
    「さっさとドリル進めてくれよ、分からないところあっても手伝わないぞ?」

     エイダに対してルチアはそう言いつつ、たまには漢字の練習はしておこうと思うのだった。
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