さよならのあと(赤井Side) きっと彼は、潜るのだろう。
本人も、他の人間も、誰も気づいていない。だが、自分にはわかる。降谷の表情も、行動も、ある日を境に変わってしまったと。
降谷の自分を見る目が変わった。思い出を目に焼きつけるように。降谷が自分を見る。まるで、もう二度と逢えなくなる人間を見るように。
降谷と一緒に住んでいるアパート。変化にはすぐ気づいた。違和感を覚えさせないように、彼が少しずつ自身の持ち物を消していく。
そして、彼がこの世界を発つ日。彼は自身の痕跡をすべて消し去った。
今すぐにでも起き上がって、彼を引き留めたい。その想いを堪えて、眠ったフリをし続けた。
小さく聞こえるのは、ノートパソコンのキーを叩く音。この音が止めば、きっと彼はいなくなってしまう。
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