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    poura_konohana

    @poura_konohana

    闇鍋性癖の詰めどころ。

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    poura_konohana

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    花火と囚墓ちゃんのお話

    騒がしくて仕方ない日光が嫌いだ。どれだけ隠しても白さが明るみに出て曝されるから。
    眩しい光が嫌いだ。ネズミ一匹逃がさないと言わんとばかりのギラつく光が墓石の後ろに隠れる僕すら曝け出そうとするから。
    だから、荘園に来てからもあの光が嫌いで、苦手で仕方ないんだ。夜だと言うのに月以上に輝いて、派手な音を鳴らしながら荘園中を照らすあの花火が。
    そして今朝「本日21時より花火大会を開きます。希望される方は指定の場所に集まりー‥‥」なんて知らせが来た時には頭を抱えた。
    何かしらの祝いの度にこの花火というのは打ち上げられ、一時間ほど荘園中にその存在を突きつける。その度に僕は自室で布に包まり、ただ時間が早く過ぎるのを形ばかりの神に祈ってやり過ごしていた。

    ︎✿︎︎✿︎✿︎

    花火大会が開かれる影響か、今日のゲームは昼過ぎには終わり残りは各々準備をする時間となった。ゲーム終わりに花火大会の打ち合わせをする奴らを尻目に、僕は足早に自室へ向かった。
    汚れた服を脱ぎ、動きやすいようコートは置いて。それから自室に籠る準備の為、食堂へ向かった。そこには僕とは別の意味で準備をしてる人が何人かいて、その端っこで何時にましてボサボサの髪の毛をしたルカがパンを齧っていた。

    (今日の試合リストにあいつの名前は無かったから、夜更かしして今さっき起きたんだろう)

    一瞬声を掛けるか迷ったが、あいつは人気者だ。声を掛けたが最後、ルカに釣られて他のやつに「花火大会に行こう」なんて言われた日には地面に潜るに違いない。そうなればまたエミリーに怒られるかもしれない。それに、話すのなら今日じゃなくても出来る。
    僕は誰にも声を掛けられないよう、怪しまれないようにいくつかのパンと水差しを持って食堂を後にした。

    ︎✿︎✿︎✿︎

    自室で一人食事を済ませ、寝具の布を増やし、日記を書いて神に祈りを捧げたりと過ごしてるうちに時刻はあっという間に21時近くになっていた。
    隙間が無いよう、念入りにカーテンを閉める。シーツも二、三枚増やせば花火の音を塞ぐのに役立つだろうとベッドに用意をした。後は部屋の明かりを消すだけー‥‥。そう考えていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。殆どのサバイバーが花火大会に行った筈じゃ、と思いつつ、僕はゆっくり扉を開け来訪者の姿を確認した。

    「やぁアンドルー。今、時間あるかな?」

    昼間とは打って変わってきちんと髪の毛をまとめられ、いつもの囚人服を見に纏ったルカバルサーが立っていた。普段だったら嬉しい来客も、今だけは素直に歓迎することができない。なんだってもうすぐ花火が始まる時間なのだから。

    「悪いが僕はー‥‥」
    「あぁいや、ほんの二十分‥‥いや、十分で良いから私に付き合ってくれないかい?」

    断りと共に閉じようとした扉はルカの足によって遮られ、半ば無理やりこじ開けながらこいつは僕に聞いてきた。その態度には思い当たる節がある。

    (こいつが強引な態度をする時は絶対、相手に断らせる気がない時だー‥‥)

    以前似たようなことがあり、それでも僕が断ろうとした時は電流で気絶させようとしてきて、僕も頭に来てスコップで応戦したり何だりと‥‥思い出すだけでも疲れるような事態になった訳で。僕は折れる代わりに、一つだけ条件を出した。

    「花火の音が聞こえたら僕は部屋に帰る。それまでの間だけだ」

    どうしてもこれだけは譲れないと、僕はきっぱりルカに突きつけた。するとルカは一瞬だけ目を細めて、それからいつものような声色で了承した。

    ︎✿︎✿︎✿︎

    予想通り館の中にサバイバーの姿は殆ど無く、居たとしても僕と同じように部屋に籠っているのだろうー僕たち2人しか人影は無く、不気味にも思えるほど静まり返っていた。だが、この静けさももう時期あの騒音で消え去るのだろう。
    ルカの後を追って歩いていくと、やがて裏庭に出た。一番館の隅にあるそこは最低限の手入れしかされておらず、とても人が過ごす場所では無いのだが、目の前には見慣れないバケツが一つ。
    中を除くと着火剤や何かの袋が入っており、袋の中には線上の細長い紐のようなものが何本も入っていた。

    「ルカ、これは何だ?」

    僕が質問するとルカは手際良く袋からそれを取り出し、僕に見せつけた。

    「線香花火と言うんだ。なぁアンドルー、2人だけで花火をしないかい?」

    花火、という言葉にびくりと肩が震えた。体は思わず後ずさりをし、来たばかりだというのに扉を背にして開けてしまいたくなる。
    酷く怯える僕に流石のルカも動揺してるようで、アンドルー‥‥?と僕の様子を心配そうに見つめていた。

    「ぼっ僕は‥‥やらない。それに、花火の音が苦手なんだ‥‥」

    ぎゅっと目を瞑る度に思い出される、耳に劈くような音、突き刺さる光。何時かの出来事を思い出して耳を覆いたくなり、僕はその場に塞ぎ込んだ。
    物音がして、抱き寄せられたかと思えば頭が優しく撫でられた。手袋越しの、決して優しいとは言えない手つきだが、それでも温かさが伝わってくる‥‥。
    ‥‥少しして落ち着いた僕に、ルカはそっと僕に語りかけた。

    「ごめんよ、アンドルー。君が花火を苦手なのは分かっていたんだが、どうしても君と一緒に見たくて‥‥無理をさせてしまったね」

    ルカは例の線香花火を手に取ると僕から離れ、バケツと共に蛇口の近くに駆け寄った。

    「良かったら、遠目でも良いから見てておくれ。音はそこまでしなくて、それに綺麗な色をしてるから」

    線香花火の先に火がつけられる瞬間、僕は耳をぐっと塞いだ。けれど、いつまで経ってもあの破裂音も、目に刺すような光もなく‥‥。
    恐る恐る瞼を開けると、そこには色鮮やかな花が咲いていて、暗闇の中からぼんやりとルカを照らしていた。ぱちぱちとどこかで聞き慣れた音は控えめで、驚いてる間にあっさりその命は枯れてしまった。

    (僕が知ってる花火と、全然違う‥‥)

    僕が興味津々に見ているのに気づいたのか、ルカは続いて二本目の線香花火に火をつけた。ぱち、ぱちぱちと、音がしては、落ちていく火を目で追いかける。怖いどころか、見ていると何だか温かい気持ちになってきて、いつの間にか体は線香花火のほうに近寄っていった。そうして。

    「‥‥アンドルーも、やってみるかい?」

    差し出されたルカの手には、一本の線香花火。そっと、僕はルカから線香花火を貰った。
    最初にルカの持ってる花火に火がつけられると、おいでと小さく手招きをされた。傍に寄れば手元の花火もぴったりとくっつけられ、ルカのものから僕のへと、次々に花が咲いていく。
    どこか既視感のある光に、僕は思わず「あ」と声を上げた。

    「この光、ルカの光と似てるんだ」
    「私の、光?」

    当の本人はあまり自覚が無いのか、僕の言葉に首を傾げる。それもそうだ。試合の時では無く、発明に夢中になってる時のルカの色にそっくりなのだから。
    差し入れを持って部屋に訪れると、あまりに過集中になってるのか、ルカの体からぱちぱちと電気が出ているのを見たことがある。それに花の模様はルカの体を伝う模様とも似ている。

    「この光、僕は好きだ」

    思わず口元が緩み、心の言葉が漏れ出た。じっと線香花火を見つめていると、ルカがすっと言葉を差し込んできた。

    「‥‥それって、遠回しな告白?」
    「なっち、ちがっ、あー‥‥」

    線香花火の先が落ちると同時に、隣にいたルカの呼吸が、息が僕のものと混じる。暗闇の中、繋がれた唇が妙に熱く感じて、息をするのも忘れそうになって。

    「私も君が好きだよ、アンドルー」

    キスと一緒に告げられた言葉は僕の胸をざわつかせるのには充分で、遠くで聞こえる花火の音よりも、身体中を巡る鼓動の音に僕の頭は真っ白になっていた。
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