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    Elkidou_love

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    昔書いた「君と僕。」の小話。
    双子が好きなんです。
    可愛いからみんなも漫画読んでね☆

    #君と僕。

    兄弟げんか双子だからって、考えてること全てがわかるわけじゃないんだよね。お互いに意志があるんだから。
    けれどうちの弟といえばそんなこと歯牙にもかけず、兄であるならば何でもわかってると思っているんだから非常に厄介だ。

    それでいて、自分もどこかで同じことを思っているんだから‥

    厄介厄介。





    昼食をすませ、残っていた宿題を片付けようと椅子に座った時の事。

    「悠太ぁ〜〜」
    「え?‥‥んぐっ」

    弟の少し上擦った声に振り返ろうとした瞬間、首に回された腕に息がグッと詰まり、背に人一人分の重力がのしかかった。

    「悠太にお願いがあるんだけど」
    「っ‥‥ちょっと、祐希‥首絞まってるから‥お兄ちゃん死んじゃう死んじゃう」
    「‥どけたら言うこと聞いてくれる?」
    「‥待って、それは考えさせて」
    「じゃあどけられない」
    「こ〜ら〜」
    「わあっ」
    「ほら、どいてどいて」

    宥めすかしつつ、同じ体格の弟を背から引きずり下ろす。

    「それで?お兄ちゃんの首を絞めてまでお願いしたいことって何?」

    床に転がった祐希が、身を起こしながら上目遣いで遠慮がちに言う。

    「‥アニメージャをですね」
    「え、雑誌?」
    「小遣いが尽きそうなんです」
    「‥‥」
    「お願いします悠太様〜!」

    呆れて無言の俺に祐希が立ち上がり擦り寄ってくる。

    「でも祐希、先月も新作ゲーム買って小遣いなくなったって言ってたでしょ」
    「ちょっと、過去の辛い思い出をほじくり返さないでくれない」
    「少しは反省しなさいね?」
    「今週のアニメージャはどうしてもどーしても欲しいんです」
    「‥貸すのはいいけど祐希、返すアテはあるの?」
    「先の事は誰にもわからないので」
    「祐希‥悪いけど俺、宿題終わらせたいから」

    擦り寄る祐希の頭を軽く押しやり、机に向き直った。
    ちょっと牽制して様子を見よう。あんまり甘やかし過ぎてもいけない。

    「‥‥悠太は何も分かってない」
    「え?」
    「俺のこと何も分かってくれてないっ!もう悠太の弟やめる!」

    吐き捨てるようにそう言って部屋を飛び出した祐希。バタバタと廊下を走る音に、母さんの祐希を呼び止めようとする声が重なる。玄関の戸が開いて閉まる音が響いた。

    「‥‥なんで‥そうなるかな」

    どこで言い方を間違えたのかと一応思案。


    ‥‥‥‥結果、


    「双子だからって考えてること全てがわかるわけじゃないんだよね」
    「あ?何か言ったか?」
    「‥え?何?」
    「いや、お前が何?」
    「‥俺、今声に出してた?」
    「割とハッキリな」
    「‥‥」

    決まりが悪くなり、開いてた教科書に視線を落とす。そういえばここは教室で、次の授業に向け要と宿題の解答合わせをやっていたのだった。

    「また祐希が何かやらかしたのか?」

    英字を目で追っていた要が、顔を上げ問い掛けてくる。
    ピンポイントで祐希側に原因があると言い当ててくる要は流石だと思う。

    結局あの後一言も話さないまま、喧嘩とも言い難いやり取りを学校にまで持ち越してしまった。
    頑なな祐希に煽られ、こちらもついに口を聞けず仕舞いなのだ。

    「‥やらかしたというか、いつも通りというか」
    「なら今更悩むことじゃねーな」

    珍しく相談に乗る気になっていた要も、極端な結論が出た途端に教科書に視線を落とした。
    何も解決してないのに、要が言うと殊更どうでもいい悩みだった気がしてくるから不思議なものだ。

    「悠太君、祐希君何かあったんですか?」

    名前を呼ばれ振り返る。のんびりした口調で話しかけてきたのは春だった。足どりものんびりとしながら、その手には数学の教科書が握られている。休み時間を利用して勉強を教わりに来たらしい。

    「祐希?なんで?」
    「今そこで教室覗いてる祐希君に会ったんですけどね、悠太君に用事なのかな〜と思って声掛けたら走ってっちゃって‥」
    「覗いてたの?」
    「はい」
    「‥今俺、祐希に無視されてるんだよね」
    「え?!け、ケンカしてるんですか??」
    「ケンカって程でも‥‥春は数学教わりにきたんでしょ?どこ?」
    「それどころじゃないですっ!仲直りしましょう?」

    自分の目的そっちのけで俺達の心配をしているのだから、春はつくづく優しい子だ。その優しさも、要にとっては呆れる要因でしかないらしい。

    「いいからほっとけよ春。その内いつもの祐希に戻んだろ」
    「ほっとけませんよ!友達ですもん」
    「春、有り難いけど聞きたい所あるなら急がないと、休み時間終わっちゃうよ?」
    「う‥」
    「お前‥次の授業小テストじゃなかったか?んな悠長にしてらんないだろ」
    「うぅ‥でも要君‥」

    段々と萎んでいく春が流石に可哀相になる。それもお構いなしの要は、春から数学の教科書を取り上げパラパラとページをめくった。春も流石に勉強モードに入らざるを得ず、何ページの何番目とか恐縮しながら指定した。

    要達のやり取りを見つめつつ、ふと視線を感じ顔を横に向けた。

    「あ‥、あーもう」
    「‥‥悠太君?」
    「ごめん春‥要、あとよろしく」
    「えっ??ゆ、悠太君?!」
    「‥ほら、よそ見すんな春」
    「え?え??」

    身に覚えのありすぎる影が、教室の前を横切り走り去っていったのが見えた。
    視線が合ったから手を挙げたのに、なんで逃げるのか。

    「こーらこら、待って早いから」
    「わっ、ついて来ないでよ」
    「じゃあ逃げないでよ」

    本気で走ってはいないのだろう。簡単に追いつき、腕を掴んですぐに降参したのがその証拠。

    「‥何度か教室覗いてたよね?俺に何か言いたいことあるんじゃないの?」
    「別に‥悠太こそ俺に言いたいことあるんじゃないの?」
    「あるよ。」

    祐希がビクッと震えたのが、掴んだ手越しに伝わってきた。

    「‥何?」
    「祐希は俺が今考えてること分かる?」

    ジッと視線を交える。

    「‥‥‥‥‥怒ってる」

    たっぷり溜めてから祐希は消え入りそうな声で呟いた。
    ああやっぱりね。

    「ほら。祐希勘違いしてる」
    「?」
    「だから俺だって分からない時もあるよ」

    すれ違いがあったのなら、それはきっとすごく些細なこと。

    「俺は少しも怒ってないよ」
    「‥悠太、昨日から話し掛けてこなかったじゃん」
    「話し掛けるなって顔に書いてあったからね」
    「書いてないし」
    「‥祐希こそ怒ってたんじゃなかったっけ?」
    「別に怒ってた訳じゃない」
    「‥じゃあ、勘違いはお互い様だ」
    「‥‥」

    ちょっと弟が兄に甘えて拗ねていただけのこと。互いの怒りを買ってしまったものと勘違いし、敢えて触れようとしなかったが為のすれ違い。
    だったらあとは簡単。

    「‥ゆーた‥‥怒ってると思ってた」
    「‥わかんない事もあるよ。だって俺は俺、祐希は祐希だもの」

    なんだかんだ個性があって、だから勘違いだってする。喧嘩もする。だから‥

    「祐希、今日アニメージャ買いに行くよ」
    「え?‥いいの?」
    「俺は貸さないなんて言ってないでしょ。返すのも本当はいつでもいいんだ」
    「悠太お兄さ〜ん」
    「だからちゃんと話し合おう?勝手に勘違いして、気まずくなるなんて俺は嫌だから」
    「‥‥‥」
    「弟やめるなんて‥それこそ怒るよ」
    「‥‥ごめん」
    「うん」

    いつもみたく首に回された腕をよしよしと叩く。肩口に埋められた祐希の顔は見えないけど、どんな顔をしているかは大体想像出来る。
    何度も何度も名前を呼んでくるから、流石に可笑しくなってついクスクスと笑みが漏れた。

    「悠太‥ごめん悠太‥」
    「‥ん。教室戻ろっか」

    似た顔が似た様にニッコリ微笑み、同じ方向へ歩を進める。

    ちゃんと面と向かってお互い言いたいこと言って、‥ほらね。これなら勘違いしないでしょ?





    「おう、おかえり」
    「ん。‥春、大丈夫だった?」
    「俺が教えてんだ。大丈夫じゃなかったらあいつの頭を疑う」
    「さすが要センセ。頼もしいね」
    「お前の方は?」
    「ん?」
    「どうせお前が折れて終わったんだろ」
    「‥さすが要センセ」

    英語のノートを開く。書き損じた英単語が遠慮がちに付け加えられていた。要の小綺麗な字に思わず指を置く。

    ああ‥要のこういうとこいいな。


    「ここ、間違ってた?」
    「そこの文章は過去形だから、動詞も合わせて過去形に‥‥‥どした?」
    「‥これ、春が?」
    「ああ、悠太にって」
    「‥ふふ」
    「春はいつもこんなん持ち歩いてんのか」
    「春らしいよね」

    教科書の間から出てきた飴を頬張る。イチゴの味が口いっぱいに広がった。
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