双子1「公子様、弟さんお見えですよ。」
「ん?あ、ああ。 ありがとう。」
学級日誌を簡単に書き終え、鞄を掴んで立ち上がる。
「また明日。」
そう言って にこ、と人好きの良い笑顔を貼り付ければ
きゃあ、と黄色い歓声が沸き立ち、目の前の女の子は頬を赤く染めた。
「ごめん、待たせた。」
「ん。相変わらず人気だねぇ。」
先程の様子を廊下から見ていた同じ顔の彼は、
既に見飽きた光景について心底可笑しそうに笑う。
夕焼け色に染まった廊下は、秋の風が吹き抜ける。
肩を並べて歩く2人に集まる視線には
面倒なので気付かないフリをする。
2人に浴びせられるのは
憧憬、羨望、それから…ドス黒い感情も。
それら全てに背を向けて歩く。
「学校であの呼び方されるのは気分は良くない。
2766