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    はとり

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    フロ監♀
    魔法薬で五歳児くらいにされてしまったフロイドと、その世話を任されてしまった監督生♀のお話。(付き合ってる設定)
    できあがったら本にしたいなぁとか考えてます。
    監督生♀目線、

    「監督生さん、しばらくの間フロイドを宜しくお願いしますね」
    「……分かりました」

     ニコやかな顔でそう言い残した長身の男は、こつこつと靴音を響かせてオンボロ寮を後にした。
     残されたのは、引き攣った表情のまま男の背中を睨みつける女……私と、その隣で白目をむいている相棒のグリム、そして私の足元でグリムの毛をモフモフ触って遊んでいるフロイド先輩。フロイドはフロイドでも、その姿はなんと五歳児まで退行してしまっていて、十七歳の面影はほとんどない。大人が子供に退行してしまうなんて、私の住んでいた世界では考えられないことだ。アニメや漫画でしか見たことがなかった出来事がいま、実際目の前で起こっていて、何度見てもフロイド先輩は子供の姿のままだ。どうしてこうなったんだろう。魔法が当たり前に存在する世界でそんなことを考えるのは無駄な労力だろうか。考えても答えは出ないという結論に至り、私は考えることを放棄した。
    「ねぇーこえびちゃんこえびちゃん。ジェイドどこいっちゃったのぉ?」
     きゅっと服の端を引っ張られる感覚を覚えて、目線を下へ向けた。小さなフロイド先輩が不安そうに私の顔を見上げる。いつものフロイド先輩と違って、いま目の前にいるフロイド先輩の手は子供らしく紅葉みたいな小さな手で私の服をつかんでいる。
    「えっと、ジェイド先輩は少し用があって……」
    「えー……つまんなぁい」
     私を呼ぶ声は高く、まだ少しだけ舌足らずだ。つまらなさそうにぷくりと頬を膨らませるフロイド先輩……いや、フロイドくん……?いやもうどっちでもいい。その姿は年相応でとても可愛らしく映った。やっぱりジェイド先輩と一緒がいいよね?私みたいな得体の知れない奴のそばにいるの嫌だよね?そう思ってフロイド先輩のそばにしゃがみ込む。
    「やっぱりジェイド先輩と一緒の方がいいですよね? いまから一緒にジェイド先輩追いかけます?」
     見た目は五歳児でも本来は私より年上なので、一応敬語を使って話しかける。
     先輩はジッと左右の異なった虹彩で私を見つめた後、首を左右に振った。「ううん、べつにいーよ。オレ、こびちゃんといっしょにいる」にぱっと輝かんばかりの笑顔で言われて、私はがくりと頭を垂れた。



     事の発端は、本日行われた錬金術でのことだった。
     フロイド先輩の背後で授業を行っていた生徒が誤って薬品をフロイド先輩の頭にかぶせてしまったらしい。そんなことある?なんて誰しも思う誤りっぷりだ。どう誤ったら190cmのフロイド先輩の頭に魔法薬をひっかけることができるんだという話で。
     かぶせた本人は故意ではないと言い張っているらしいが、授業中で使うはずのない薬品を持っていたことと、背の高いフロイド先輩の頭の上に魔法薬をかけたことから十中八九、故意だろうというのが先生方の見解だった。というかそんな役満状態でよく故意じゃないって言い張れたなと逆にそちらの方に感心を覚えてしまいそう。

     薬品をかぶってしまったフロイド先輩はその場で苦しみながら倒れてしまい動かなくなったかと思うと、みるみるうちに縮んでしまった──と、カリム先輩がそう言っていた。後ほどその生徒はジェイド先輩との『お話』によって、わざとフロイド先輩に薬品を引っ掛けたことを白状した。なんでも以前に乱暴に取り立てられたことを恨みに思っていて、それに対しての報復だとか。契約したのは自分の意思だろうに自分勝手も甚だしい。報復されるほどの取り立て内容がどれだけ『乱暴』であったかはこの際横に置いておくこととする。

     そして、退行してしまったフロイド先輩は記憶まで退行してしまったようで、アズール先輩とジェイド先輩以外は分からなくなってしまったようだった。他の人たちを見ても「だれ~?」と首を傾げていた。もちろん私の顔を見ても「オマエなに? よわそう」の一言で、まぁ確かに弱いけどそんなハッキリ言わなくてもいいのに。
     片割れのジェイド先輩と、幼馴染のアズール先輩以外には興味はないらしく、二人の後ろを追っかけて楽しそうに走り回っていた。尾鰭が二本あんのチョーおもしれー状態ですね、とジェイド先輩が言っていた。ジェイド先輩の物真似がちょっとだけ面白かった。
     
     先輩が元の姿に戻るには、一週間ほど時間がかかるとのこと。先輩の飲んだ魔法薬そのものを打ち消す薬を体に摂取すればいいのだけど、そうなれば先輩の人間化も解けてしまうことになるし薬は複数のものを飲むのはあまり体によくないのだそうで、アズール先輩がそれならば一週間経つのを待った方がいいでしょうという判断をくだし、ジェイド先輩もそれで了承した。
     そういえば元の世界でも一緒に飲んだらダメな薬ってあったもんね。薬の飲み合わせも気になるし人間から人魚の身体に戻るときの負担と子供から大人の身体へ戻る時の負担を考えると自然に戻るのを待った方がいいのかもしれない。魔法薬などの知識はからっきしなので、よく分からないけれど先輩の負担にならないものならばどれでもいい。

     先輩は、私のことを覚えていない。その事実は、私の心をじわじわと重くのしかかってきた。
     小さいフロイド先輩に会ったときの訝しげに見る左右の異なった虹彩の中には、私の対する好意的な色が一切見えなくて、ああ、本当に私に関することは一切覚えてないんだなと気落ちしてしまった。五歳くらいのフロイド先輩に会っていないから当然といえば当然なのだけど、そのことが私の心臓をさっくりと容赦なく突き刺していった。
     私はその傷口を見ないフリをして、気丈に振舞うしかなかった。
     そうだ。そもそも私は先輩が退行してしまったことについて一切関係ない。先輩が縮んだこともジェイド先輩に教えて貰て初めて知ったのだ。第三者に徹しようと思っていたのに、どういうワケか一週間フロイド先輩を預かる羽目になってしまった。当然のようにがっつりと巻き込まれてしまっている。
     なんでも、この状態のフロイド先輩なら勝てると思い込んだ命知らずのお馬鹿さんたちがフロイドに危害を加えかねない……うんぬんかんぬん。なのでオンボロ寮でかくまって欲しい……うんぬんかんぬん。そもそも貴女たちは恋人同士なんですから何ら問題ないでしょう……うんぬんかんぬん。いやいや、ご自身の目の届く範囲に置いておいた方が絶対いいとこちらも主張した。でも、寮長、副寮長ともなれば忙しい身の上であり常に傍についてあげられないので暇を持て余している……いや、時間がであろう監督生さんにお任せしたい、と。
     物申したい部分はたくさんあるが、要するに『あなたが面倒見てください、彼女でしょう』ということだ。私も抵抗した。こちらだって勉強もあるし自分のコトでいっぱいいっぱいなのに、彼女だからって他人の世話なんて無理だと主張した。しかも子供だ。五歳の子供の面倒なんてしたこともない。グリムもいるし絶対に無理だと。でも、アズール先輩が「もし引き受けてくれた際には、一日にこれだけ出しましょう」とすっと人差し指を立てた。千マドルですか!?違います、一万です。まぁでも千でいいと貴女が仰るのであれば千で構いませんが。やります!そうですか、ありがとうございます、ではこちらにサインを。金をちらつかせられ、向こうの言うがままにホイホイと契約させられてしまい、フロイド先輩を預かる運びとなった。まあ、半分は私の我欲によるものだけど。

     小さくなってしまったフロイド先輩は、私のことを『こえびちゃん』と呼んだ。
     それは最初にジェイド先輩が、私のことを「小エビさんですよ、フロイド」と紹介したからだ。「オマエ、こえびなの?」と首を傾げるきらきらした目と五歳の子供に「違います」と大人げないことを言えず「そうですよ」と肯定した。すると、先輩は笑顔で私のことを「こえびちゃん」と呼ぶようになってしまった。
     どんな姿になっても、フロイド先輩の中で私は小エビという位置付けなのだ。
     小エビは、ウツボの共生相手らしい。以前、フロイド先輩からそう教えてもらった。共に生きる相手として、ウツボはエビに利益を求めエビもウツボに利益を求める。でも、それは実際のウツボとエビの関係で、私たちは違う。先輩はウツボの人魚だけど私は普通のどこにでもいるような人間だ。エビではない。先輩と初めて会った時に、私がエビのようにビクついて飛び跳ねるのが面白いから小エビと名付けただけで、何か深い意味があって私に小エビと名付けたワケではない。そういう特徴があったというだけで、先輩は私に共生相手として何かを求めているわけではなかった。

     はぁ……。特大級の溜息を零して、ジェイド先輩の姿が見えなくなってから私は踵を返した。
     なんだか一気に疲れた。アズール先輩から一日目のお金をいただいてしまっているのでやっぱり止めますとは言い出せない。それに一度引き受けたのは私だし、こんな小さな子供を放り出す真似もできない。
    「えっと、先輩も寮に戻りましょう」
    「うん。オレはらへっちゃった~、こえびちゃんなんかつくってぇ」
    「そういえばもう夕ご飯の時間ですもんね」
    「ふなぁああ~……オレ様の毛並みが……」
     ぼさぼさになった毛並みをくしくしと直しているグリムに心の中で、いつもよりツナ多めでご飯作ってあげるからね。そう言葉を落として談話室へと向かった。
     談話室へ着くなり、一人掛け用のソファを陣取ったフロイド先輩は足をぷらぷらさせながら興味深そうに辺りを見渡していた。談話室はたまに泊まりにくるエースやデュース、休日には他の一年の溜まり場となっている以外、ほとんどが私やグリムの憩いの場所となっている。あちこち古めかしいけれど、住めば都とでも言うべきか。私にとっての帰る場所だ。
    「こえびちゃんはここにすんでんの?」
    「そうですよ、私とグリムの家です」
    「ふぅ~ん。あかりのついたちんぼつせんみた~い、あっちこっちボロボロじゃん」
     きゃっきゃと嬉しそうに足をパタパタと動かすフロイド先輩。明かりのついた沈没船ってこんな感じなんだな、とぼんやりとそんな感想を抱きながら「気に入ってもらえて何よりです」と適当に言葉を返した。

     自分の部屋に戻り、制服から部屋着へと手早く着替えてキッチンへと向かう。グリムにはツナたっぷりのツナサンドを作ってやろうと思って冷蔵庫を開け、そこではたと気になったことがあった。
    「……小さいフロイド先輩ってなに食べるんだろ」
     元の姿のフロイド先輩は偏食のきらいがある。特に椎茸含む、きのこ類は蛇蝎のごとく嫌っている。ジェイド先輩が美味しそうにきのこを食べる横で、嫌な顔を隠そうともせずきのこを憎々し気に睨みつけている。きのこに親でも殺されたんですかと聞いてみたいところだが、そんな怖いもの知らずな真似できるわけがない、私はまだ死にたくない。先輩は残すとアズールがうるさいから、と好まないものでも仕方なく食べてるという感じだ。
     でも、それは大きなフロイド先輩の話で、しかしここにいるのは五歳くらいの人魚の子供だ。この子は一体なにを食べるんだろう。逆に与えてはダメな食べ物とかあるのだろうか。人魚の生態はまったく分からないので悩んでしまう。
     ぱたんと冷蔵庫を閉じて、腕を組みながら談話室へと戻る。扉を開けるとフロイド先輩は今はグリムに夢中なのか、こちらには見向きもしなかった。
     テーブルの上に置いていたスマホを手に取って、アドレスからジェイド先輩の名前を引っ張り出す。こういうことはフロイド先輩の身内の人に聞くのが一番確実だ。
     何かありましたらいつでも連絡してきてください、という言葉に甘えてさっそく使わせてもらう。ジェイド先輩の番号をタップして、先輩が電話に出てくれるのを待つ。ワンコール、ツーコールと流れて、ぷつりとコール音が途切れ『もしもし』とジェイド先輩が電話に出る。
    「もしもし、ユウです。ジェイド先輩さっそくすみません」
    『監督生さん、どうされました? フロイドがなにか問題でも?』
    「いえ、違います。フロイド先輩はグリムと一緒に遊んでます。電話させてもらったのは、少し確認したいことがありまして」
    『確認、ですか』
    「はい。五歳くらいの人魚の子供って何を食べるんでしょう? 逆に食べさせてはダメなものってありますか? 人魚の生態に明るくないので、万が一何かあったらと思って」
    『ああ、なるほど。そのような用向きでしたか。わざわざすみません、僕もうっかりして伝え忘れておりましたね。基本的に人間の食べるものと変わらないと思っていただいて大丈夫ですよ。味のはっきりしたものを好んで食べると思います』
    「味のはっきりしたもの……オムレツ、オムライスとかハンバーグとかどうでしょう?」
    『ああ、いいですね。そういったものはフロイドも好きだと思います。多分、その年齢だと食べたことがないと思いますが、フロイドは面白いことが好きですからね。きっと『なにこれ~うまそ~』と言って食べてくれると思います』
     フロイド先輩の物真似をするジェイド先輩にくすりと笑いがこみ上げる。彼らはたまにお互いの物真似をするのだが、生まれた時から一緒にいるせいか特徴を掴んでいてとても似ている。
    「そうですか、分かりました。作ってみます」
    『材料はありますか?』
    「あ、あ~~……ちょっと待ってください、冷蔵庫を確認します」
     談話室から出てキッチンに向かい、冷蔵庫を開ける。たまごはあるが玉ねぎや合挽き肉がない。これではハンバーグやオムレツを作るのは難しいかもしれない。
    「ジェイド先輩、材料はほとんど全滅でした。玉ねぎとか合挽き肉とかなくて」
    『なるほど。でしたら必要な材料をオンボロ寮の監督生さんあてに送らせていただきましょう。後ほど寮生に向かわせます』
    「いいんですか? あの、対価とか」
    『対価……ふむ、でしたら材料費はフロイドのバイト代から天引きしておきましょう。監督生さんとグリムくんの分も送りますので三人でどうぞ』
    「え、フロイド先輩のお給料から……それっていいんでしょうか……?」
    『ええ、小さくなってしまったのもフロイドの油断が招いたことです。それに、貴女たちが食べる分を天引きされたくらいで彼は何も言いませんよ』
     本当にそうだろうか。少し迷ったものの、私はジェイド先輩の言葉に甘えることにした。
    「じゃあ、お言葉に甘えます。ありがとうございます、助かります」
    『いえいえ、こちらこそ。フロイドが元の姿に戻った時に彼にも伝えてやってください』
     電話を切り上げようとした先輩を呼び止める。
    「あの……先輩」
     電話越しの先輩は「なんでしょう?」と落ち着いた声色で私の言葉に答える。ジェイド先輩って今まで生きてきた中で焦ったことがあるのかなと、そんなどうでもいいことを考えてしまう。
    「先輩は、どうして私にフロイド先輩のお世話を頼んだんですか? まだ五歳くらいですし、近くにいるなら身内の方が先輩も安心すると思うんですけど」
     ジェイド先輩と通話をしながら、棚から食器を取り出す。子供用の食器がないけど、普通ので大丈夫かな。
    『何故って、貴女たちお付き合いされているんでしょう? フロイドがそう言っていましたよ』
     ジェイドの言葉にぴくりと指が震えた。
    「そうです、ね。そうです」
    『それにこの頃のフロイドはとても好奇心旺盛なんです、珍しいことを好みますので僕のそばより監督生さんのそばが宜しいかと思いまして』
    「なるほど……確かに珍しいものに目がないみたいです、私よりもグリムばかりに夢中になってますよ」
    『ふふ。何やら不服そうですね、僕でよければ話を聞きましょうか? フロイドの恋人であれば身内のようなものですし』
    「……ううん、大丈夫です。ジェイド先輩すみません、変なこと言って。材料の件もありがとうございます」
    『そうですか。では何かあれば、いつでも連絡してくださいね』
     それでは、と。電話を切って、私はぼんやりとした心地で切れたスマホの画面を眺め続けた。
     恋人同士……か。心の中でその言葉を反芻して、私は深いため息をこぼした。
     ジェイド先輩の言っていることは間違ってない。私とフロイド先輩は恋人同士だ。
     私から告白して、先輩が「いいよぉ、小エビちゃんのカレシになったげる」なんて。先輩の気まぐれが働いたのか、私たちは付き合うことになった。ジェイド先輩とアズール先輩はそのことを知っていて、それもあってフロイド先輩の世話を私に頼んできたのだろうということも。
     私は壁に背を預けて、もう一度ため息を吐いた。
     恋人同士。
     本当に、私たちは恋人同士だったのだろうか。
     考えることはそんなことばかりで、心に暗い影を落としていく。油断していると情けなく泣いてしまいそうになって、私はグッと唇を噛み締めた。
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    PROGRESSフロ監♀
    魔法薬で五歳児くらいにされてしまったフロイドと、その世話を任されてしまった監督生♀のお話。(付き合ってる設定)
    できあがったら本にしたいなぁとか考えてます。
    監督生♀目線、
    「監督生さん、しばらくの間フロイドを宜しくお願いしますね」
    「……分かりました」

     ニコやかな顔でそう言い残した長身の男は、こつこつと靴音を響かせてオンボロ寮を後にした。
     残されたのは、引き攣った表情のまま男の背中を睨みつける女……私と、その隣で白目をむいている相棒のグリム、そして私の足元でグリムの毛をモフモフ触って遊んでいるフロイド先輩。フロイドはフロイドでも、その姿はなんと五歳児まで退行してしまっていて、十七歳の面影はほとんどない。大人が子供に退行してしまうなんて、私の住んでいた世界では考えられないことだ。アニメや漫画でしか見たことがなかった出来事がいま、実際目の前で起こっていて、何度見てもフロイド先輩は子供の姿のままだ。どうしてこうなったんだろう。魔法が当たり前に存在する世界でそんなことを考えるのは無駄な労力だろうか。考えても答えは出ないという結論に至り、私は考えることを放棄した。
    「ねぇーこえびちゃんこえびちゃん。ジェイドどこいっちゃったのぉ?」
     きゅっと服の端を引っ張られる感覚を覚えて、目線を下へ向けた。小さなフロイド先輩が不安そうに私の顔を見上げる。いつものフロイド先 6881

    はとり

    PROGRESSきみに捧ぐユートピア
    フロ監♀
    🦈🦐
    前回の続きです、今回は🐈が活躍します。
    「え……す、すき……?」
    「うん。オレ小エビちゃんのコトが好きなんだけど、でも小エビちゃんって別にオレのコト好きじゃねーじゃん? だからどうやったら好きになってくれるか教えてもらおうと思って」

     フロイドの口から紡がれた言葉に耳を疑った。好き。これは、告白なのだろうか。しかしユウの知っている告白と違うような気がする。
     告白というものはもっと相手のことを想ってドキドキして悩んだり苦しんだり、それでいてぎゅっと胸を掴まれるような切なさと甘酸っぱさ、それらの心の内を相手に知ってもらうことで、これからの自分たちの関係性を変えていきたいというアピールの一つという認識だった。少し少女漫画思考かもしれないけれど、好きな人に告白する時の胸中とはこのような感じだと思う。多分だけど。
     知ったような口ぶりで話しているけれど、実のところ誰かを好きになり告白をしようと思った経験がないので、これら全ては少女漫画から学んだ知識になる。漫画が好きで少年少女問わず色んな漫画を見てきたので経験はなくとも知識だけなら人並。特に自慢にもならないけど。登場人物は告白をしようか思い悩んでいる者もいれば連載一話目から告白をし 1815

    はとり

    TRAINING「きみに捧ぐユートピア」
    フロ監♀🦈🦐
    🦐のことが好きだからどうやったら好きになってくれるか教えて、て本人言うところから始まる話。
    その日は特に代わり映えのない日だったと思う。
     いつものように目覚ましと共に起きて、グリムと共に学園へと向かう。途中でエースとデュースに会い、他愛のない話をしながら一緒に教室へ向かい、一限目の授業の準備をする。お昼になったら大食堂へ向かって肉が食べたいとごねるグリムをなんとか宥めて、話題に花を咲かす。一日の大半を四人で過ごし、放課後はエースやデュースがクラブ活動があるとそれぞれの部へ行ってしまうのでユウはグリムと共にハーツラビュルのお茶会へお邪魔したり、サバナクローのマジフトの見学をしたりと色々な過ごし方を選んでいた。たまにグリムが補習を受ける羽目になったときに、逃げださないよう監視役に努めたり。この世界でも、ユウは図太くしぶとくそれなりに日々を謳歌していた。

     今日は、放課後になると部活へ行ってしまった二人を見送り、グリムと一緒にオンボロ寮へと向かっていた。たまには早く寮へ帰ってのんびりとするのも悪くない、という意見が珍しく一致したのでサムの店でお菓子をたくさん買った。単価の安い駄菓子を紙袋いっぱいに買い込み、ほくほくしながら足取り軽やかにグリムと歩いていた時だった。

    「ん? オ 1920

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