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    はとり

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    「きみに捧ぐユートピア」
    フロ監♀🦈🦐
    🦐のことが好きだからどうやったら好きになってくれるか教えて、て本人言うところから始まる話。

    その日は特に代わり映えのない日だったと思う。
     いつものように目覚ましと共に起きて、グリムと共に学園へと向かう。途中でエースとデュースに会い、他愛のない話をしながら一緒に教室へ向かい、一限目の授業の準備をする。お昼になったら大食堂へ向かって肉が食べたいとごねるグリムをなんとか宥めて、話題に花を咲かす。一日の大半を四人で過ごし、放課後はエースやデュースがクラブ活動があるとそれぞれの部へ行ってしまうのでユウはグリムと共にハーツラビュルのお茶会へお邪魔したり、サバナクローのマジフトの見学をしたりと色々な過ごし方を選んでいた。たまにグリムが補習を受ける羽目になったときに、逃げださないよう監視役に努めたり。この世界でも、ユウは図太くしぶとくそれなりに日々を謳歌していた。

     今日は、放課後になると部活へ行ってしまった二人を見送り、グリムと一緒にオンボロ寮へと向かっていた。たまには早く寮へ帰ってのんびりとするのも悪くない、という意見が珍しく一致したのでサムの店でお菓子をたくさん買った。単価の安い駄菓子を紙袋いっぱいに買い込み、ほくほくしながら足取り軽やかにグリムと歩いていた時だった。

    「ん? オイ、ユウ。寮の前に誰かいるゾ」
    「え?」

     グリムの言葉に、ユウも寮の扉前へと目を移す。たしかに、誰かいた。寮の玄関前、数メートルの間隔を空けて寮全体を見上げるようにして佇んでいた。少し猫背気味な背中、手はポケットへ無造作に突っ込まれていて全体的に気だるげな印象を与える格好だ。遠目からではよく分からなかったが、近づいてみて誰だかすぐに分かった。
     南の海のような碧の髪に、一房だけ黒のメッシュが入った人はこの学園に二人しか存在しない。そして、猫背気味とくれば思い当たる人物は一人しか思い当たらなかった。

    「フロイドじゃねーか。アイツ、あんなところで何してんだ?」
    「さ、さぁ……なんだろうね? 寮を見上げてるように見えるけど。もしかして私かグリムに用事かな?」

     背の高い人がぼうっと立ったまま寮を眺め続けている図は、どこか異様に映る。しかもそれがフロイドとなれば恐さに拍車がかかってしまう。いつもの子供っぽさを思わせる口調や気まぐれな言動がない分、黙っているときの掴みどころの無さは何をしでかすか分からないから余計に恐い。

    「オレ様、ソックリ兄弟と関わるような契約とかしてねぇんだゾ……」
    「分かってるよ、ということは私に用事なんだと思う」
    「うぅ……なんかアイツちょっと恐ぇんだゾ」
    「分かる、黙ってるとちょっと恐いね……」

     こそこそ話していても仕方がない。いまだ、ぼんやりと寮を眺め続けるフロイドにユウは意を決して「フロイド先輩」とおそるおそる声をかけた。
     ユウの声にぼんやりと寮を見上げていた目が、ユウを捕らえた。顔は寮へと向けられたまま、意識はユウへと向けられて言い難い居心地の悪さを覚える。

    「こんにちは、オンボロ寮に何かご用でしょうか?」

     気まずさを悟らせないよう、抱えていたお菓子の袋を抱え直す。
     フロイドは寮に向けていた体をゆっくりとユウの方へと向けて、左右の異なる虹彩で二人を見下ろす。オンボロ寮の周りは人気が少なく、静かだ。フロイドが動いたときに足元からざりっと地を踏みしめた音が聞こえて、たったそれだけのことなのにユウの中で不安が募る。
     フロイドの様子を観察してはみるものの、機嫌がいいのか悪いのかユウでは判断がつかなかった。ジェイドかアズールなら、いまのフロイドの状態が分かるのだろうけど、まだ付き合いの浅い関係故に彼の機嫌が上向きなのか下向きなのかユウには想像もつかない。
     普段笑顔の多い人だから、余計、いまの静かな状態の彼は行動が読めない。異なった虹彩に射竦められて、あからさまにオロオロしてしまう。
     そんなユウを気にも止めず、無言のままこちらに歩を進める。足が長い分、一歩の幅がえげつない。手はポケットに突っ込んだまま、目の前でユウとグリムを見下ろす。ふなぁ……とグリムが小さく鳴いたかと思うと、スッとユウを盾にして背中へと逃れる。

    「小エビちゃんに聞きてえコトがあんだけど、教えてくれる?」
    「え、はい。なんでしょう……?」

     声から不機嫌さをあまり感じなかったことに少しだけホッとした。というものの、彼の聞きたいことが一体なんなのか。これまた想像つかなくて、冷や汗は止まらないのだが。
     何を言われてしまうのかと身構えていると、フロイドは先程と変わらない口調と表情でこう言った。

    「オレ、小エビちゃんのコトが好きなんだけど、どうしたらオレのこと好きになってくれんの?」
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    はとり

    PROGRESSフロ監♀
    魔法薬で五歳児くらいにされてしまったフロイドと、その世話を任されてしまった監督生♀のお話。(付き合ってる設定)
    できあがったら本にしたいなぁとか考えてます。
    監督生♀目線、
    「監督生さん、しばらくの間フロイドを宜しくお願いしますね」
    「……分かりました」

     ニコやかな顔でそう言い残した長身の男は、こつこつと靴音を響かせてオンボロ寮を後にした。
     残されたのは、引き攣った表情のまま男の背中を睨みつける女……私と、その隣で白目をむいている相棒のグリム、そして私の足元でグリムの毛をモフモフ触って遊んでいるフロイド先輩。フロイドはフロイドでも、その姿はなんと五歳児まで退行してしまっていて、十七歳の面影はほとんどない。大人が子供に退行してしまうなんて、私の住んでいた世界では考えられないことだ。アニメや漫画でしか見たことがなかった出来事がいま、実際目の前で起こっていて、何度見てもフロイド先輩は子供の姿のままだ。どうしてこうなったんだろう。魔法が当たり前に存在する世界でそんなことを考えるのは無駄な労力だろうか。考えても答えは出ないという結論に至り、私は考えることを放棄した。
    「ねぇーこえびちゃんこえびちゃん。ジェイドどこいっちゃったのぉ?」
     きゅっと服の端を引っ張られる感覚を覚えて、目線を下へ向けた。小さなフロイド先輩が不安そうに私の顔を見上げる。いつものフロイド先 6881

    はとり

    PROGRESSきみに捧ぐユートピア
    フロ監♀
    🦈🦐
    前回の続きです、今回は🐈が活躍します。
    「え……す、すき……?」
    「うん。オレ小エビちゃんのコトが好きなんだけど、でも小エビちゃんって別にオレのコト好きじゃねーじゃん? だからどうやったら好きになってくれるか教えてもらおうと思って」

     フロイドの口から紡がれた言葉に耳を疑った。好き。これは、告白なのだろうか。しかしユウの知っている告白と違うような気がする。
     告白というものはもっと相手のことを想ってドキドキして悩んだり苦しんだり、それでいてぎゅっと胸を掴まれるような切なさと甘酸っぱさ、それらの心の内を相手に知ってもらうことで、これからの自分たちの関係性を変えていきたいというアピールの一つという認識だった。少し少女漫画思考かもしれないけれど、好きな人に告白する時の胸中とはこのような感じだと思う。多分だけど。
     知ったような口ぶりで話しているけれど、実のところ誰かを好きになり告白をしようと思った経験がないので、これら全ては少女漫画から学んだ知識になる。漫画が好きで少年少女問わず色んな漫画を見てきたので経験はなくとも知識だけなら人並。特に自慢にもならないけど。登場人物は告白をしようか思い悩んでいる者もいれば連載一話目から告白をし 1815

    はとり

    TRAINING「きみに捧ぐユートピア」
    フロ監♀🦈🦐
    🦐のことが好きだからどうやったら好きになってくれるか教えて、て本人言うところから始まる話。
    その日は特に代わり映えのない日だったと思う。
     いつものように目覚ましと共に起きて、グリムと共に学園へと向かう。途中でエースとデュースに会い、他愛のない話をしながら一緒に教室へ向かい、一限目の授業の準備をする。お昼になったら大食堂へ向かって肉が食べたいとごねるグリムをなんとか宥めて、話題に花を咲かす。一日の大半を四人で過ごし、放課後はエースやデュースがクラブ活動があるとそれぞれの部へ行ってしまうのでユウはグリムと共にハーツラビュルのお茶会へお邪魔したり、サバナクローのマジフトの見学をしたりと色々な過ごし方を選んでいた。たまにグリムが補習を受ける羽目になったときに、逃げださないよう監視役に努めたり。この世界でも、ユウは図太くしぶとくそれなりに日々を謳歌していた。

     今日は、放課後になると部活へ行ってしまった二人を見送り、グリムと一緒にオンボロ寮へと向かっていた。たまには早く寮へ帰ってのんびりとするのも悪くない、という意見が珍しく一致したのでサムの店でお菓子をたくさん買った。単価の安い駄菓子を紙袋いっぱいに買い込み、ほくほくしながら足取り軽やかにグリムと歩いていた時だった。

    「ん? オ 1920

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    外の雨が強くなるにつれて突き刺すような痛みが徐々に強くなってきたこめかみをさすりながら眉根を寄せていた浮奇は、見兼ねたファルガーに鎮痛薬を飲むよう促された。当然の対応だとは分かっていたが昼前から痛んでいた頭は疲れ切って正常な思考を保てず、浮奇は鎮痛薬を差し出すファルガーの手を拒否した。ふーふーちゃんが抱きしめてくれれば治るだとか、脳みそを取り出して壁に投げたいだとか、キスして甘やかしてよだとか。とにかく悪態をついた覚えはあるが何を口走ったのか記憶にない。ただ、話を受け流しつつ浮奇の手を引いてキッチンへと向かったファルガーが唐突に顎を掴んできて、優しく重なる唇に安心したのと同時にぬるい水と薬が口内へ流れ込んできたことで浮奇はようやく正気を取り戻した。
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