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    mizutokusa

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    mizutokusa

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    先生感が皆無なんだが先生なんです。

    まっくらくらーいくらーい吸血鬼が出る、なんて噂が飛び交うようになったのは最近のことだ。闇に消える人影を見た、実際に襲われたと訴える人がいた、空を飛ぶ大きな影を見たなどなど。10月のハロウィンに向けての悪戯なのか、本物なのか。それは誰もわからなかった。噂はどんどんと膨れ上がり、今では夜道を歩く人は1人もいない。
    ハロウィンで練り歩く子供たちもいない静まり返った夜道を、ひっそりと歩く男の姿があった。スラリと伸びた背に、茶色のコートがよく生えている。磨かれた靴が石畳とぶつかってコツコツと音を立て、ガス灯の光を受けて、足元に影が伸びていた。

    その男の視界の外に、黒い影があった。音もなく、屋根を飛び移りながら、男を追う。
    (良い獲物だ)
    黒い影は男を見下ろしながら、にぃと笑った。笑った唇の隙間から、鋭い牙が見える。この街に少し前にやってきた吸血鬼だ。噂は本当だったのだ。

    吸血鬼に見下ろされているだなんて気づくわけもなく。男は歩を緩めることなく、石畳を進んでいく。すっと入り込んだのは小さな路地だった。
    (チャンスだ)
    あの路地は行き止まりになっている。逃げ道はない。

    吸血鬼はふわりと宙に飛び出し、路地に降り立った。
    「こんばんは」
    声をかけると男はゆっくりと振り返った。黒のピッタリとしたハイネックは、体のラインを浮かび上がらせている。見るからに鍛えられ、そしてスタイルがいいことがわかる。顔は髭を蓄えていたが、綺麗に整えられていて、青い宝石のような瞳が、吸血鬼を見つめた。
    「こんな夜に1人で散歩?」
    「まぁ、そんなところだ」
    吸血鬼の質問に、男はテノールの柔らかい声でのんびりと答えた。あまりの警戒心のなさに、吸血鬼も拍子抜けだ。
    「夜は危ないって噂聞かなかったのかい?」
    「あぁ…吸血鬼が出るって噂?」
    「そう」
    そこで吸血鬼はバサリとマントを広げた。たくさんのコウモリが羽ばたき、辺りを舞った。
    「血を頂こうか」
    大きく口を広げ一歩踏み出す吸血鬼に、男はふふっと笑った。
    「奇遇だな、私もなんだ」
    一瞬で青い瞳は赤に変わり、弧を描いた。
    「吸血鬼の血が、私の好物さ」
    突然吹き荒れた風に、2人は巻き込まれ、姿を消した。
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