「古論、大丈夫かい?」
雨彦が少し心配そうに顔をのぞき込んでくる。
行為の後の気怠さに包まれながら、クリスはこくりと頷いてみせた。
こうして二人でホテルになだれ込むのは、随分と久しぶりのことだった。
最近は映画の撮影に宣伝のための番組出演と、スケジュールがぎっしり詰まっていて、時間を作るのが難しかったのだ。
久しぶりの二人の時間は、久しぶりの恋人同士の逢瀬にしては穏やかに、互いの存在を確かめあうように過ぎていった。
おそらくはクリスだけではなく雨彦も、直近の仕事の中で何か思うところがあったのだろう。
今回出演した映画でクリスと雨彦は、長く相棒として共に戦ってきた関係性を持つ役を演じた。
相棒とはいっても、物語の開始時点で既に、雨彦が演じたナハトは怪我で現役を退き、クリスが演じた理人は想楽が演じたノイとバディを組んでいる状態ではあるのだが。そして物語の最後には、ナハトが黒幕として理人の前に立ちはだかり、理人は未来のために大切な元相棒であるナハトをその手にかける。
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