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    2021/10/23雨クリワンドロ
    お題:秋

    #雨クリ
    raincoatClipper

     雨彦がシャワーを浴びてリビングに戻ると、ソファに腰掛けたクリスは少し難しい顔で考え込んでいる様子だった。
    「古論?」
     声を掛けると、クリスはパッと顔を上げて雨彦の方を見る。
    「雨彦、戻ってきたのですね」
    「随分と考え込んでいるようだが……」
     そう言いながら近づくと、クリスがスケッチブックとペンを手にしていることが見て取れた。クリスが見られても問題なさそうな様子であることを確認して、雨彦はクリスの隣に腰掛ける。
    「今度出演する特番で、私たちは似顔絵を描くコーナーに出る予定のようなので、少し練習をと思いまして」
     毎年秋に放送される特番に、今年はLegendersも出演することが決まった。その特番は秋にちなんだコーナーで構成されており、スポーツやグルメ、芸術といったテーマで出演者が様々なことに挑戦するらしい。
    「それで、雨彦を描いていたのですが、やはり人物画はなかなか難しいですね」
     クリスがスケッチブックを雨彦の方へ向ける。そこにはいつものクリスの絵柄で描かれた魚たちの絵と、雨彦と思しき男性の絵が一つ。
     絵を趣味にしているわけではない素人の絵ではあるが、日頃魚のスケッチを行っているだけあって、特徴はよく捉えている。自分の絵の周囲に様々な形をした魚が散りばめられているのは、なかなかに不思議な気分だ。
    「以前も、雨彦にポーズモデルになっていただいたことがあったでしょう」
    「ああ、自分たちでライブの衣装をデザインした時だったか」
    「今はあの時よりもずっと雨彦のことを知ることができていますから、あの頃よりはよく描けていると思うのですが」
     当時は三人が距離を縮め始めたばかりで、まだまだお互いに知らないことだらけだった。それが今ではクリスと恋仲となり、共に暮らすようになっている。こんな展開は当時の自分では想像もつかなかっただろう。
     当時のクリスが描いた雨彦は、少しぎこちない表情をしていたが、今のクリスが描いた雨彦は、よく見ると穏やかで優しい笑みを浮かべている。
    「今のお前さんには、俺のことがこう見えているのかい?」
    「そうですね、最近の雨彦はこういう優しい表情をしていることが多いでしょう?」
     クリスの答えになるほど、と雨彦は頷く。最近の自分は随分と柔らかい表情になったらしい。意識してのことではなかったが、それが誰彼構わずではないということは明確だった。
    「それは、お前さんが特別だから、お前さんに対してだけそういう顔をしているのさ」
     包み隠さず伝えると、クリスはみるみるうちに照れたような表情に変わっていく。
    「……最近の雨彦は、言葉も以前よりストレートになりましたね」
    「こういうのはちゃんと伝えた方がいいだろう?」
     雨彦の言葉で照れたり笑ったりと表情を変えるクリスは見ていて飽きない。飽きる日なんて来ないのかもしれないとも思う。
    「さて、熱心に俺を描いてくれるってのもいいもんだが、そろそろ本物にも構ってくれるかい?」
     耳元で囁いていたずらっぽく笑ってみせると、クリスはこくりと頷いて、静かにスケッチブックを閉じた。
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    sy_leg

    MEMOノイくんにマウント取る大人気ない暁さんの話。
    暁理のつもりで書いたのだけれど暁さんも理人さんも殆ど出てこない上にそもそもコレは暁理なのか自信がなくなりました。
    「あーーーー終わんない!!」
     時空警察庁にある一室、特殊部隊に割り振られている事務室で真白ノイは大声をあげた。目の前にある端末には書きかけの報告書が表示されている。出動1回につき1通の報告書を提出する決まりになっているが、出動が続き未提出の報告書が溜まってしまっていた。今表示されているものが5つ目で、まだ残り6件分の報告書がある。
     ノイが報告書に追われているということは、バディである理人もまた同量の報告書に追われているということでもあった。大声をあげたことで理人に叱られるかと思ったが、声すらかけられないのでノイは拍子抜けする。
    「気が済んだなら報告書の作成に戻れ」
     ノイの視線に気付いたらしい理人はそこでやっと声をかけて来た。既に既定の勤務時間は過ぎてしまっているのだから理人の言うようにすぐ報告書の作成に戻るべきなのだが、ノイの気は重いままだし集中力も切れてしまっている。これらの報告書の提出期限は今日の2359までだが、まだ2000を少し過ぎたところなので余裕はあった。
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