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    なまたまご

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    なまたまご

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    ラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん③小さな絆芽生え編前半です!
    注:大倶利伽羅さんがダサい
    この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。エピソードの案は小ゆずさんより頂きました。

     心頭滅却すれば火もまた涼し、よく聞く言葉だがあれは嘘だ。人は火に触れれば焼け死ぬ、涼しい訳がないだろう。あれは単なるものの例えで、そんな馬鹿な指摘をする方が馬鹿だ。それは分かっている。俺は湯船の中で茹だる身体に、溜息を吐いた。それでもまだ足りず、湯船の中へと頭を沈める。ちょうど地獄の釜のようにぶくぶくと泡を立たせる。堪らなくなって顔を上げたが、状況は以前として変わらない。俺の脳裏からミニスカメイドの白桃如き尻が離れなかった。どこからどうはみ出しているのか、むちむちと音を立ててパンツのクロッチから恥じらいもなくはみ出している肉。それらはまるで競い合うようにむちむちと自分の居場所を取り合っていた。俺は馬鹿げたことに、その肉と下着の間に指を入れてみたい、と一瞬でも思ってしまった。その柔らかさや温度に興味を持ってしまった。その時のそれが性欲であると、その時はすぐに気づかなかったが、恐らく、いや…当然これは性欲に当るだろう。叶うことなら、それはただ単に純粋に気になっただけで、決して性欲ではないと主張したい。
     心頭滅却すれば火もまた涼し、それならば俺は一体何を見たら、俺に何が起きたらこれを忘れられる。そもそもその道理で考えるなら、俺は自ずと丸出しになった尻を超える猥褻物または卑猥な状況に合わざるを得ないということになる。それを受け入れろ、受け入れれば楽になれるはずだ、というのはなかなか乱暴な話だ。ふぅ、と溜息を吐いたら自分の息の熱さに驚いてしまった。よく知りもしない女に一瞬でも欲情した自分が、自分でも悍ましい。俺は自己嫌悪のあまり、再び湯船の中に頭を沈めた。



     編集の堀川という男は、機嫌がいい時に声が甘ったるくなる。また、こちらが彼方の期待を満たした時などは、それは殊更だ。その上まるで幼い子供にするが如く、昔のことや普段の何気ないところまで掘り返してきて褒めちぎる。それは嬉しさのあまりで、人に媚を売たり煽てたりしようとする汚らしい魂胆は無いのだろう。この素直でいじらしさも感じる様子、そして過剰にこちらの自信を盛り立てる様子から編集部では密かに堀川ママと渾名されているらしい。これは鶴丸の話だから、信憑性は定かでない。かく言う俺も、実のところ彼の性格を借りたヒロインを一人作っている。いつも影から主人公を見守り支える、健気でいじらしい女だ。しかしこの女は二番手、負けヒロインという奴である。それでもその儚さ、報われなさ、愛おしさから読者の人気は高い。これはラノベとラノベを愛読する読者への俺の密かな反抗だ。まさか、自分たちの愛するキャラクターの元ネタが、自分たちの読んでいる本の編集、しかも男であるとは思うまい。しかし堀川にはいつも世話になっている分、彼に無許可で俺の復讐に付き合わせているのは少し偲びない。昨日も試しに書いた主人公とヒロインの“少しエッチな”シーンをFAXで送ってやると、喜び勇んで電話をかけてきた。興奮気味に捲し立てるスマホを耳から遠ざけ、話の方向性を打ち合わせをするには苦労した。
    「ヒロインが自分がお尻を丸出しにしているのに気づいていないこの描写、いいですね!今までの先生にないエッチさがあって、新鮮です!きっと読者にもウケますよ!」
    彼の純真さが溢れる声色でそう言われたのは、内容と声とのアンバランスさで可笑しく思えた。その側で、久しぶりに堀川に褒められた分、柄にもなく嬉しくなってしまっていた俺は、その直後案の定罰を食らった。
    「この調子でもっとこういったシーンや描写を増やしていきましょうか!あまり急に盛り上げすぎるのは気をつけてくださいね!こういうのは足し引きが大事ですから!」
    覚えているのはここまでだ。それから堀川とした会話はあまり覚えていない。俺が絶望したからだ。



    先程の記憶は昨日の回想である。俺は山姥切が作った朝食を食いながら、またパソコンのキーを無意味に打っていた。一度うまくいったからそれでゴール、そんな甘い話ではなかった。そうだ、そうだった。俺は決して試練を乗り越えたわけではなく、むしろ一つハードルを飛んだ分、試練はさらに厳しくなる一方なのである。そしてそれに果てはない。そう思うと気が重く、無意識にため息が出た。ふと辺りを見渡せば、金髪のアホ毛がぴょこぴょこと野うさぎが如く跳ねている。堀川との通話の後、ふて寝した俺は珍しく朝と言える朝に起床した。堀川との通話が終わったのはpm21:00近くだったから、当然寝過ぎである。それでも朝の8:00に家の前へやって来た山姥切を待ちぼうけさせることにならなかったのだから、幸いだろう。近所の人間に、妙な噂をされたら堪ったものではない。ヒトの部屋の前に、金髪のミニスカメイドが何時間も立ち往生している光景は、どう考えても異常だ。それにこいつのことだ、少し自分より背丈の高い位置の洗濯物に手を伸ばすだけで尻を丸出しにするのだから、アパートの2階の廊下にずっと突っ立ていたのでは、下の道を通る人間からすれば公然猥褻罪となる。というか…こいつは家からこの服でここまで来ているのか?だとしたら既に公然猥褻罪を犯しているのではないか、などと不安が押し寄せる。
    「カラチャン先生、」
    不意に呼び止められて、俺は肩を跳ねさせた。何もやましいことはない、ないはずなのにびくついてしまった自分に腹が立つ。
    「何だ。」
    「今日の昼飯は何にする。」
    「あ、ああ…。」
    食べたいものを聞かれて、明確に答えられたことは少ない。気ままに生きてきた俺は、食事でさえその場で思いついたものを食ってきた。一昨日の焼きそばは、俺にしては珍しいことだった。
    「何でもいい。冷蔵庫にあるもので適当にしろ。」
    「ふむ…時間は?」
    「12時過ぎくらいか。特に急がなくていい。」
    「承知した。」
    俺は特撮映画の怪獣のようにドスドスと音を立てて揺れる乳につい目を奪われた後、その目を逸らしてモニターへ向かった。
    「カラチャン先生は、」
    「ああ。」
    「俺の料理が気に食わなかったか。」
    「は。」
    俺は背中越しに聞こえる声にモニターを見ながら返事をしていたが、さすがに後ろを振り返った。
    「急に何の話だ。」
    「ああ、この前はリクエストをくれたが今日はくれなかったから。俺の料理が口に合わなかったのかと思ってな。」
    冷蔵庫を漁る音がするから、それでも山姥切はこれから料理をする気なのだろう。別れた彼女から言われたことを思い出す。俺はいつも言葉が足りていない、何を考えているのかわからない。俺といることにもう疲れた。たった半年一緒に居ただけの人間に言われる筋合いはないと思っていたが。
    「あんたの料理は嫌いじゃない。俺は…食に拘らない。一昨日はたまたま食いたいものが浮かんだだけだ。普段は特にない。」
    ぴたりと物音が止んで、静寂が訪れた。俺は何かまずいことを言っただろうか。長らく仕事以外の人間と会話したことがないから、分からない。
    「ふぅん、なるほど。」
    独り言のような山姥切の言葉に、俺は返事を返していいのか戸惑って沈黙した。その後山姥切はまた調理に動き出したらしく、俺に何を言うでもない。会話が終わったのかと思い、何処か気まずく思いながら俺は再びパソコンに向かった。パンタグラフキーボードを無意味にパチパチとさせながら、原稿には使えない文章を打つ。
    「俺は、」
    背後から山姥切の声が聞こえて、キーボードを打つ手を止めた。
    「俺は、好きな食いものがたくさんある。ありすぎていつも何を食うか迷う。悩まずに済むカラチャン先生が羨ましいな。」
    皮肉で言っているのか、とムッとしたがこいつはそんな風に手の込んだことはしないと思い直した。俺は再びキーボードに手を這わせ、山姥切は食材を切り始めたらしい。
    「幸せな奴だな。」
    「幸せではない。いつも悩んでいるのだから。」
    そう言われれば、そうなのかもしれない。だが何と返すのが適当なのか分からず、俺はまた黙ってしまった。人は簡単に変われないらしい。山姥切は俺が会話を断ち切ったことを気にしていないのか気にしているのか、料理を続けた。野菜炒めのような匂いがしてくる。俺は中途半端に残していた卵焼きをかき込んで、朝食に使われた食器を纏めて腕に抱えた。フライパンから立ち昇る湯気は山姥切の頭を悠に超える高さだ。こうして見ると、こいつの背丈は平均よりもやや小さいと分かる。
    「む?なんだカラチャン先生。置いておいてくれれば俺が下げたのに。」
    山姥切はガスを止めて、慌ただしく俺から食器を取り返した。
    「いや…これからは、朝飯に使った皿は食いい終わったら俺が流しへ置いていく。あんたが下げなくていい。」
    俺はフライパンの上の野菜炒めを横目で見て、美味そうだなと思った。
    「ふむ…俺は守秘義務を徹底するが。」
    山姥切は、食器を下げる際に、パソコンに表示された原稿を見られるのを俺が危惧したと思ったのだろう。そんなことはどうでもいい。俺は初稿を何度も書き直すから、見られたところで大して困りはしないのだ。いや、やはりこいつに見られるのは違った意味で、俺の尊厳と威厳を損なう恐れがある。しかしそれ以上に俺が避けたいのは…。
    「いや、そうでは…ともかく、頼んだ。」
    「はあ、承知した。」
    またあの恐ろしい乳にパーソナルスペースを侵略されたのではたまったものでは無い。
    「それから。」
    「ああ。」
    「俺は、生まれが仙台でな。」
    「はあ。」
    「こっちに来てからも…度々そこで食ったものを思い出すことがある。」
    「ふむ…。」
    「食にこだわりはないと言ったが、俺は郷里で口にしていたものが好きなのかもしれない。」
    「ほおう。」
    山姥切はアホ毛を揺らして何度も頷いた。俺は一体何の話をしているのだろう。山姥切に弁明をしたかったのかもしれない。その結果は虚しく、弁明とは言えないものへと成り果てたが。
    「話は…それだけだ。」
    空回りしている自分が恥ずかしくなり、踵を返そうとしたら、山姥切はまるで花が咲いたかと見まごうかのような笑みを俺へ向けた。
    「うん。俺も好きだ、ずんだ餅。」
    「…フン。」
    俺は言葉もなくまた背を向けてしまった。耳が焼けるように熱い。俺はきっと、山姥切の笑顔を可愛いと思った。それと耳が熱い関係性は、不明である。



     堀川に褒められたのは、ほんのまぐれだったのだと思う。まぐれ…というか、山姥切が居たからだ。実際に俺は昨日、堀川に言われた後、求められた更に別の”お色気シーン“についてを試行したが、全く成果がなかった。それも相まって不貞寝である。
     俺は何度も文章を打ち込んでは消し、事態の進展の無さに頭を抱えた。それでも時間は無常に過ぎる。ふとモニターの時間が目に入って、それが指している時間に驚いた。朝飯を食べ終えてから、軽く2時間が経っていた。締切に追われている、という進行ではないが、俺にのんびりしている時間は与えられていない。猶予があると構えていると、突然に締切という絞首台が眼前に迫ってくるのだ。その移動速度は恐ろしい、まるで怪異のように気付けばふとそこに在るのである。
     頭の中でだらだらと流れる文章と、手元から生み出されモニターへ流れる文章の乖離具合に、俺は鼻で笑った。いっそ思い切り馬鹿になって、安直なことでもやってみようとした。主人公とヒロインはひょんなことから並んで同じ布団で眠ることになる。ここまでの過程は後で適当に考えよう。主人公は当然、女と同衾したことなどないから緊張で目が冴えてしまう。しかしヒロインは無頓着なので、速やかに眠りへ落ちてしまう。
    『俺は寝ているあいつの胸をじっと見てしまった。眠っているうちなら、バレないかもしれない。いや、けれど…相手の合意なしに胸を触るなど、許されるのだろうか。俺は恐る恐る手を伸ばし、』
    いや、主人公は基本的に表立って性欲を抱かず、自分から動かないことになっている。その性欲に囚われないスカした感じが、女の読者にもウケているのだそうだ。俺には度胸がないだけにも思えるが…。とすると、自ら性欲に呑まれて不埒を働こうとするこのシチュエーションはナシだな。デリートキーに指をかけた瞬間、俺の二の腕が知らない感触で包まれた。
    「ふむ。」
    むせ返るような甘い香りがして、透き通った声がやけに近く聞こえる。連続して脳に入ってくる不可思議な情報は、すぐに一つになって解明された。
    「っな!?」
    山姥切が俺にその我儘な肉体を密着させて、パソコンを覗き込んでいるのである。
    「この続きはどうなる?胸を触る前にこの女が目を覚ますのか?」
    俺の目はまず自分の腕を飲み込んでいる恐ろしい肉の濁流、いや山姥切の乳房を捕らえた。その次にスカートとしての職務を怠慢しているそれから剥き出しになった丸々とした太腿、折り畳まれた足、その足の上にどすんと乗せられた尻に次々と視線を奪われ、冷や汗が止まらない。
    「いや、おい…。」
    山姥切は何がそんなに気になるのか、俺に身体を押し付けるようにしてパソコンの画面に注視した。そのせいで大福のような、肉饅のような、何とも言い表し難い柔らかで温かな感触がもちもちと俺の腕を侵食する。
    「それとも眠ったままで目論み通りに胸を揉むのか?」
    甘ったるい香りで脳みそが酔ってしまうのではないか、と恐ろしくなった。この匂いは一体なんだ?香水…ではない。初めて会った時よりも強烈に俺を刺激してくる。決して嫌いな匂いではない、が、心臓を嫌に拍動させて苦しい。
    「カラチャン先生?聞いていないのか?」
    「あん、たには…関係ないだろ。」
    俺は咄嗟にパソコンを閉じた。それでも山姥切は、謎の物体Xをふにふにむちむちと俺へ押し付けたままだ。
    「む…別にネットにネタバレだ〜などと書き込んだりしないぞ。教えてくれ。」
    アンニュイでいて、女にしては低いトーンにも関わらず、どこか乙女らしさを感じて吐息までも甘ったるそうな声が俺の耳を溶かす。背筋にちりちりと微弱な電気が通されているかのようで、鬱陶しい。それなのに、この状況を手離したくないとも思ってしまう。
    「これはナシだ。主人公の性格と行動が一致していない。」
    「せっかく書いたのにか?」
    「ああ。よくあることだ。」
    「ふむ…残念だな。」
    「あんた、いい加減に離れ…」
    頬が熱い。いや、頬のみならず身体までに熱が篭っているかのようで。俺はまた間抜けな顔をしてしまっているのだろう。嫌になる。
    「カラチャン先生は、おっぱい触りたいか?」
    「は」
    時が止まる、と言うのはこういったことを言うのかもしれない。
    「カラチャン先生が気になるなら…」
    俺は咄嗟に山姥切の両頬を左手で掴み上げ、言葉が放たれるのを阻止した。
    「いいか?山姥切。これからメモを書いて寄越すから、それを買いに行ってこい。昼飯は外で食え、金はやる。」
    「うびゅ…しょうちした。」
    俺に唇を突き出すようにされている山姥切は、舌ったらずな返事をした。
    「それから…」
    「うむ“、」
    「上着を貸すから着ていけ。何があっても、雨が降ろうが槍が降ろうが大魔王が降ってこようが、絶対にそれを脱ぐな。わかったな。」
    「ひょうひした。」
    俺は左手を離すと、机の端のメモ帳を破り、乱雑に出鱈目な買い物リストを書き殴った。
    葱、しょうゆ、山芋、ティッシュペーパー。
    その下には俺の携帯の番号を書いた。
    「何かあれば連絡しろ。」
    「分かった。」
    山姥切はアホ毛を一度縦に振って頷いた。
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    なまたまご

    TRAININGラノベ作家大倶利伽羅先生と家事代行にょたんばちゃの話2ndシーズンドキドキ温泉旅行編
    序です。

    ※この話はますおさんによる設定をもとにした三次創作です。
    山姥切と初めて会った日、鶴丸は山姥切を俺に舞い降りた天使だと形容した。今となって考えると、それもあながち間違いではなかったかもしれない。

        ◇

     山姥切と出会ってから気づけば2年ほど経っていた。俺の初めてのヒット作、『俺ん家のエロすぎる無表情エルフメイドをどうにかしてくれないか』通称えるどうはアニメ化が決まった。毎度頭を悩ませられるお色気や、恋愛要素を増やしたことが功を奏したのだ。巻数は8巻に届き、発行部数も伸びて毎月の貯金額が少しだけ増えた。全ては順調、なのだろう。そう全く思えないのは2年もこの女と居るというのに、いつまでも振り回されているままであるからだ。それは恐らく…俺がこの女に好意を抱いているらしいと自覚したからという原因も関係しているだろう。誠に遺憾である。しかし、だから何だというのだ。俺はそれをあいつに告げる気はなかった。言ってどうなる?あの女が作る飯は嫌いじゃない。あの女がただこの部屋にいる時間がもはや当たり前だ。無闇にそれを壊すくらいなら、何もしないほうがいい。
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