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    なまたまご

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    なまたまご

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    ラノベ作家大倶利伽羅さんと家事代行にょたんばちゃん⑥恐怖の看病編後半です!
    注:大倶利伽羅さんがダサい
    この話はますおさん考案の設定を元にした三次創作です。

     薬がよく効いたらしい。お陰で今日も一日の大半を眠って過ごしてしまった。病で床に伏せている時というのは、大抵そういうものであろうが。
     身体を起こして窓に目をやると、既にカーテンが引かれていた。外はもう暗くなっているだろう。悪寒はすっかりと身を潜めていたが、その代わりに身体が煮えるような熱が俺を蝕んでいた。ぼうっとしたまま微睡に頭を頷かせていると、あの麦色のアホ毛が揺れる音が近づいてきた。
    「おはようカラチャン先生。夕飯は食えそうか。」
    痛む頭を無意味に摩る。山姥切は俺の布団の側まで来ると、まるで女中のようにしとやかに控えた。先程まで洗濯物を畳んでいたらしい。右手には俺のTシャツがあった。
    「……いや。食欲がない。」
    「そうか。なら冷蔵庫にしまっておく。」
    「ああ。」
    俺は枕元にあるスマホを手に取った。時計の表示は18:12を指していた。まだ定時には少し早いが。
    「あんた、今日はもう帰れ。」
    「む、うるさくしてしまっていたか?すまない。」
    「いや…移したら悪い、だろう…。」
    この時間まで世話を焼いて貰った癖に、何を言っているのだろう。急に恥ずかしくなって、頬がかっと熱くなった。
    「ふむ、なんだ。俺は丈夫なのが取り柄だ。気にしないで欲しい。」
    山姥切の言葉は凡そ真実なのだろう。現に心配をしている俺の方が、こうして倒れているわけであり…。居た堪れなくなって、俺は頭を掻いた。
    「まあ、カラチャン先生は俺の雇い主だ。俺はそれに従おう。今日は少し早く帰らせて頂く。」
    「…ああ。」
    山姥切は此方に主導権を握らせるのが上手い。物言いや態度に従順さは感じられないが、不思議と不快感を感じないのは、恐らくこうしてあくまで主導権を握っているのは此方だと思わせるのが上手いからなのだろう。それは計算の上でなのか、それとも自覚なしにやってのけているのか。まだ18の小娘に、果たして計算高い振る舞いが出来るのか。山姥切は時々、推し測れないような、素性が知れないような一面を見せる。
    「ところでカラチャン先生。」
    「ああ。」
    「具合が悪い時に小言を言ってしまい申し訳ないのだが、」
    「何だ。」
    「靴下は裏返したまま洗濯しない方がいい。俺は構わないが、彼女ができないぞ。」
    「……放っておいてくれ。」
    前言を撤回する。この女は、思考パターンが謎なだけであって、決して底知れない奥深い内面があるわけではない。俺は不満に身を任せ、布団を跳ね除けた。
    「あ、起きるのか?」
    「少し作業する。今まで寝てばかりいたから、このままでは夜も寝られる気がしない。」
    「ふむ、承知した。」
    とは言え、布団を出た身体は熱のせいか強張っていて、座った状態でいるのも長くは保たないかもしれない。幾つかメールを返して、堀川から寄越された修正に幾らか手をつけて終わりだろう。俺は重い頭を少し左に傾けたまま、ノートパソコンを起動した。



     普段、山姥切の働きに注視することはない。自分の仕事をしたいから、というのは勿論あるが、あまり山姥切自体に目をやると、セクハラ紛いなメイド服からはみ出した肉体に集中力を奪われるのである。今日は殊更体調を損なっていて、元々集中力が低下しているせいか、普段よりやたらと山姥切が気になった。パソコンのモニターへ向かい、メールの返信を打っていても、目の端には丸太のような太腿が飛び込んでくる。かと思えば、次の瞬間には何が詰まっているのか謎の二つの肉塊、乳が重そうに揺れるのを目で追っていて、思わず喉を呑んでしまった。しかし俺の頭の片隅にはいつも、山姥切がたったの18のガキであるという罪悪感が重石のようにあった。そしてそれにほんの少しであったとしても邪な気持ちを抱いてしまう自分と、抱かざるを得ない男の性を無性に恨んだ。自己嫌悪による苛立ちで胡座をかいた膝を上下に揺する。いつの間にかじっとりと濡れた掌で、パソコンのキーは薄ら水気を帯びてしまった。気持ちが悪い、と自分でも思う。俺は枕元からティッシュを取ってくると、除霊をするかのように悍ましい性欲の痕跡を拭いた。
    「カラチャン先生、」
    背後で声がして何だと返事を返す。後ろめたさもあって、早く会話を終わらせたかった。
    「ドライヤーを貸してくれないか。」
    「ドライヤー…?」
    いつの間にか俺の横へ寄ってきた山姥切は悩まし気に吐息をついた。
    「風呂掃除をしていたら、手を滑らせてしまって…濡れてしまった。」
    「…な。」
    山姥切を見上げた俺は、目に映る光景に絶句した。山姥切の胸元は、水に濡れて色をその一部分だけを濃くしていた。そしてあろうことか下着の存在を示すかのように、うっすらとその形状を浮かび上がらせている。山姥切は何を考えているのか俺の隣に腰を下ろした。
    「張り付いて…気持ちが悪いな。作業をしているのに、すまない。」
    顔にも少し掛かったのか、山姥切の頬には髪の毛が張り付いていた。また別の一筋の髪の束からは水滴がぽたぽたと落ちている。
    「カラチャン先生?」
    俺は息を呑んで、膨れ上がる衝動を自覚した。
    「あ、」
    どうしてこんなことをしたのか、自分でも分かっていない。ただ、衝動に抗えなかったことだけは理解している。俺は押さえつけるようにして山姥切を床に貼り付け、その上から覆いかぶさっていた。ラグの上に広がる山姥切の髪にそっと口付けるよう顔を寄せる。その匂いは、豊かに芽吹いた花畑のような香りで、既に機能不全になっている頭を更に酩酊させた。自分の鼻息がうるさい。けれど息を吸っても吸っても足りなくて、息を吸い込むほどに甘い香りが俺の肺を満たして、そういった毒のように酸素を奪うのだ。自分の身体の下敷きになった山姥切の肢体は、その肉の柔らかさを罠のように俺へ訴えかけてきた。
    「カラチャン先生…。」
    囁くような山姥切の声に肩を跳ねさせて、顔を上げる。髪で隠れた瞳が見たくて、そっと指で払ってやると、その美しい瞳は少し潤むようにして俺を見つめていた。息が上がる。頰が熱くて、鼻の奥が熱くて、喉は乾涸びたように渇いてて、身体の芯は“何か”を熱烈に求めている。俺は頬擦りをするかのように、山姥切の首筋に擦り寄った。どこもかしこも、甘い匂いがする。どんな菓子とも、花とも言いようのない香りだ。思わず噛みつきたくなって、はあ、と吐いた吐息は熱く湿っていた。山姥切の手は俺を拒絶することもせずに、むしろ受け入れかのようにそっと首に回された。全身がまるで心臓になってしまったかのように鼓動する。熱い、熱くて、今にも蒸発してしまうくらいにヒリついていて。これは熱のせいなのか?それとも俺自身の欲望からなのか…。どっちでもいい、どうだっていい。山姥切の首筋にいよいよ牙を突き立てようとした、その時。ドン、と隣から物音が聞こえて俺はハッと我に返った。そして俺が今まで下敷きにしていた山姥切を見て、飛び上がる。がむしゃらに服を見出していたのだろう。キャミソールと下着が僅かにメイド服の胸元から覗いている。山姥切はただ無言で俺を見上げていた。けれどその頬は心なしか薄紅色に色づいているようにも見えて…いや、そんなことを考えている場合ではない。俺は山姥切を捕らえるような体勢から起き上がって、奴の腕を引き、身体を起こしてやった。自分がしていた、その先を突き進もうとしていた行為が恐ろしい。俺はすまなかった、と頭を下げてドライヤーを手渡した。山姥切はどうも、と一言返事を返したが、その声色は少し掠れているように思えた。顔も見れなかったから、どんな顔をしていたかは分からない。俺は焦りから無意味な誤操作を繰り返しながらパソコンを閉じて、再び布団に潜り込んだ。目を閉じても、肉の柔らかさが、匂いが、体温の熱さが蘇ってきて、落ち着かない。
    「何をやっているんだ…。」
    きっと山姥切はドライヤーの音で、聞こえなかっただろう。熱のせいだ。熱で身体がのぼせ上がったのを、性欲のそれだと勘違いしてしまったのだ。どう、山姥切に謝ればいいのか。怖がらせただろう。あれは犯罪だ。ドライヤーの音が聞こえなくなったら、布団を出て、山姥切に謝らなければ…。そうしてその文言を考えていたはずなのに、上がり切った熱に耐えられなかったのか、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。




     壁かけ時計の秒針の音が嫌に頭に響く。寝ぼけて夢現の意識の中、それに眉を潜めて俺は寝返りを打った。目が覚めていると言えば覚めているし、眠っていると言えばそうだと言える宙ぶらりんの状態で布団の中を浮遊する。山姥切が何かしら動いている音は段々と途切れ途切れになり、暫く無音になったかと思うと此方へと近づいてきた。
    「カラチャン先生。眠っているか。」
    「…。」
    うっすらと目を開いて、あいつに目をやる。
    「それでは、お言葉通り俺は早めに帰らせて頂く。必須の業務は終わらせておいたから心配はいらない。」
    目を伏せて、小さく頷く。了承の意は山姥切にも伝わったようで、あいつも小さく頷き返した。
    「…すまなかった。」
    「?何がだ。」
    軋む身体に鞭を打って、布団から這い上がる。
    「何がって…さっきの…。」
    呻くようにして言葉を返すと山姥切はやっと思い出したかのように頷いた。
    「ああ、構わない。気にしないでくれ。」
    あまりにもあっけらかんとした態度で、俺は面食らった。あんた、本当にそれでいいのか。熱でままならない思考でも、戸惑いと罪悪感とで胸が詰まる。
    「では、お大事に。」
    山姥切は頭を下げると、俺に背を向けた。まだ、あんたに言えてないことがたくさんあるのに。あれで謝まったことにはならないだろう。あんたを怖がらせてやしないか、嫌だったのではないか。聞けていない、言えてない。まだ帰るな。咄嗟に手を伸ばした山姥切の後ろ姿に何故か、鶴丸の姿が重なった。俺は、あまりに風邪をひかない子供だったが、それでも何度かは寝込んだことがある。いつもは一人でなんの支障もなかったのに、その時ばかりは無性に心細く、隣に誰かがいて欲しいと密かに願ったものだった。悔しいことに、何の仕事をしているのか分からない鶴丸の手を引いて、引き留めたいとも思った。たぶん、あいつの嘘か本当かわからない話をもっと聞いていたかったのだと思う。けれどその時の俺は幼く、身体も小さかったから到底あいつに伸ばした手は届かなかった。遠ざかっていく背中をただ見ていることしかできなくて、俺はそれが…。
    「行くな。」
    俺は今まで幻を見ていたのだ。咄嗟に手を伸ばしてしまったのはせいだ。俺が掴んだのは遠い日の鶴丸ではない。けれどそれに気づいたのは事が終わってしまってからのことだった。山姥切は驚いたような顔で、俺を見ていた。
    「…カラチャン先生。」
    何を言えばいいのか分からなかった。人違いをした、とでも言えばいいか?いつまでもガキの頃の寂しさを抱えていると同情して貰うのか。馬鹿馬鹿しい。俺の指はやがて砂のように崩れ、山姥切の腕を解放した。痛い沈黙が数秒続く。いや、数分だったかもしれない。それを破ったのは山姥切だった。
    「すまないが、俺は帰らないといけない。」
    当然だ。山姥切の言葉は至極真っ当だ。増して、自分を襲おうとした男の言葉など…聞きたくないだろう。それでも何故か、俺の胸には氷柱が刺さったかのような痛みが走った。俺は、何をこんな小娘に縋ろうとしていたのだろう。愚かしい。目を伏せ、自己嫌悪の沼へと落ちる。
    「ああ、」
    悪かった、そう謝罪しようとした俺の言葉は山姥切によって遮られた。
    「だが、すぐ戻る。少しだけ待っていてくれ。」
    「は、戻る…?」
    「着替えと、明日使うものを家から取って来なければ。カラチャン先生の家から研修に向かうには、一度家に帰らないといけない。」
    俺の頭は到底理解が追いつかなかった。こいつは一体何を言っているんだ?つい先ほどまで馬鹿に真剣に、自分の過去や悲壮に浸っていた自分が本当に阿呆らしく思えてくる。
    「なに、ほんの20分くらいだ。いや待て…荷物をまとめて、往復…となると…。まあ1時間以内には戻る。」
    俺はただ瞬きをして、自分が置いていかれている会話に受け応える責務を放棄した。
    「なんだ。待てないか?ふむ…心細いというのも承知だ、仕方ないな…今俺の代わりになるものを…。」
    「おい待て。」
    「む?」
    山姥切は俺に向けた尻をぷりぷりとさせたまま、奴の鞄の中を漁っている。
    「俺の家から研修へ行く、と?」
    「うん。」
    「それは…。」
    「ここに泊まる。」
    「は?」
    ムキになって、俺は声を大きくさせてしまった。それを全く意に介さない山姥切は「あった」と何やら小さな物体を鞄から取り上げた。
    「料金の心配はするな。これは業務ではなく、俺個人の気持ちでやる事だからな。」
    「そういうことを言っているんじゃ、」
    山姥切は全く俺の返答を無視して、小さな物体を俺に押し付けた。それは、へたれた生地のぬいぐるみのようだった。兎なのか猫なのか熊なのか、よく分からない形状をしている。
    「これを俺の代わりだと思ってくれ。なに、ほんのすぐで戻る。」
    「……お前。」
    何を言っても話が通じないだろう、薄々分かってはいたが俺はつい口籠った。手に取って持ち上げた謎のぬいぐるみは、仄かに花のような香りをさせている。不思議なその愛らしさに、胸がどこかむず痒くなる心地がした。
    「それじゃ、俺はこれで。鍵は開けておいて欲しい。また起こすのは忍びないからな。」
    アホ毛を左右に揺らして玄関へ向かっていく山姥切を追いかけて、俺は布団から起き上がった。
    「待て。」
    「む?」
    咳き込みながら財布を取り出し、俺を見上げている山姥切へと酔った。玄関先の廊下の床はひんやりとしていて、目が覚める。
    「夕飯代だ、それとこれは…ここに足りない、あんたに必要なものを買え。」
    「…必要ない。」
    山姥切は俺の差し出した金に手すら伸ばさずに首を振った。
    「早くしろ、寒いんだ。」
    言葉通りに咳が込み上げてきて、咄嗟に山姥切から顔を背ける。背骨がひとつずつ跳ね上がるかのような衝撃にくらくらとしながら、俺は棚に縋りついた。
    「…分かった、拝領する。」
    どこか憂いの帯びた声色を聞きながら、俺は項垂れたまま頷いた。山姥切は俺の視界に映るはずもないのに一度深く礼をすると、玄関を出た。扉が閉められる音を聞いてから咳をして、俺は部屋へと戻った。熱があるはずなのに、身体はすっかりと冷え切っている。俺は山姥切が戻ってくる前に、あいつから渡された謎の物体を涎で汚さないかが心配だった。
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    なまたまご

    TRAININGラノベ作家大倶利伽羅先生と家事代行にょたんばちゃの話2ndシーズンドキドキ温泉旅行編
    序です。

    ※この話はますおさんによる設定をもとにした三次創作です。
    山姥切と初めて会った日、鶴丸は山姥切を俺に舞い降りた天使だと形容した。今となって考えると、それもあながち間違いではなかったかもしれない。

        ◇

     山姥切と出会ってから気づけば2年ほど経っていた。俺の初めてのヒット作、『俺ん家のエロすぎる無表情エルフメイドをどうにかしてくれないか』通称えるどうはアニメ化が決まった。毎度頭を悩ませられるお色気や、恋愛要素を増やしたことが功を奏したのだ。巻数は8巻に届き、発行部数も伸びて毎月の貯金額が少しだけ増えた。全ては順調、なのだろう。そう全く思えないのは2年もこの女と居るというのに、いつまでも振り回されているままであるからだ。それは恐らく…俺がこの女に好意を抱いているらしいと自覚したからという原因も関係しているだろう。誠に遺憾である。しかし、だから何だというのだ。俺はそれをあいつに告げる気はなかった。言ってどうなる?あの女が作る飯は嫌いじゃない。あの女がただこの部屋にいる時間がもはや当たり前だ。無闇にそれを壊すくらいなら、何もしないほうがいい。
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