豊前江が手紙を書く話豊前江は悩んでいた。
整った顔立ちに、これでもかと眉間に皺を寄せ、めずらしく難しい顔をして、首を傾げつつうんうんと唸っていた。
「おや、君が文机の前に座っているなんて珍しい。明日は雪、いや雹か、それとも別なものが降ってくるのか・・・」
「雪ならつい先日降ったではないか。あの程度でも世間は大騒ぎなのだ。それ以上のものが降ってきてはたまったものではない。
・・・何か悩み事か?」
ちょうど出陣任務から帰ってきた、南海太郎朝尊と水心子正秀は、豊前の部屋の前を通りかかったところで、いつもと様子の違う彼の様子に声をかけた。
「いや、ちっと文章を、何書こうか考えてんだけどよ、まあ慣れねえことはするもんじゃねえな。」
机上の白紙を前に、自分の苦手と対面していた豊前は困り気味に苦笑した。
1912