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    湯沢紫苑@真桐大好き

    @Hasan_The_First

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    🐉スタネタ、勢いだけで書いた

    雨露に濡れぬ純情恋歌Side 桐生

     所用があって神室町へ戻ってきた桐生は、空を睨みながら困惑していた。天気予報では曇りだった筈なのに、空から降り注ぐのは大粒の雨。駅までそう距離はない、傘を持たない桐生はこのまま濡れてしまおうかとビルから一歩踏み出す。しかし予想に反してその体が濡れる事はなく、どうしたのだろうかと空を見上げると頭上に大きな傘が広がっているのが見えた。傘なんて持っていないのにと周囲を見渡せば、そこには自分から顔を背けながらも傘を差し出す兄貴分の姿が。普段から兄貴分である真島から追い掛け回されている桐生は不思議に思いながらも、念の為にと真島へ声を掛けた

    「何してるんだ、真島の兄さん」
    「ああ!? そら、お前……たまには兄貴分らしく、弟分の面倒見てもええやないか!」

     少し意地張りに見える真島へ、「駅まで一緒に行かないか、兄さん」と誘ってみた。桐生が濡れない様に傘を傾けながら、一緒に歩き出してくれる姿は紳士的で優しい。惚れた欲目を抜いても格好良いと心ときめくが、決して本人には伝えまいと桐生は決意する。男二人、一つ傘の下で雨に濡れる夜の神室町を進んでいく。背の高い男達が相合傘で歩く姿は目立つのか、人波が勝手に避けていく。真島は桐生の隣で、何も喋らない。お互いに会話の糸口を掴み損ねて、二人揃って無言になる。それでも不快に感じないのは、隣にいるのが真島だからかもしれない
     桐生は真島が好きだ。人間としては勿論、色恋としても。これでも真島へ気持ちが伝わらない様にと、本人なりに隠しているつもりだ。自分が求められているのは【堂島の龍】としての強さであり、こんな女々しい感情ではない。駅まであと少し、そうすれば再び真島と会う事もなくなる。桐生は遙の為にカタギとして、真島はヤクザとしてそれぞれの街で生きていくのだ。もうすぐ駅へ着く、楽しい時間程あっという間に終わってしまう。感謝の言葉を伝えようと真島へ向き直った瞬間、彼がぽつりと呟いた。その言葉に桐生は目を丸くして、しかし喜びを抑え切れず、人目も憚らずに真島の胸に飛び込んだ




    Side 真島

     桐生が神室町へ来ると聞かされたのは、その日の昼過ぎの事だった。「真島さんに伝えたら、また桐生さんの所へ突撃するじゃないですか」と愚痴る大吾を恨めしく思いながらも、桐生との喧嘩を我慢するつもりは毛頭ない。そんな訳で真島が桐生の姿をようやく拝めたのは、彼が帰路に着いた頃だった。空を見上げる姿はつい先程降り始めた雨を見つめて、嘆息している。予報では降る筈ではなかったので、あの桐生の事だ。傘なんて持っていないのだろう。そして自分の手の中には、新品の傘が一本握られている。本当ならば桐生との喧嘩に使うつもりだったのだが、この時の真島の頭からはそんな考えがすっぽ抜けていた
     気付かれない様に近付きながら、彼が濡れない様にと桐生の頭上へ傘を差し出す。雨で濡れていない事に気付いた桐生が「何してるんだ、真島の兄さん」と声を掛けてきたので、たまには兄貴分らしく弟分の面倒を見たって良いじゃないかと尤もらしい理由を付けて誤魔化した。鈍感な桐生は真島の真意に気付かぬまま、駅まで一緒に行こうと声を掛けてくる。もとよりそのつもりだったなんて言えず、「しゃあないのう」なんて意地を張りながら歩みを進めた
     真島は桐生が好きだ。人間としては勿論、色恋としても。幾ら鈍感代表の桐生が相手とはいえ、バレてはならぬと本人なりに隠しているつもりだ。きっと桐生は真島が求めているのは【堂島の龍】としての強さであり、こんな女々しい感情を寄せられているなんて知りもしないだろう。伊達や酔狂で十数年ものの片想いをしている訳ではない。駅まであと少し、そうすれば桐生と会う事もなくなる。彼はあの幼い少女の為にカタギとして、自らはヤクザとしてそれぞれの街で生きていく。それが少しだけ、寂しかった
     もうすぐ駅へ着く、楽しい時間程あっという間に終わってしまうものだ。感謝の言葉を伝えようと桐生が向き直ったその時、抱えていた気持ちがぽろりと零れ落ちる

    「……帰らんといてや、桐生ちゃん」

     小さな呟きに弟分は目を丸くして、しかし喜びを抑え切れず、人目も憚らずに兄貴分の胸に飛び込んできたのだ。互いに寄せていた感情が同じだったと思い知らされて、真島は夢でも見ているんじゃないかと、恐る恐る桐生を抱き締めた
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