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    ちよど

    @tiyodo01

    萌えが書けない字書きの二次創作(主にワンライ)置き場。
    成人済。好きなものは帝都騎殺とわし様。他いろいろ。

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    ちよど

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    第6回アシュヨダワンドロライ参加作品。お題は「恋人」「デート」を使用させていただきました。
    1時間を大幅にオーバーしました。すみません。
    もうすぐクリスマスですね。

    ##アシュヨダ
    #アシュヨダ

    アシュヨダがおうちデートでサンドアートをつくる話「クリスマスのプレゼントにデートというものがしてみたーい!!」

     自称かっこよくて最高な恋人のわがままにアシュヴァッターマンが頷いてから数週間後のクリスマスイブの夜。三臨の姿で待ち構えていたドゥリーヨダナをアシュヴァッターマンはちゃんと迎えに来たのだった。
     ストームボーダーの廊下はクリスマスにはしゃぐサーヴァント達が何人も行き来している。
     サンタやトナカイの格好をしている者。白い大きな袋を運んでいる者。霊衣縫製室でわざわざ誂えたのであろうお洒落な服に身を包んだ者。顔が隠れるほど大きな花束を抱えた者までいる。
     誰しもが楽しそうに笑い合う中で、恋人らしく手を繋いでストームボーダーの廊下を歩きながら。ドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンが彼の部屋に連れて行こうとしていることに気づいて期待に胸を高鳴らせていた。
     ドゥリーヨダナは隣を歩くアシュヴァッターマンの横顔を盗み見る。
     精悍な横顔は自分から手を繋いだくせにうっすらと赤く染まっていた。
     恋人になったというのに、この男は生前のバラモン癖が抜けず。一向に先に進もうとしない。
     何度かそれとなく誘って見たが、気づかないか。気づいたとしても絶叫して硬直するかのどちらかだったのでドゥリーヨダナはフラストレーションが溜まっていた。
     だからこそ、ドゥリーヨダナはクリスマスのプレゼントに『デート』を要求したのだ。
     ドゥリーヨダナはデートというものをしたことがない。1度たりともだ!
     生前は妻帯はしていたがデートという概念がなく。今の恋人のアシュヴァッターマンとはよく出かけていたものの、それはデートとは言えなかった。
     そうして死後、ドゥリーヨダナは英霊となって知ったのだ。マスターの時代には恋人同士がふたりっきりで『デート』をし、いちゃいちゃとふたりだけの想い出とやらを作って楽しむのだと。

     恋人同士のふたりきりの想い出。

     それはもうアレしかあるまい!
     ドゥリーヨダナが今まで得られなかったそれを恋人のアシュヴァッターマンにねだるのは当然の事だった。
     彼らがサーヴァントとして顕現したカルデアは娯楽に溢れている。ストームボーダー内の設備だけでなく、シミュレーションルームではどんな状況も思いのままだ。
     そんな中でドゥリーヨダナの好みを知り尽くしている恋人がわざわざ自分の部屋に誘うのは。

    (初だ朴念仁だと思っていたが、とうとう覚悟が出来たということか!)

     期待はアシュヴァッターマンが自室のドアを開けた時に最高潮になり、ドゥリーヨダナは叫んだ。


    「砂ではないか──っ!!!」


     テーブルの上にはご馳走もプレゼントも無く、なんかエロっぽいものもなく。大きな四角いガラスの容器と、色のついた砂が入った筒のようなグラスがいくつも並べられていただけだった。
     期待を大きく外されたドゥリーヨダナがぐるり、と首を巡らせてアシュヴァッターマンを見ると彼は困ったように笑う。
    「まあ、地味だよな。」
     そう言ってアシュヴァッターマンは先にリビングに入りテーブルに近づいた。
    「地味以前に、おまえはわし様に砂遊びでもしろと言うのか?」
     遊びは遊びでも違う遊びがしたかったと。リビングに入ろうともしないでドゥリーヨダナが当てこすると、アシュヴァッターマンはなだめるように眉を下げる。
    「旦那はしたことねぇだろ。こういうの」
     言いながらアシュヴァッターマンは赤い色の砂が入ったグラスを持つ。
    「あんたは美味い食い物も、豪華なプレゼントも貰い慣れてるだろ?」
     確かに王子であったドゥリーヨダナは美食も贅も知り尽くしている。それを横で見ていたアシュヴァッターマンの指摘にドゥリーヨダナは反論せずにリビングの中へと足を進めた。
     近づけばテーブルの中央に置かれた正方形のガラスの器は10センチ程の厚みがあり、アシュヴァッターマンの胸の高さまであるのだと分かる。それは絵画のように額縁に嵌められていた。
     ドゥリーヨダナが黙って見つめていると。アシュヴァッターマンは片手でその蓋を外し、中に赤い砂をそっと注ぎ入れる。

    「だから、俺は旦那が貰ったことのねぇもんを用意した」

    「それがこの砂か?」
     正直、この真面目過ぎる恋人が暴走して何の変哲もないクリスマスプレゼントを持ってきたなら、野の花の1輪でも喜んでやるつもりだったドゥリーヨダナは鼻白んだ。
    (いくらなんでも砂はこの優美なわし様に相応しくないだろう)
     テーブルの縁に肘をついて明らかに興味を無くしつつある恋人に、今度は別の色の砂が入ったグラスを手に取ったアシュヴァッターマンは説明を続ける。
    「マスターの時代では、職人の真似事をするレジャーがあるって話だ」
     グラスの中でさらさらと傾く黄色の砂もアシュヴァッターマンはガラスの器に注ぎ入れた。
     器の中で赤と黄色。二種類の砂が重なり層を描く。
    「こうやって、色を重ねて好きな模様をつくる。そうすれば──たったひとつ旦那しか持っていないインテリアの出来上がりだ」
     唯一、という単語に強欲なドゥリーヨダナが体を起こした。
    「これはわし様が好きにしていいのか?」
    「あんたへのプレゼントだからな」
     頷いたアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは破顔した。

    「おもしろい! わし様に職人の真似事をさせるのはおまえくらいしかおらんぞ! アシュヴァッターマン!!」

     背中をばんばんと叩かれたアシュヴァッターマンが面映ゆそうに顔を赤らめるのに、ドゥリーヨダナは顔を寄せた。
    「──もちろん、わし様ひとりで作れとは言わんだろうな」
     砂を入れるガラスの器は一抱えはある大きさだ。アシュヴァッターマンのようにちまちま砂を入れるなら後何回で完成するのか、ドゥリーヨダナは想像すらしたくない。
     念押しに何故かアシュヴァッターマンは更に頬を紅潮させた。
    「あったりまえだ。旦那ひとりでさせられねぇよ」
    「ふふん、かわいい奴め」
     アシュヴァッターマンがドゥリーヨダナの飽きっぽさを知らないわけはない。だからこの大きさの容器を用意したということは、最初から自分も手伝うつもりだったのだろう。
     ふたりでひとつの作品を作る。
     『デート』がしたい!という要求に、そんなかわいい答えを返してきた恋人にドゥリーヨダナは機嫌よく砂の入ったグラスを手に取った。

    「ここはわし様の色を入れるのが礼儀というものだな」

     当然準備されていた紫色の砂をドゥリーヨダナは器に注ぎ込む。器の底で山を成していた赤と黄色の砂を、紫の砂が覆った。
     均一に均してしまうのはつまらないとグラスを軽く振れば簡単に起伏が生まれる。
     ある程度色を乗せて飽きたドゥリーヨダナが、次の色を探して周りに置かれたいくつものグラスを見回せば。赤、黄色、ピンクや緑、黒などのグラデーションの中、青と白の色だけが無い。
     宿敵パーンダヴァのカラーを省いたアシュヴァッターマンに顔を綻ばせてドゥリーヨダナは疑問を口にした。
    「この砂、どこから持ってきたのだ?」
     当然ストームボーダーには砂などない。魔術師に作らせたとしてもかなりの量だ。
     その問いにアシュヴァッターマンは床を指差した。
    「下から持ってきた」
    「下?」
    「地表から」
     異星の神により白紙化した地表は全て白い砂に覆われている。
     アシュヴァッターマンは黒く染められた砂が入ったグラスを持ち上げた。
    「シミュレーターでどんなものをあんたに見せたってそれは現実じゃねぇだろ。そんなモンは旦那に相応しくねぇ。──だから、本当に在るものを持ってきた」
     色鮮やかに英霊の影法師たちが戦うカルデアの足元で、屍のように漂白された地球に広がる砂を『本当に在るモノ』として選んだ男は、砂が入ったグラスを揺らした。
    「入れていいか?」
    「同じセリフをベッドの上でも言えたらな」
    「~~っ!!!」
     情事を連想させられて顔を赤らめたアシュヴァッターマンが勢いよく黒い砂を注ぎ込む。
     そこにドゥリーヨダナは手を伸ばし、アシュヴァッターマンの顔を引き寄せた。
     不意打ちのキスに、グラスから黒い砂が全て零れ落ちた。
    「……旦那、」
    「なんだ?」
     にやにやと悪戯を成功させた子供の顔で笑うドゥリーヨダナに、まだ頬に赤みが残るアシュヴァッターマンは目を眇めた。
    「これ、どうすんだよ。一度混じった砂は元に戻らねぇんだぞ」
     ガラスの器の中では黒い砂が明らかに不釣り合いな高さで山を作っていた。
    「ふん、そんなもの。どうとでもなるわ」
     鼻を鳴らしてドゥリーヨダナがガラスの器を鷲掴んだ。
     無造作にゆさゆさと揺らす。
     衝撃に砂の山は崩れ、なだらかな丘となった。
    「これでよし」
    「いや、よくねぇだろ」
     形はなんとかなったが、多すぎる黒い砂の量だけはなんとも出来ない。
     いっそ掻き出すかとアシュヴァッターマンが匙を探して器から目を離した瞬間、砂が注ぎ込まれる音がした。
     アシュヴァッターマンが振り返る。
     そこにはピンクの砂を注ぎ込んでいるドゥリーヨダナがいた。
     鼻歌でも歌い出しそうなドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンの視線を受けて笑う。
    「こういうものはライブ感が重要なのだ。いちいちやり直していたらキリがないぞ。それに──」
     ドゥリーヨダナがにやりと笑う。

    「この黒を見る度にわし様はおまえにキスした事を思い出すだろうな」

    「──敵わねぇなァ」
     苦笑してアシュヴァッターマンは、手に持ったままだった空のグラスをテーブルに置く。
     そんなアシュヴァッターマンに視線を流して、ドゥリーヨダナが要求した。
    「アシュヴァッターマン。さっきの赤い砂は残っておらんのか? ここはおまえの赤を再登場させるべきだろう? ん?」
    「ここに半分以上残ってるぜ。足りなきゃまた染める」
    「まさか、これぜーんぶ手作業で染めたのか?」
     目を見開いたドゥリーヨダナにアシュヴァッターマンは当然のことのように答えた。
    「あんたに贈るものだからな」
     ドゥリーヨダナが見回しただけでも砂の色の数は20色はある。ガラスの容器の大きさに合わせてそれなりの量の砂を均一に染めたのだとすれば、その手間はかなりのもののはずだ。
    「……わし様、おまえのそういうところ、ちょっと引くわぁ」
     言いながらもドゥリーヨダナはくつくつ笑っている。
     そんな彼に赤い砂のグラスを渡してアシュヴァッターマンは目を細めて笑った。
    「俺がこういう男だって、あんたはよく知ってんだろ?」
    「知っておる。知っておる。わし様のアシュヴァッターマンのことなら、わし様はなぁーんでも知っておる」
     子供のように答えるドゥリーヨダナに今度はアシュヴァッターマンが顔を寄せる。
     唇が重なった。
    「おっと、しまったなぁ」
     わざとらしく手を滑らせたドゥリーヨダナのグラスから赤い砂が全て滑り落ちる。
     ガラスの器の中で、黒い砂の次に存在を主張するようになった赤い砂にドゥリーヨダナは困ったように眉尻を下げた。
    「これではわし様たちがキスばかりしておるようではないか。なあ、アシュヴァッターマン?」
     同意を求められたアシュヴァッターマンは、目を伏せてコメントを控えた。
     頬の赤さを隠せていないアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナは笑いかける。
    「アシュヴァッターマン。黄色と紫の砂を持って来い」
     先程少し使ったがまだ充分に残っている2色の砂を手に取り、アシュヴァッターマンは眉を寄せた。
    「なんか、企んでいるだろ。旦那」
    「企んでいたのはおまえの方だろう?  一度混じった砂は元に戻せないのだったか」
     ドゥリーヨダナはアシュヴァッターマンが差し出したふたつのグラスから紫の砂だけを受け取る。
     そしてにんまりと笑った。
    「おまえの瞳の色と、わし様の瞳の色。両方を混ぜて入れれば完璧というものだ」
     ドゥリーヨダナがガラスの器の上でグラスを傾ける。
     それに、アシュヴァッターマンは自分のグラスを触れさせた。
    「俺でいいのか?」
    「おまえ以外に誰が居るというのだ。まったく」
     この期に及んで気後れした恋人にドゥリーヨダナは大げさに嘆息する。手元を動かせば、ふたつのグラスの縁が重なった。
     紫色の砂が流れ落ちていき、それを追うように黄色の砂が混ざり落ちていく。
     2つの色は溶け合うように色を絡めてガラスの器を満たしていった。
     さらさらと砂の音だけがリビングに響く。
     その沈黙を破ったのはドゥリーヨダナだった。
    「わし様、今、聖杯で調べたのだが。これはサンドアートというらしいな」
    「そうだ」
     別に隠すことでもないのでアシュヴァッターマンは首肯する。
     それにドゥリーヨダナは紫の瞳を煌めかせた。
    「マスターの時代では、結婚式に新郎と新婦がサンドアートを作るしきたりがあるとか」


    「ヴァァ゙!!!!」


     声にならない絶叫がリビングに響いた。
    「なるほど、それを知ってやっておったか。……かわいい奴め」
     素っ頓狂な声を上げ真っ赤になったアシュヴァッターマンが空になったグラスをテーブルに落とす。グラスは奇跡的に欠けもせず転がっていった。
     わたわたと彷徨っていたアシュヴァッターマンの手が、ガラスの器の蓋を掴んだ。
    「もう完成したよなっ! キャスターに保護の魔術をかけて貰ってくらぁ!!」
     アシュヴァッターマンの言う通り、いつの間にかガラスの器いっぱいに砂は満たされ、大胆な模様を描いていた。
     ドゥリーヨダナが喉で笑いながら退いてやると、アシュヴァッターマンはやや乱暴な仕草で蓋を閉める。
     耳まで真っ赤にしたままガラスの器に腕をまわしたアシュヴァッターマンに、ドゥリーヨダナは囁く。
    「早く帰ってこい。出来上がったそれをわし様にプレゼントするのだろう?」
     その言葉にアシュヴァッターマンが後生大事にガラスの器抱えて駆けていったのを見送って、ドゥリーヨダナはテーブルに置かれている砂が入ったグラスの縁をなぞった。
     地球の表面が砂に覆われたこの状態がいつまで続く分からないが、この白紙化が継続される限りあのサンドアートが消えることはない。
     例え、アシュヴァッターマンとドゥリーヨダナの霊基が消滅したとしても。
     アシュヴァッターマンがどこまで意図していたか分からないが、あれはふたりが居た証となるものだ。
     そしてそれはドゥリーヨダナが『デート』で欲しがっていた『ふたりだけの想い出』の寄す処に他ならなかった。

    (この記憶は座に在る本体には見せられんな)

     それはこれが『ふたりだけの想い出』であるという理由だけではない。
     あのサンドアートは二度と同じものを作れないのだ。
     別のアシュヴァッターマンと別のドゥリーヨダナが同じように砂を入れたとしても、タイミングと量、そして念のためにとドゥリーヨダナが揺さぶった衝撃を再現することは不可能だろう。
     
     ──それは正真正銘、唯一の。プレゼントだった。

     万が一この記憶を見たらめちゃくちゃ悔しがるであろう英霊の座にいる本体を想像して、ドゥリーヨダナはうきうきとリビングから出る。
     最高のプレゼントをくれた恋人にはとびっきりの返礼をしてやらねばなるまい。
     勝手知ったる恋人の部屋だ。何がどこにあるのかドゥリーヨダナは知り尽くしている。
     いくつか必要なものを取り出して、ドゥリーヨダナはバスルームに入った。
    (今夜ばかりは逃してやらん)
     シャワーの音は砂が流れる音によく似ていた。
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    ❤💜💞
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