夏の空より青い 季節は過ぎて、日差しが夏のそれになってきたある日、母親からお盆は帰省するのかと聞かれた瞬間、これだ、と閃いた。散々考えた結果「飯でも」と彼へメッセージを送ると、しばらく経ってから「○日なら」とだけ返事が戻ってくる。
受験勉強で忙しいのに面倒な人だなと思われていないか、とか、じわじわ腹の当たりが痛くなってきたところで、また着信の音がしてスマホを手に取った。
「久しぶりに先輩のお話が聞きたいです」
「……!」
勢いよく立ち上がったところで、テーブルに膝を打ち付け、斎藤はしばらくの間、呻く声と共に床に転がっていた。
約束を取り付けた当日、空は夏らしく良く晴れて、日差しは痛いほどだった。ジリジリと焼かれながらも駅前に向かうと、彼が待ち合わせ場所で待っているのが遠目に見えた。
下りの新幹線が到着したばかりで、駅前唯一の目印があるそこは人でごった返していたが、立香は斎藤にいち早く気がついて手を振ってくる。斎藤も振り返しながら彼の元へ向かった。
「早いね」
「今来た所ですよ……あれ、先輩、また背が伸びましたか?」
首を傾げながら聞いてくる後輩に対して、動揺する自分がいた。僅かに伸びた背に気がつくとは思っていなかったからだ。育ち盛りだからねと返すと吹き出している。
数ヶ月ぶりの後輩はやはり可愛かった。