不器用「リヒターさん、行ってらっしゃい」
そう言って見送った後、手の中に預けられた鍵が皮膚に食い込むのを感じた。
「第一級魔導士試験」
「ああ。その受験中、俺は店を離れる」
で、お前には店番をしてもらう。とカウンターの上に無機質な音を立てて鍵が置かれた。
「噂には聞いていましたが、やっぱりリヒターさんにもそう言うものに興味があったんですね」
「何か誤解を招くような言い方はやめろ」
3年に一度の機会が巡ってきたんだよ、とまるで気乗りしないと言うふうに言う彼に、参加するのを決めたのは自分なのに変な人だなと思いつつ、ふーん。と返す
「お前も受けるか?」
「うーん......いや、いいです。」
熟考された上で誘いを断られたリヒターは、特に驚きもせず「そうか」とだけ言った
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