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    itono_pi1ka1

    @itono_pi1ka1
    だいたい🕊️師弟の話。ここは捏造CP二次創作(リバテバリバ)も含むので閲覧注意。

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    itono_pi1ka1

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    Botw同居リンゼルと英傑の幽霊たちのなんちゃって後日談。一年が経った話。pixivより引っ越し。

    #リンゼル
    zelink
    ##CP
    #二次創作
    secondaryCreation

    一年が経った話「私のことを、覚えていますか?」
     目覚めた着の身着のままで世界中を巡った自分と同じくらいに泥だらけ傷だらけのまま、彼女は晴れやかに笑った。
     どちらを目指してかは分からないが、主の窮地に駆けつけてきた王家の白馬が、ぶるると鼻を鳴らして近付き、一定の距離を空けて止まる。
     ざわりと風が透き通った。
     聞きなれた声と見慣れない表情でこちらを振り替える彼女に対して「はい」とか「ノー」とか単純な返事では、ふさわしくないだろうと思ったので───……


     ──1つ、年が巡ってしまった。
     血のように紅い月が昇らなくなった新芽の季節から、長閑な村の片隅に居を構え、腰を据えるようになった今。窓を揺らす風は冷たいが、あちらこちらで再び春の兆しが顔を出している。役目を終えて、ただ一人のための騎士の真似事をして生きるのは、毎日が冒険譚の一幕だった日々に比べて静かなものだった。
    「ねえリンク!タイが曲がってるよ。いつもは姫様が直してくれるかもだけど、晴れの日くらいバッチリ決めていかなきゃダメじゃない」
     彼女に曲がったタイを直してもらったなんて甘酸っぱい記憶は、自分にはない。インパにこってりと騎士の身だしなみを絞られた記憶ならあるけれど。
     そうだったかしら、と首を傾げながらタイの指摘をしたゾーラの少女は次々と思い出話を始める。
     幼少時の自分が騎士団長の父に連れられて城中を回り、着せ替え人形にされかけた笑い話を、稀に酒を飲む度に父が話していたこと。ウツシエはまだ無かったけれど画家のスケッチが幾らか残っているらしいこと。何故か毎度毎度、ゾーラの里で宿泊の度に、夜明け前抜け出してはずぶ濡れになって不機嫌そうな顔をしていた自分のこと。
    「あの頃はどうしてか分からなかったけれど、小さなリンクは服を隠したかったのね。ウォーターベッドに跡は残らなくても、服を着ていたら濡れてしまった所に跡ができてしまうから………」
     話の雲行きが怪しくなったので、急いでゾーラの少女に直したタイを見せる。「今度は大丈夫、かっこいいよ」と笑って話を止め、途中かけにしていた髪飾りの準備を再開した少女に安堵しながら、自分も鏡の前に立って髪紐を手に取る。
     机上に伸ばした手が櫛に触れる前に、褐色の腕がサッとすり抜けていった。おや、と思うも、そのまま背後に人が立つ気配がしたので促されるままに椅子を引いて座った。
    「ああ、楽しみだねえ……。きっとおひいさまに似合うと思って選んだあたしの目に狂いはないよ」
     櫛を持って自分の髪に触れたのは、筋骨たくましい大柄な女性だ。立ち上がった自分よりもなお高い身長は少し羨ましい気もする。
    「そうそうリンク!あんた、惚けてエスコートがままならないんじゃあ、このウルボザの雷が落ちると思いな!」
     旅をしていた頃よりも長く伸びた自分の髪をキリリと縛り上げられて、思わず口がひきつった。鏡に写る情けない顔は、背後から聞こえる力強く品のある笑い声に眉を下げるしかなく、益々情けなくなった。
    「なあ相棒ォ!姫さんとお前の指のサイズって、どっちがどっちだったか?ったく、ハイリア人は何処もかしこも細っこくて見分けがかなわんぜ」
     椅子を片付けようと立ち上がりかけていたが、腹に響く大声にもう一度座った。ぐるりと振り替えって、岩のような両の手の上に一つずつ乗った指輪の片方を指差した。
    「おお、すまねえな。しかし、食えもしないちっこい石ころ飾りを喜ぶなんて、ハイリア人も変な種族だなァ」
     岩石を食用にするのは彼らゴロン族だけだ。変、と言いつつも、他文化を否定する気が無いことはわかっているので特に気にしないでおく。
     今度こそ立ち上がろうとして、今度は鋭い矢のような声に身体を縫い止められた。
    「おいおいリンク!せっかくの上等な絹仕立ての隣に並ぶってのに、こんな色のジャケットを着るって言うのか?冗談だろ?子供にだって指差しで笑われるよ、こんなの」
     息つく暇もなく散々な言い様で壁に掛かったジャケットを非難される。問題のジャケットと組み合わせられている衣服一式を、上から下までじっと眺めて首を捻ると、大層なため息をつかれた。
     リトの青年の嫌味なほどよく動く筈の眉がひそめられて固まっていたので、冷や汗を隠して笑顔で目をそらした。
    「……せめてこっちのヤツにしなよ」
     何か言い返したい気分にもなったが、種族全体として色彩感覚に優れると名高いリト族であるに加え、他者の機微に鋭い彼の言に間違いは無いだろうので大人しく従っておくことにした。
     開きっぱなしのクローゼットから彼が指し示したシックな藍色の上着を取り出して件の服と入れ換えるように壁に掛ける。彼は他の部分にも何か言いたげだったが、あまりに言われても自分には理解が出来ない。
     壁に出来上がりかけているコーディネートを適当に繕っておいて欲しいと頼み、顔を洗ってくると言って外の水場へと逃げた。文句は飛んでこなかったので了承してくれたことだろう。
     せっかくの髪が崩れないよう気を使いながらも、ばしゃばしゃと音を立てて水を顔にぶつけると、家の中から外へ出ただけなのに随分と静かになったような気がする。
     少し前までは、これが普段通りの静けさだった。
     そしてもうすぐ、あの賑やかしさは帰ってしまう。
     寂しいとは思うが、袖を引っ張るつもりはない。散々待たせてしまったのだ。きちんと物語にエンディングをつけなければ、彼らの信頼をふいにすることになる。舞台も役者もとっくに整っていて、あとは、勇気をもつだけだ。
     けれども、久しぶりに旅をした。世界を救う為に生きていたあのときほど長く途方もない旅路ではなかったけれど、今日このハレの日のためにハイラル中を巡り歩いたこの数日は、とても思い出深いものだった。
     だから彼らと別れを告げる前に、少しくらいは思い出に浸ってもいいだろう──……

     
     ──思い返せば、彼女は初めからこんな幽霊たちが集うのを分かっていたかのように、自分を一人にしてくれていたようにも思える。
     厄災との決着をつけた後、彼女と自分は数々の話し合いの末に、ハテノ村に買っておいた家に一緒に住むことにしていた。二人でハテノ村の家を中心拠点としながら、時折各地の神獣を調査に回り、縁故あるシーカー族が住むカカリコ村に顔を出す。そしていずれ滅びたハイラルの街を再び起こすことを目指して、当面の生活を送っている。
     平和な日常の中で、たまの楽しみに旅行をするような穏やかさだ。ハイラル王家の復興を最終目的とするとはいえ、すぐに何をどうこうできる問題ではないと分かっているので、ゼルダもようやく訪れた穏やかな暮らしを楽しんでいる。
     昨日も彼女は村の子供たちを連れて森へスケッチに行った。博学な彼女は物を教えるのも好きらしい。村の人々にも評判の青空教室だ。今でこそこうして別々に行動できるが、前は彼女を護らなければという思いに引っ張られて、100年前の騎士のようについて回っていた。
     「またついてこないでください、なんて言いたくありませんよ」と彼女に困り顔で笑われ、プルアには「古くさくなってんじゃないわよ」と呆れられ、インパには「シーカー族の忠誠は未だ尽きぬ、そこらの魔物に遅れをとる警護ではないわ」と鼻で笑われたことはいまだ記憶に新しい。
     そして今日の彼女はゾーラの里へ向かっている。
     魔物が減り、道中の危険が少なくなったため他種族の集落としては一番訪れる頻度が高い。また、100年前からの知己が多く、訪いの予定を報せるとわざわざ水路で迎えを寄越してくれる。流石に背に乗ることはないが、そのゾーラ兵たちが自分の代わりに彼女の護衛を勤めてくれている。
     今回も迎えが来るので、広い川辺に出るまでは送っていった。今日は誰が来るのだろうかと思ったらゾーラの王子御自らだった。公務の手空きにこっそりと役を代わってもらったらしい。近頃は王位継承に向けての本格的な準備と、槍の修練を新しく始めたと言っていた。
     ゾーラ王子・シドは普段から携えている剣を扱う戦闘スタイルだ。オクタを倒した武勇伝など中々の腕前で槍を新たに修める絶対の必要は無いが、神獣の暴走を止め、100年前を生きた自分達と会い、槍を通して姉と向き合うことに決めたらしい。光る歯が眩しい相変わらずの笑顔はゾーラの里で姉の像を眺めていたときより清々しいものだった。



     シドに彼女を託して、ハテノ村の家へと戻った自分は庭いじりをしている。旅をしていたときから何度か挑戦していた野草花が、ようやく根付きそうな気配を見せているのだ。分布もバラバラ、あまり生態のわかっていない花で、種を探して蒔くよりは株を移して根付かせた方が可能性がありそうだ、という結論に至った。せっかく庭があるのだから、と鉢ではなく自宅前の庭を有効利用している。
     既に植わっている草花を傷つけないように雑草を抜いていくも、強くなってきた陽射しが肌を指す。吹く風はまだ冷たいので汗はかいていない。
     黙々と進めていると背後からリスが手元を駆けていき、避けようとして草刈り用の鎌が手の甲を引っ掻いた。どうやら草を抜くときに掘り返された土の中に、冬の貯金があったようだ。リスは少し離れた小石の上で木の実を持ってじっとこちらを見ていたが、目が合うと林の方へ逃げてしまった。
     何だか気が抜けて、そのまま地面に座り込む。少し休憩するのもいいだろう、と伸びをして、手の甲に赤い筋が入っていることに気づいた。さっきの鎌で出血していたらしい。些細な傷に医療具を取ってくるのも面倒なので、雑に血を拭う。
    「傷口を泥でこすっちゃだめだよ。ばい菌が入って、傷が酷くなるの」
     血を拭おうとした手より先に、傷に被せるように赤い色が広がった。鱗に覆われた腕だ。触れられている感覚は無いが、ひんやりとした感覚が伝わってくる。赤い鱗が退いたときには、きれいに傷が消えていた。
    「ありがとう」
    「どういたしまして」
     慣れた感覚で礼を言ったが、どうしてゾーラの少女ミファー、正確にはミファーの霊魂が──いるのだろうか。
     自分の記憶では、100年前の厄災復活に際し命を落とした彼らは100年後、霊魂となって留まり、自分に各々の力を譲って役目を果たしきり、消えたはずだ。
     禍々しい猪の咆哮が途絶え、平原中に姫しずかが群生したあの時から。加護とでも名付けるべき受け取った能力も使えなくなり、宝玉はただの玉になった。それまで漠然と感じていた彼らの気配も全て消え去り、御祓衣装のままの彼女を村落へ案内するまでの野営が、ひどく寒々しく感じられたことを覚えている。
     あれきり彼らには二度と会えないものと──そもそも死者には会えないのが普通だが──もう会えないのだと、思っていた。
     そんな疑問を見抜いたように、ふふふ、と涼やかな少女の笑い声がする。
    「期限付きで戻ってきてるの。先祖の霊を呼ぶお祭りがあるでしょう?」
     驚きはしないが戸惑った。
     少し、季節がずれているのではないだろうか。ハイリア人と他の種族では、そういった催し事にも差異があるのだろうか。でも、何のためにここへ?役目を果たし、思い残すことが無くなったからこそ、彼らは消えたのではなかったのか。
    「季節がめぐって、あの人はずっと待ってる。私たちも見届けたくて来たの」
     この幼馴染が“あの人”と呼ぶのは一人に対してだけで、あえて姫様という呼称を使わないのは、そこに様々な思いを込めているときだ。
    「リンク。何を言うか決めた?」
     意図を察しきれずに答えあぐねていると、ゾーラの少女はすっと家の前の川淵へと歩いていった。
    「まだ、悩んでいるなら……大妖精さまの祝福をお願いするといいと思うよ」
     少し高さのある河岸から、この少女にしては珍しい、いたずらっぽい笑顔を浮かべて、次のまばたきの間には姿が消えていた。



     庭先で懐かしい影を見て数日、今日はゴロンシティに訪れている。
     ルーダニアの調査のためだ。魔物は減ったとはいえ、火山地帯であるために陸路を行かなければならないハイリア人は大変な注意が必要になる。尤も、空路を行けるリト族は過度の暑さには弱く、滅多に近付かない。極めて稀に訪れる猛者も、灰が舞う火山地帯を飛んで行こうなどと無謀な挑戦はしないらしい。
     ストレッチで身体を伸ばした後、あらかじめ用意しておいた火消し薬を飲んでいると、ゼルダが同じ炭のような色の火消し薬のビンを抱えて、ヒガッカレ饅頭の“おおあたり”を食べたような顔をしていた。
     まだ中身の減っていない手元の炭色ビンと自分の顔をちらちらと見比べて、意を決したように蓋を開ける。そしてすぐ後に肩を落としてため息をつき、馬宿の天幕に消えていった。
     ──そういえば火消し薬は本来塗り薬であると、通りすがりの旅人が言っていた気がする。
     そんなことを思い出したのはルーダニアの調査を無事に終えて、ゴロンシティ唯一の宿屋で夜を越そうと石造りの台帳に名前を刻んでいた時だった。
     ユン坊がウチに泊まっていけばいい、と言ってくれたが、彼の家も中々定員ぎっしりなので丁寧に断っておいた。
     ユン坊といえば、最近は色々なことに何でも挑戦しているらしい。臆病がなくなったわけではないが、カタツムリの殻のように丸まることも少なくなったとか。最近はデスマウンテンから少しずつ外へと足を伸ばしているらしく、馬宿の犬と遊んで楽しかった、と嬉しそうだった。ユン坊は彼の先祖よりも豪胆になるかもしれない。
     ゼルダに取った部屋、というより石の寝床を案内した後、少し夜風に当たってくると言って採掘場へ向かった。帰り道は心配は少ないとはいえ、準備するに越したことはないと、火消し薬の予備を作るためのヒケシトカゲを捕まえたかったのだ。
     夜になっても、火山道の坂を下るごとにぶわりぶわりと前髪をはね上げていくのは熱風だ。ばらつく前髪に目を瞬きながら歩いていると、するりと誰かが横に並んだ気配がした。
    「よう、ルーダニアは調子良さそうか?」
    「すっかり落ち着いてるよ」
    「そいつは良かった。いや、元気がないなら良くねえのか?」
     首をひねった後、いや大丈夫だな、と自分で納得した様子の、白い毛髪を携えた大柄のゴロン族は、マグマが赤く透けるの夜闇の中で青白く揺らいでいた。まるでちょっと古馴染みに再会したような気安さだ。変わらない。岩のような体躯が揺れる姿は、のっしのっしという足音が聞こえてきそうなのに、それが無いことが少し寂しかった。
    「ミファーには会ったか?ならいい。俺はちょおっと相棒に頼み事があってな。大したことじゃねえ、ちょっとした宝探しだ」
     ゾーラの少女が“私たちも”と言ったからには他の仲間たちも戻ってきているのだろうか、とは考えていたので、やはり驚きはしなかった。目の端を通ったヒケシトカゲが気になった。
    「ルーダニアから少し左に降りた崖沿いにな、月夜に光る場所があるんだが、これが夜光石とはまた違うんだ。きっと特別なものがあるに違いねえ」
     わかった。と頷きながら、青白い足元に潜んでいるヒケシトカゲに飛び付いた。この1匹あれば十分だろう。
    「たぶん相棒に必要になるからな」
     話を遮ったことを詫びながら砂を払い、立ち上がったときには光の残滓が消えるところだった。
     月夜というなら、夜のうちに宝探しを終えなければならない。もう一日泊まってもいいが、彼女を付き合わせるのも上手い理由が思い付かないのだ。
     少し思案して、装備を変えることにした。夜を素早く駆けるには丁度良いものがあったはずだ。──人には余り見られたくないけれど。



    「珍しい石ですね」

     そう言って彼女は青とも緑ともつかない、うすい浅葱じみた色の透明な鉱石をしげしげと眺めている。
     この鉱石こそ月夜の宝探しの戦利品だ。夜光石とも違う、と青白いゴロン族が言っていた通り、月夜には真っ白に光っていた。丁度崖に挟まれており、高いところから見下ろさなければ分からないところに、光る鉱床があったのだ。きっと彼もルーダニアの上から見つけたのだろう。

    「見たことがない」「この辺りでは詳しい人間がいませんよ」「ゲルドの宝石匠なら、知っているかもしれません」
     物珍しさからか、寄ってきていた商人たちが口々に言うのを聞いて、彼女が顔を上げた。
    「リンク、ひとつ尋ねてきてくれませんか?」



     探求心に輝く翠の目に逆らえず、今はゲルド砂漠のオアシスにいる。
     デスマウンテンを降りた後、彼女とは双子山の馬宿で別れて、自分はゲルドへ、彼女はカカリコ村へと向かった。最近はこのオアシスにまで貸しスナザラシの出張店舗が来ていて、ありがたく利用させて貰うことにした。
     ゲルドの宝石職人、ジュエル………もとい、アイシャの話では、産地の定まっていないとても珍しい鉱石で、どこかの王族の証になる装飾に使ったり、古くは対の指輪に嵌めつけて聖なる儀式を行うなど、夢のある由緒と謂れを持つらしい。
     随分と憧れがあるようで、熱心に伝説を語ってくれた。ぜひ、指輪を作らせてはくれないかと、興奮ぎみに頼み込まれたので押し流されるように了承した。
     鉱石の名前と附随する伝説と、それだけ情報があれば彼女の好奇心は一先ず鎮まるだろう。研究に要りようならば改めて鉱床を叩きに行くまでだ。
     それに、原石のままでも十分に美しいこの鉱石が、精錬されてどうなるのかを見てみたい気持ちもあった。
     完成までに3日ほどかかるそうなので、リトの行商人を掴まえて手紙を頼み、宿を取った。砂漠越えの疲れはあったが、マッサージは遠慮して早くに寝床についた。
     そのまま暫くは眠りこけていたが、砂漠の夜の寒さに身体を揺すられ目が覚めた。
     外の調理場でホットミルクでも作ろうとベッドから立ち上がって、ふと窓の方を見ると背の高い女性が月を見ていた。月明かりにくっきりと浮かぶ引き締まった筋がよく鍛えられたゲルドの女戦士であることを示していた。
    「おひいさまは元気かい?」
    「とても、楽しそうに暮らしているよ」
    「あんたは?」
    「元気だよ」
     そうかい、と言って女戦士はばさりと豊かな赤髪を揺らした。
    「合言葉を要求してくる酒場の下に、モグリの服屋があるだろう。そこへ行って取ってきてほしいものがあるんだ」
     女戦士は聞きたいことは聞いた、とばかりに直球で用件を伝えてきた。
     件の服屋についてはよく知っている。ヴォーイ用の服を売っている薄暗い店だ。ヴォーイの服を売ることは、違反、では無いだろうが、その理由を考えると微妙なところだ。元ゲルドの長が知っていて放置していたのは少し意外だった。
    「ああいう影も少しは残して利用するのが統治のコツだ。手綱を振り切られちゃ危ないけどね。いつかはあの娘も色んな裏や表を見なくちゃいけないだろう」
     あの娘。一番思い当たるのは彼女のことだが、多くの人の信頼を請け負ってきた元ゲルドの族長の視線の先には、多くの相手がいることだろう。今回のあの娘は、幼くしてゲルドの玉座に座るあの少女のことだろう。月を見て、しばらく互いに黙っていた。
    「店主に“ウルボザの使いだ”と言うんだよ。それから、受け取った物は開けずに妖精の泉に持っていくんだ」
     続いた指示に頷いて、着替えに袖を通した。まだ夜は浅い。行くならば早く行った方がいいだろう。寝台の上に、出掛ける旨の書き置きを残して剣を背負う。女装が崩れていないか鏡で確認して、ドアの前に立つ。
    「頼んだよ」
     背後から声をかけられて振り替えると、柔らかく笑った女戦士が手を振って窓の外へ消えた。



    「シルバールピーだ」
    「シルバールピー?」
    「代え金だよ」
     件の店でウルボザの使いだ、と言うといつもの店番が奥にひっこみ、会ったことのない赤い目の老婆が出てきて、そう言った。
     代金を要求されるなら、先に言ってほしかったと思いながらシルバールピーを差し出した。服の価格帯としてはシルバールピー1つで済むなら安いのか。確かに、とルピーを受け取った老婆は一抱えもある大きな箱を取り出した。
    「これを受け取ったら、取引の成立だ」
    「取引?」
    「いまのお嬢ちゃんが私らに気付いたら、あんたが取り成す。そういう取引だよ」
     なるほどなと頷いた。元ゲルドの長は彼女と、加えて未だ若いゲルドの族長の荷物の一部を寄越してきたらしい。代金や取り決めは全てウルボザが仕切っていて、このシルバールピーは符丁に過ぎないのだろう。英傑の間でも人一倍、皆の様子に気を配っていただけに、彼女らしい頼み事だと思った。



     大事に箱を受け取って、その足で妖精の泉に向かうことにした。スナザラシを借りてシーカーストーンのマップを開く。目的地を確認しながら砂嵐を掻い潜る中で、ゾーラの少女も大妖精のことを言っていたな、と思い出した。
     人とは感性を異にした独特のオーラを持つ巨大な花の前に立つ。しばらくして、ハァァ~イ!と張りのある声が響き、水飛沫と共に大妖精が現れた。
    「今日は何のご用かしら~ン?……あら」
     頬杖をついて視線を合わせた大妖精は手元の箱を見て意外そうに目を丸くした。
    「あら、あらあらあら。もうそこまで来たの?おめでたいわねえ!相手は誰かしら?ああ、言わなくてもいいわ、分かるもの。そうねえ。しばらく会わない内に、ねえ!」
     こちらが何か話す前に、勝手に話が進められていく。いつも陽気な気配はするが、今日は輪をかけてかしましい。
    「でも大妖精の祝福をかけようなんて、中々古風ね。ああ、あのゾーラの娘が言ったのね。もうそんな信仰を覚えているのは、長命のゾーラ族くらいだものねえ」
    「大妖精の祝福って何ですか?」
     ゾーラ、という単語が出てきて漸く口を挟むことができた。くねくねと動いていたのをピタリと止めて、大妖精は再び手を口許に当てて、あらあらあら?と目を瞬かせた。
    「そりゃあ、アナタ。真っ白のドレスに花嫁の幸福を願う、大妖精の祝福に決まってるじゃない」



     完成した指輪を持ってハテノ村の自宅へ帰ると、彼女が食事の用意をしているところだった。精錬で余った欠片を渡して、鉱石について集めた話を聞かせると、興味深そうに書き付けていた。何となく指輪を見せるのは今では無い気がして、その日はそのまま休んだ。
     次の朝、彼女はプルアのいるハテノ研究所へと出掛けていった。研究について尋ねたいことがあるらしい。自分はといえば、特に彼女に付き添う予定や思い立った用事が無ければ村の便利屋として一日を過ごしている。
     この日も染色材料の採集や水汲みを手伝い、日暮れごろに最後に頼まれた薪割りを終えて家に帰ると、まだ彼女は帰っていないようだった。
    「やぁ、おかえり“便利なハイリア人の兄ちゃん”?」
     代わりに、他人の家の中で堂々と席につき、テーブルの上のイチゴを無断で摘まむ狼藉者のリト族の青年がいた。
     店で見かけて、今晩はケーキでも作ろうと買い付けたイチゴを籠に入れて机上に置いたのは確かだ。ただ、断りもなく勝手に食べてもらうためではないのも確かだ。一応、ただいま、と返事をしながらも自分の表情が微妙な引き吊りを起こしているのを感じた。
    「うん、美味しい。ヘブラ産を選ぶセンスは中々いいね。でも、惜しいな」
     歪んだ表情を見て何故か機嫌を良くした様子のリトの若者は目を細めた。自分は、なぜ霊魂が物を食っているのだろう?という純粋な疑問と相変わらずの仲間の態度に白い目を向けた。
    「ヘブラのイチゴが季節を問わず名品なのは間違いないけど……この時期は、最も貴重なイチゴが熟すんだよ」
     まったく応えた様子がなくそう言いながらリトの若者はまたイチゴに手を伸ばす。なんというか、籠の中身が半分くらい減っているんじゃないだろうか。
    「ゲルド高地・オルパー台地にね、日中ずうっと陽が当たる場所があるんだけど、丁度そこに珍しいイチゴが自生しているんだ。遮る物無く、たっぷりと陽光を浴びた分、市場に流通するどんなイチゴより甘い」
    「それで、何の用なんだ?」
    「君が、あの姫のために、ケーキを焼くんだろう?」
     意図的に無視したのかは分からないが、質問を質問で返されて思わず頷く。
    「じゃ、もう分かってるだろ」
    「……」
    「僕ももう少し早く、君がバカだってことに気付いていればよかったな」
     言い聞かせるように区切って問われたことの意味を考えて、最後の方の言葉は聞き損ねた。じっと顔を見る自分に対して、わかったわかったと言うように、リトの若者はひらひらと翼を振った。
    「他の奴らと違って、僕はただ発破をかける役だからねぇ、強いて言えばこうして君と喋ることが第一目的かな」
    「第一?」
    「誰かが鈍いからね……もう1つは……まぁお楽しみに」
     勿体ぶったリトの若者はもう一つイチゴを摘まんだ。情報料のつもりなのだろうか。そろそろ勝手にイチゴを食べられていることを怒るべきか悩んでいると、そうそう、と思い出したようにリトの若者は付け足した。
    「ここで甲斐性見せなきゃ男じゃないぜ?感謝してくれよ!」
     ひゅるりと音を立てた向かい風に目を瞑ると、あの耳に残る笑い声を残してリトの若者は消えていた。



     彼女が帰ってくるまで、まだ時間があるので、オルパー台地のイチゴとやらを確かめにいくことにした。
     歩いていくには遠すぎるので、シーカーストーンのワープ機能を起動する。最近は滅多に使っていなかったからか、少し操作に手間取った。厄災との戦いでの反省から、平穏な暮らしに過ぎた技術は必要ないだろう、と彼女とシーカー族の研究者が話し合って、古代技術の結晶は少しずつ解体されている。解体することで復興に役立つ新しい技術の応用へと繋がる部分もあるのだと、笑顔で話していた。
     自分が持つシーカーストーンは厄災に立ち向かう勇者のために用意された物であるから悪用されることもないだろうと放置されているが、あまり使わないようにしている。ほとんど自分だけにしか使えない機能は、ずるをしているようで気後れするし、彼女と共に行動する今は、ほとんど使う意味がないのだ。
     目的地をクイタッカの祠にセットして目を瞑る。
     瞼を開けた途端、西日の眩しさに目をそばめる。きらきらと光を反射する雪の上を歩いていくと、なるほど、大きく赤く色づいたイチゴがてらてらと輝いていた。一粒口に入れると、みずみずしい甘さと、弾けそうな見た目に反してしっとりとした食感が広がった。食べられた分を取り戻すようにイチゴを摘みながら、あのリトの若者は物言いは何とも不遜だが、嘘は言わないことを思い出した。
     帰ってくると、丁度彼女も家へ入ろうとする所だった。取ってきたばかりのイチゴを見せて、今日はケーキを作るつもりだと伝えると分かりやすく喜んだ。
     中に入って机の上にも残るイチゴに目を瞬いていたので、そちらはジャムにする、と伝えるといそいそと外着を片付けて鍋の準備を始めた。自分も彼女に倣って、手始めに手を洗った。
     中々上手く出来上がったケーキは好評だった。ゆっくりと熱いお茶を飲んで、食器を片付けるのは問題なかった。順番に風呂を済ますまでは大丈夫だった。問題は、そろそろ就寝しようと2階へ上がったときに起こった。
     まず、壁と窓側に離れていた筈の寝台がくっ付けられていた。
     まぁ、と首を傾げる彼女には、掃除のときに戻すのを忘れたのだと慌てて言い繕った。うっかりですね、と彼女は納得してくれたが、もちろん今日は2階の掃除をした覚えはない。
     次に、寝台自体が問題だった。今まで使っていた寝台は、それほど高くもないが安くもない、至って普通の寝台だった。それが全て最高級羽毛ベッドに変身していた。布団を捲ると、安心安全高品質のリトの羽毛、としっかり刺繍で明記されていた。
     良いベッドで眠れるのは自分も彼女も嬉しい。戸惑いはしたが、良いことと言えなくもないかもしれない。
     最後が一番の問題だった。寧ろコレさえなければ、困惑はしても、素敵なサプライズだと良い話で終わっただろう。
     枕の下に何か、と気づいたのは彼女だった。
     何だか嫌な予感がして彼女を止めて代わりに確認した。
     出てきたのは、小さめの水筒、丸く出っ張りのあるうすいゴムがいくつか、半液体状のジェルが入ったビン………目に入った瞬間に階下に投げ捨てた。彼女の目には写らなかったようで幸いした。
     明日の朝一番に処分しておくことにして、突然の奇行を心配する彼女を宥め、なんとか各々の床についた。
      軽く身体を包み込む布団の中で、奴の最後の言葉を思い出した。
     あのタイフーン野郎。低くごちて枕を殴った。ふかふかの低反発が拳を受け止めた。今ごろ大笑いしていることだろう。感謝してくれよ?と言われた言葉通りにお礼参りに行くことを決めた。この間、テバに相談を受けていたのだ。“そろそろリトの子供たちに歴史の勉強を始めるんだが、最近、リーバルさまの日記が見つかったり神獣が暴れたり、あったろう?きっちり詳細が分かるまでやめておいた方がいいかもしれん”と。
     数多のお願い依頼ご相談を解決してきた公平敏腕アドバイザーとしてこう申し上げよう、テバ。“色々あった今だからこそ、きっちり教えるべきだ。寧ろ日記を読み聞かせるくらいした方がいい。そう!暴走した神獣への恐怖心を減らし、臨場感を持たせるために、メドーの前で英傑リーバルの日記を読み聞かせてあげるといい!”と。
     ──加護の宝玉は、念のために引き出しに眠らせておいた。



     ──1つ、年が巡ってしまったのだ。
     厄災を打ち倒し、共に100年越しの戦いを終えた彼らの視線を感じながら、彼女と再会して。
     聞きなれた声と、見慣れない表情でこちらを振り向いて問いかける彼女に。「わたしのことを覚えていますか?」と問いかけた彼女に。
     自分は──答えを遅らせたのだ。
     わざとでは無かった。駆け抜けるような旅で蓄積した疲労が、ふっつりと意識を奪って、草原に倒れた。目覚めた時にはカカリコ村のインパの家で、寝台の側には泣きそうな顔の彼女がいた。それからは復興や先行きの相談など目まぐるしく動いていき、神妙な顔で、飛ぶ花びらを捕まえた手の中をそうっと見せるような話を切り出せる状況に無かった。
     生活が落ち着いてからは、何だかタイミングを逸してしまったようで、またまた切り出せなくなった。そうして、1つ、年が巡ってしまった。
     わざとではなかった。しかし、きっと倒れなくても、自分は答えを返せなかっただろうという確信がある。4人に期待を押し付けられてようやく、今、伝えるべき言葉を見つけたのだから。
     ミファーが見届けるためと言ったのはそういうことだ。
     ダルケルが必要になると言ったのはそういうことだ。
     ウルボザが頼んだと言ったのはそういうことだ。
     リーバルが分かってるだろと言ったのはそういうことだ。
     ──庭に花が根付いた。
     1年をかけて、彼女が好み“自分のようだ”と言った姫しずかの花が、根付いた。
     一番大きく咲いた花の横にある、どの花よりも真っ直ぐと身体を伸ばした小さな姫しずかを一輪、摘んだ。



     花瓶に花を活けた。家の前の吊り橋が軋む音を聞いてミルクを入れた鍋を火にかける。今日のゼルダはカカリコ村で染め物の手解きを受けるのだと言って出掛けていった。
     ドアが開く音を聞いて蜂蜜を入れ、おかえり、と声をかける。ぐるりと鍋をかき混ぜながら二人分のカップを出す。
     ゼルダは外着を片付けて、いつもの席についた。充分に温まったミルクをカップに注いで、テーブルに置く。簡単に鍋の始末をし、向かい合うように座った。
     ゼルダは両手でカップを持ち、一口、口をつけてからほう、と息をはく。自分は片手でカップを持って、言葉を押し留めるようにゆっくりゆっくりと飲む。 
     テーブルの真ん中に置かれた姫しずかに視線を向けて。ゼルダは口を開いた。
    「……わたしのことを、覚えていますか?」
     互いにカップを置いて真っ直ぐに目を合わせた。あのとき答えられなかった言葉に、今度は応える。
    「“私”は、ゼルダ姫という気高く聡明な王女を知っています。国を憂い、誰よりも努力を重ね、研究熱心な姫君でした。近衛騎士としてお仕え申しあげ、多少の諍いもありましたが、信頼し合える良い関係を築けたことは誇りです」
     ゼルダは静かに待っている。
    「“俺”は、ゼルダという女性を知っています。学問が好きで、研究事に没頭すると周りが見えなくなるほど夢中になって、目を輝かせる人です。時折子供のように笑うところが可愛らしいと思うし、まもりたいとも思います」
     ゼルダは少し顔を赤くして、平気な顔をして待ち続ける。
    「俺は………」
     少し言い淀んで、目をそらした。温いミルクを一口飲んで、瞬きする。
    「俺は、貴方の声を覚えていました。きっとこの人の声は間違わない、大切な人の声だと覚えていました。俺は、貴方の姿を、貴方との記憶を思い出しました。広場で、木々の中で、丘で」
     俺は目を閉じた。記憶はいつも目蓋の裏に焼き付くように思い出されて、目を開けるとぱっと消えてしまう。だから目を閉じることが多くなった。
    「でも、それは。思い出す度に、俺の中の貴方が鮮明になる度に、俺はやはり覚えていなかったのだ、と、わすれてしまったのだ、と突き付けられるんだ」
     ゼルダは目を伏せた。
     俺は机の下で拳を握った。汗で少しぬめった。
    「だから…………俺は貴方を知りたい」
    「それは?」
    「忘れてしまったよりも多くの、俺にとっては新しい貴方を知って。覚えていない貴方の姿をなぞるのではなく、今目の前にいるゼルダを変わることがなかった大切な存在として覚えていたい」
     ゼルダは穏やかに顔を上げた。
    「貴方はやはり口下手なんですね」
     その表情に息を呑んで、呼吸を止めたまま沈黙が続いた。どちらともなく互いに笑いだして、あのときは流れなかった涙が出るまで、笑い続けた。
    「ありがとう」
    「こちらこそ、ありがとう」
     おやすみの代わりに、そんな挨拶をして、ほわほわとした眠りについた。
     その晩は夢を見て、見たことも無いはずの幼少期の彼女と、白い立派な髭を蓄えた老人が並び立ち、こちらへ向かってくる彼女とは反対に、老人は一瞥して霧のように消えてしまった。



     次の朝、俺は寝坊した。
     先に起きたらしい彼女はまた、カカリコ村へ向かっているという書き置きがあり、クローゼットに置いていた箱が消えていた。俺は姫しずかの花瓶の水を変えて、歯を磨いて顔を洗って、庭の水まきをして、家に入ったところで、突風に巻き上げられた壁掛けの弓が脳天を直撃してぶん殴られた。
    「まさか、ここまで唐変木だったとは僕もお手上げだよ」
    「だから言ったじゃない、ちゃんと準備しなきゃダメだよって」
    「まぁ、勝負は今日で延長戦だ。がんばれよ!」
    「しゃきっとしな!今からが忙しいんだから!」
     そうして、あれよあれよと力の強い幽霊たちに身支度をされている。ミファーに身なりを正され、ウルボザに髪をすかれ、ダルケルに贈り物の確認をされ、リーバルに服装のダメ出しをされている。
    「あのねえ、普通あそこまでいったら言うことなんて一つだろ!君が、お膳立てされまくったのが決まり悪い、なぁんて考えてちゃあねえ、姫も僕らも死んでも死にきれないってものなんだよ!」
    「おひいさまを勝手に殺すんじゃないよ」
    「でも、これだけバッチリ決めて伝えるなら、きっと素敵な思い出になるよ」
    「なに、終わりよければすべて良しってなぁ!」
    「ともあれ、だ!」
     ウルボザが、ぴかぴかに支度を終えた俺の背中をバシリと叩いた。
    「いってこい!男前!」
     仲間たちの視線に押されて、俺はドアを開けた。質量的には一人なのでシーカーストーンも使う。目的地はカカリコ村。身体が蒼くほどける前に、長年の相棒たる剣をひっつかむ。
     ──1年が経った。
     100年前から始まった戦いは100年後にリスタート。100年前に始まり損ねた恋は記憶の海に沈んだ。
     1年前に始まり損ねた愛は、いま、ようやくスタートラインに立った。右手には水色の花束、左手には世界に一つの贈り物。そして背には伝説の剣。勇気が湧かなきゃおかしい、完璧な装備。
     ──俺は今日、告白をする。

    「101年前から、あなたが好きなんだ」




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