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誇り高き赤月帝国の五将軍に名を連ねるテオ・マクドールは、その肩書きに霞むことない実力を有していた。軍を率いればまるで己の手足のように誘導し、戦況を一変させる。敵と対峙すれば腰に差した剣一つで敵兵隊を言葉の通り切り開き、懺悔も聞かぬままねじ伏せていく。味方で良かったと心底感じるほどの軍人であったが、決して狂人ではなかった。常に冷静な思考を巡らせており、周囲には窺い知れぬこと先々のことまで考えている様子であった。
それでも、主の言動や行動を疑うなど、一抹すらも出でたことがない。彼の一挙一動は常に考えがあってのことだったからだ。帝国の端々で反乱分子が湧いていると聞いたときでさえ、どうしてそのようなことができるのかと、行動理由に対し疑問しか湧かなかったほどだった。
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