地下足袋旋風脚!「五条くんだよね?夏油傑です。よろしくね」
肩から下げた大きなボストンバッグの重みを感じさせない爽やかな笑みには、敵意も威圧感もない。それなのに、俺は少しだけ構えていた。いや、あれは、恥ずかしながら、怯んでいたというのかもしれない。だから自然と、ナメられたくない気持ちが出てしまった。
人生で初めての「同級生」というやつは、てんでおかしな格好をしていた。裾に向かって広がるボンタンをすらりと履いた下には地下足袋が覗き、長髪を雑に団子にしたうえで大ぶりの拡張ピアスを見せつけている。
どこからどうみても、“輩”だ。
夏油傑との初対面は四月一日の朝、ピカピカの制服に身を包んだ傑と、寝巻きで歯を磨いていた俺とが出会ったのだった。堅苦しい家と距離を取りたい一心で「四月の入学まで待ってられるか!」と通常より二週間早く入寮できるように取り計らってもらって、既に寮生活を始めていた。
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