ヴァイ墓どこかやつれたように見える風貌の男は今日も対価を手に部屋を訪れる。
「今日も音楽を聴かせてほしい」
握りしめたそれは一晩の酒代にしかならないような端金だったけれど、それは確かに大金だった。
仕方なく弦を持ち上げると彼は安心したように息を吐き出し椅子に腰掛ける。
今日も地獄に、音楽は止まない。
きっかけという程のものではないが、それが話しかけてきたのはとあるゲームの終了後だった。
足早に自室に帰ろうとする私をあれが呼び止める。
これが言うには、ゲーム中聞いた私の音楽が酷く心地の良いものだったということらしい。
一体何を言っているんだと無視して踵を返そうとした、が──私の袖を掴んだその顔があまりにも必死で滑稽だったものだから、話を聞いてやることにした。
2019