「…誰だい?君は」
よく見知った顔がいたので、早足で駆け寄った。
腕を掴んで、それからホッとしたんだ。
顔見知りが誰もいないこのカルデアで、唯一誰よりも忘れられない男を見つけたから。
「え……?」
それなのに。
それは紛れもなく彼だった。
すこしばかり大人びて、悪いものでも見たかのような顔をして、目つきが少し鋭くなったようだった。
服装が変わっていて、真っ白に身を包む彼はどこか神聖なもののように思えたのだけれど、彼の目元の青色はまるで私自身を否定するかのように冷たい色だ。
「……あぁ、どこかで会っていたのか。悪いが私はその時の私ではない。期待させたら悪いと思って、先に言っておくよ」
「わ、わたし……?モリアーティ、君なんだよね?私のこと、覚えていないのかい」
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