だから待てって言ってるだろ 隣に座ってゲームに熱中していたはずの悟が、不意に真剣な顔をした。傑は何事かと視線だけを悟に向けて、先を促す。
いつもへらへらと笑っている悟だが、真面目な顔をするとまるで別人のようだった。悟の真顔はまるで触れがたい刀のような鋭さを持つが、表情が乗ると途端に温度を持ったあたたかいものに変わることを、傑はよく知っている。
視線が絡んだので、なに、と笑ってやると、悟は表情をそのままにやおら口を開いた。
「ずっと言いたかったんだけど」
「うん?」
「傑が好き」
言葉が鼓膜を震わせた瞬間、傑はゲームのコントローラを放り出し、ダッシュで悟の部屋から逃げ出した。そのまま隣の自室に逃げ込む。
ドアを閉め鍵を掛けた瞬間、悟の「傑!」と言う鋭い声と、ガチャガチャとドアノブを容赦なく回す音がした。間一髪だ。
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