シンサラホラー短篇葉月も中ごろとなった真夏の昼下がり、県内某所にある公共図書館の談話室で響いたのは、ある人の為だけに設定されたシンプルな着信音だった。
休日を持て余し、暇を潰すために訪れた図書館で本を漁って、満足した頃に昼食を取ろうとした矢先のことだ。また何か、急なシフトの変更だろうか、と辟易しつつ携帯端末を手に取る。耳元から聞こえてくるであろう慣れ親しんでしまった声に、深い溜息を聞かせながらサラは口を開く。
「……休日出勤ですか」
まだお昼食べてないんですけど、とサラがぼやくと、それに被さるようにしてシンが答えた。
「学生バイトにはちょうどいいんじゃないの。気持ち程度に時給上げるから、どう」
「どうもなにも、ほとんど強制じゃないですか。暇なのわかってて言ってるでしょ」
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