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    ゆんゆん

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    ゆんゆん

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    ・設定ガバガバなオメガバースパロのビリグレです
    ・後からグレイがアカデミー時代にモブから性暴力を受けた描写が出てきます
    ・時系列は10章後のつもりですが今後の展開と食い違う可能性があります。ガバガバ設定なので許してください。
    ・その他色々注意なので閲覧は自己責任でお願いします

    #ビリグレ
    bigotry

    ガバガバースなビリグレ① 甘い、匂いが包む。

    橙色の髪を揺らしながら青年は顔を上げた。スン、と鼻を鳴らして空気を吸い込む。

    (甘い……?)

    首を傾げた。こんなに甘美に香るものが、この部屋にあっただろうかと。
    濃いオレンジ色のレンズ越しに辺りを見渡す。ルームメイトとも完全に打ち解けてゴーグルを外す頻度も増えたとはいえ、長年の癖はなかなか抜けるものではない。彼の視界は既に色づいた世界の方に慣れきってしまっている。そんなわけで今日もまた例に漏れず、彼は愛用のゴーグルでその瞳を覆っていた。
    横たわっていたハンモックから身を起こして一つ伸びをし、考える。
    自身の小綺麗なスペースに置いてあるものはだいたい把握している。ここにある甘いものといえばキャンディくらいであるが、どのフレーバーも自分が気になるほどの香りを発するものでは無いはずだ。
    今日は外に出たから服に甘い匂いでもついたか、とも考えてみるが思い出せる限りそんな甘々しい場所を通った覚えはない。
    ならば、と少し首を伸ばしてビリーは隣のスペースを見やる。広い部屋の真ん中に置かれたソファの向こうで、ちょうどモゾリとくせっ毛が揺れるのが見えた。
    もしかしたらルームメイトがカップケーキでも買ってきたのかもしれない。グレイは自他共に認める無類のカップケーキ好きだ。常備とはいかないまでも彼がかなりの頻度で購入していることは、もはや周知の事実と言っても過言ではない。
    ビリーもグレイもお互い甘いものは好きだから、手持ちのお菓子を交換したり甘いものをお土産に持って帰ったりすることは度々ある。数がありそうなら自分の分もあるかきいてみようかなと考える。
    以前喧嘩(本当は勘違いとすれ違いで生まれた喧嘩もどきであったが)をしたときも、二人して相手の好物を詫びの品にしたのは記憶に新しい。一件落着したあとのお菓子パーティーは本当に楽しかった、とビリーは思い出して表情をゆるめた。
    もし買ってきていたとしたらどこの店のものだろうか。レッドサウスにあるグレイやジェイ御用達のカフェか、それともこの間オープンしたばかりのケーキ店のものか。移動式屋台の可能性もある。
    頭の中の地図をなぞりつつビリーはトンとハンモックから降り立ち、隣のスペースへと移動した。
    パタパタと足音を鳴らすがグレイには聞こえていないようで青白く光る画面に顔が向けられたままだ。
    この男の集中力の高さはビリーもよく心得ている。パソコンの前で超高速の戦いを繰り広げる彼の邪魔をするわけにもいかなくて、大人しくソファから観察することにした。
    以前はかなり散らかっていた床も今は整然とした状態を保っている。自分に潔癖の気があると伝えてからというもの、グレイは身の回りにとても気を遣うようになった。
    別にそこまで重症じゃないから気にしないで欲しい、とビリーは言ったのだが「僕がこうしたいから」の一点張りで折れようとしなかった。
    気弱なようでいてなかなか頑固な男だ。その事もよく知っているのでビリーはそれ以上グレイに何か言うことをしなかった。……初めて心を許した友人が、自分のためだけに苦手な片付けを頑張ってくれている、という事実に暖かな喜びを感じていたことも否定しないが。
    さて、と一息ついてビリーは室内を観察する。食べ物であればテーブルの上にあるのがまあ普通であろう。そう思い見てみるがハズレ。それらしきものは見つからなかった。
    もしかしたらカバンに入れっぱなしかとも考えたが、以前それでクリームが溶けてデロデロになっちゃったと悲しそうにしていたのを思い出して思考から外す。彼は自分自身の失敗から学べる人間だ。
    そもそも菓子では無いかもしれない。ファンから貰った花や香水の可能性もある。
    ヒーロー職に就いてからそろそろ一年になり、ビリーもグレイも着実にファンを獲得している。近頃、グレイは普段自分からは絶対に買わないような香水やらアクセサリーやらもプレゼントされる頻度が増えた。元々のポテンシャルは高いのだ。見る目のある人が見れば相応のものが贈られるのは自明の理であろう。
    「こんなにいい物を僕なんかに……」などと困ったように笑いながら、真面目な彼が全てを平等に使おうと悩む姿は微笑ましく思う。
    それと同時に、何となく他人の物で彼が彩られることに違和感を感じて「一気に使うともったいないし、今は使わないで大事に取っておいたら?」と提案したのはつい先日のことだ。
    しかし、もしかしたらやっぱり使おうと思って香水を振ったのかもしれない。
    そう思ってビリーはまた鼻を鳴らす。
    そして確信した。匂いの元は、ほぼ間違いなくグレイから来ていると。

    「……っあ、ビリーくん……っ!」

    と、そこで彼は自分を見つめるビリーの存在に気がついたらしい。ヘッドセットを外してクルンと椅子ごと振り返る。回転に合わせてまた少し匂いが強くなった。

    「ご、ごめんね……もしかして待っててくれてた……?」
    「NONO!謝らないで、グレイ!オイラ甘ぁい匂いにつられただけだから!」

    顔の前で手をパタパタと振ってオーバーに答える。そう?と首を傾げて立ち上がるグレイに合わせて、蜂蜜のような、濃ゆく色づく花のような香りがぶわりと溢れた。

    (あ、れ?)

    おかしい、ただの香水がこんなに強く香るだろうか?
    困惑するビリーを余所に、グレイはソファの空いている方へ腰掛けた。

    「甘い匂い……する?ごめん、僕わからなくって……」
    「えっと、蜂蜜みたいな香りなんだケド?てっきりオイラ、グレイがお菓子を買ったか香水でもつけたカナ?って思ってたんだけどナ〜?」
    「う〜ん、今日はお菓子も買ってないし、そもそも香水って使ったことがないし……」

    少し眉尻を下げるグレイには、本当に心当たりがなさそうであった。自分から匂いがするという言葉が気になるのかスウェットの衿口を引っ張って鼻に近づけスンスンと嗅ぎ始めたので、伸びちゃうよとやんわり止める。

    「ネ〜、グレイ?ちょっと匂い嗅がせてもらってもいい?ついでにハグして!」
    「ん、いいよ」

    グレイは快く頷き両手を広げて受け入れる体勢を整えた。そこに遠慮も何もなく飛び込んでいく。
    ほんの一年、されど一年。よくぞここまで心を許し合える仲になったものだと思う。一年前の自分なら、こんな風に誰かに甘えられるようになれるだなんてきっと信じられなかっただろう。
    それも、自分が搾取し、利用した相手に。
    抱きしめ合う温もりに仄かな幸せを感じながら、鼻を首元に押し付けて深く深く息を吸う。

    「んっ、ふふっ、くすぐったい……」
    「おっと、ソーリー♪」

    謝りながらも手は緩めず、むしろ更に強く力を入れる。深く鼻先を沈める。もはや不可抗力なのだ。
    良い、匂い。甘くて甘くて脳が蕩けそうなくらい。
    ずっと嗅いでいたい。このまま肺の中から甘さに煮詰まって溶けて一つとなるくらいに……。

    「びっ、ビリーくんっ!!」
    「……!!」

    そこでハッと頭が澄む。目線をあげると、涙に歪んだヘーゼルと交差した。

    「ぐ……れい?」
    「ごめんね……呼んでも返事がなくって、ちょっと怖くなって……」
    「へ?え、わっ、ソーリー!!なんか夢中になっちゃった〜」

    そんなに没頭していたのだろうか。自分では分かっていなかった。慌てて手を離し、少し距離をとる。

    「ううん、大丈夫……変な匂い、まだする?」
    「変な匂いじゃないヨ!ウ〜ン、でもやっぱりまだハニー系の甘い匂いがする……」
    「おかしいな……さっきシャワーしたばっかりなのに……」
    「シャンプー変えた?」
    「ううん、全然」
    「そっか」

    変なの。顔を見合わせて首を傾げる。同時にコテンとしたものだから、おかしくなって笑ってしまった。

    「気になるみたいだったら、もう一回シャワー浴びるし、服も変えるよ……?」
    「そこまでしなくていいよ〜!?それに俺っちこの匂い結構好き〜♪」
    「あ、そっか。ビリーくんって蜂蜜味のキャンディ好きだもんね……」
    「That's Right☆だから、だぁいすきなグレイから大好物の香りがするのはむしろウェルカム♪」
    「はっ、はわわっ……だっ、だい、すき……!!?」

    言われた言葉を反復して、グレイは顔を真っ赤に茹だたせる。それに合わせて匂いもまた強く薫った気がして、ビリーは無意識のうちに深く息を吸い込んだ。
    甘くて美味しそうないい匂い。グレイから香る大好きな匂い。
    取り留めのない話を続ける二人をじわりと匂いが包む。それが異変であることには誰も気がつけないまま、夜は静かに這い寄ってきた。
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    以前、寝不足で体調を崩してからは睡眠時間の確保に気を使うようになった。
    とはいえ、今日は少し遅くなってしまったなとグレイは心の中で小さな反省をした。
    このままネガティブな気持ちになってしまうのも良くない、とルームメイトであり恋人でもあるオレンジ髪の彼によく言われているため、気持ちを切り替えて、その彼に一言声をかけてから寝よう、と隣の整理整頓された部屋をちらっと見てみる。
    すると、彼は既にベッドに横たわっていた。
    いつもはこの時間でも起きていて、いそいそと情報集めをしているのだが。

    (今日は疲れちゃったのかな…)

    実を言うと、グレイはあまり彼、もといビリーの寝顔を見たことがなかった。
    もしかしてこれ、チャンスなのでは?とグレイの心の中に興味心がうずうずと湧いてしまった。
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    TRAINING月夜の杞憂(ビリグレ ?)

    夜中に不安になっちゃう🍬。🧁はほぼ寝てます。
    付き合ってない世界線なのでカプ要素は薄いですが、ビリグレの人間が書いております。
    短い、そして8章ネタバレ注意!
    かちかち、という時計の針の音とグレイの静かな寝息が部屋を満たす。
    ビリーは目を瞑りながらそれを聞いていた。
    そして時折、ちらりと時計を見ては小さくため息をついた。
    その時刻は現在3時を指しており、普段ならとっくに夢の中であるため、なかなか眠れない事実にビリーは焦っていた。
    何より、その眠れない原因が分からないのだ。

    (早く寝ないとネ…)

    そう思うも、ただただ時間が過ぎていく一方。
    今日はヒーローとしての仕事は無いものの、グレイとリトルトーキョーへ行こうと約束していた。
    早く寝なければ寝不足で楽しめない。
    ビリーはそれを、友だちとの大切な時間を無駄にしてしまうことを懸念していたのだ。
    ふと、グレイの方へ目を遣ると少し大きめの体を丸めるようにして眠っている。
    その姿が何とも愛おしく、顔を見たくなったビリーはそっと立ち上がり、2人で買ったソファ越しのグレイのスペースへ入って行った。
    自分のために、と綺麗にされたそこにしゃがみこみ、グレイの顔をじっと眺める。
    その表情は普段よりも幾分穏やかで、見ているビリーの心もスっと穏やかになっていくのがわかった。
    そのままグレイを起こさないようにそっと 1394

    かも🦆

    DONE「青空」(ビリグレ)

    お題【はじめて】【幸福】で参加させて頂きました〜!未来捏造含みます。
    🧁がはじめて🍭の目を見た日のお話。
    同室の彼はいつもゴーグルを着けている。
    普段は鮮やかな髪の色と同じオレンジ色、ヒーロースーツに着替えると黄緑色のゴーグルに変わっていたりする。
    さらに、寝る時にはアイマスクを着ける徹底ぶりで、僕はその瞳にコンプレックスがあるのかなと思っていた。
    だから、案外あっさり彼の瞳を見ることが出来たあの時はとても驚いたんだ。






    「あ……」
    「キャー!グレイのえっち♡」
    「はわ…ご、ごめんね?」

    浴室にスマホを忘れたことに気づいて、取りに行くとお風呂上がりのビリーくんがそこに居た。
    白い肌がまだ少し赤く火照っていて、目のやり場に困っちゃったのは内緒。
    それよりも、僕はビリーくんの瞳に目がいってしまった。
    そこでハッとする。
    あんなに徹底して隠していたビリーくんの瞳を悪気は無いけど見てしまった。
    僕はビリーくんとは対照的に真っ青になった。

    「あぅ……」
    「グレイ?どうしたノ〜?」
    「その……ほんとに、ごめん…ゴーグル着けてないとこ、見ちゃって…」

    そんな僕の様子にすぐ気づいたビリーくんはいつものように気にかけてくれて、少し冷静になれた僕は改めて謝ることが出来た。
    恐る恐るビリーくんを 1320