空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:02 道場の片隅に詰まれた畳が、激しい音を立てる。その音に、汐見の手は思わず額へと伸ばされた。
「俺、お前の面だけは絶対に受けたくないんだが?」
「えぇ? 良いセン行ってると思ったんだけどなぁ」
分かりやすく途方に暮れたように額に手を当てながら、溜息混じりで告げられた汐見の言葉に空閑は心外だとでも言うように首を傾げる。そんな空閑の言葉に「ポジティブシンキング野郎かよ」と呆れ返った声色で返した汐見は空閑の隣で手にした竹刀を畳に向かって構えて見せる。
トントンと位置を確認するように幾度か剣先で畳を捉えた汐見は、その竹刀を振りかぶる。一閃。空気を切る音に次いで、竹刀が畳を叩く軽やかな音が響いた。
「こうだ。お前のは、こう」
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