ジュンボの指の間にはコイル状に捻った銅線が挟まれていた。眺めるうちにそれが鈍く赤熱し、熱を帯びていくのが見て取れた。
「どうぞ。……熱いので気をつけて」
驚きを示すために大袈裟に目を瞠ってみせながら、サティは咥えた煙草の先端を近づけて、すうっと息を吸い込んだ。ジジ、と紙の焼ける音がして、やがて赤く火が灯る。
ジュンボが黙って手を引くと、その驚きは愉快そうに細まって、そして最初のひと吸いを味わうように吐き出したて、自由になった口を開く。
「着火きましたね。どうやったんです?」
「自分には火は出せませんが、体内に電流を流すことは出来るようなので。それを利用しました」
聞かれたことをこともなく答えたが、サティはすぅっと目を細めた。検分するような視線である。
「体内に電流ですか」
「勁術の応用です」
「興味深いな。……それ、派遣官の指はどうなるんですか」
流石に目敏いことだった。ジュンボはさりげなく右手を引いていたが、見せてくださいと手首を捕らえられれば、銅線の形の火ぶくれが晒される。