懇願。それは快楽に負けたというよりは最後のプライドにしがみつくための発言だった。令嬢の顔を幸福そうに歪ませて、彼女に宿った人に非らぬ者は寛大に是を示した。
ぬう、と男の目の前に持ち上がった端末の一本、その先端がぬらりと歪み、滑らかな不定形が人間の唇のかたちを作った。あまりに容易に行われたその変化に恐怖を感じながら、それが依代としている女のものとは異なる造形をしていることに、男はわずかに安堵する。
「よぉく、言えました❤︎」
ぱくりと開いたその口が流暢にそう言った。声は寄生生物が使うもので、やはり彼女のものとは違った。整然とした歯並びに、舌を模した造形までが見える。身体を拘束していた触手の一本が幼子をあやすように優しく頭を撫でてくる。
人間の口腔の形になった触手はするすると股間に向かった。